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#2021年8月kakenee民へのお題
にしめ3年前サイダー/鼻歌/急所

お題増えてもいいかなと思ったので出題させてください!ひとつでも、既に出ているものと合わせて複数使っても、もちろん既出のテーマだけでも。
夏っぽいやつと、皆さんの視点でどう料理されるのか興味のあるワードが浮かんだので置いてみました。
出揃った感ありましたがわたしもぼちぼち書くぞ~
御礼!
横からいきなり乱入してしまいましたが、お題使ってくださりありがとうございました!!
すべての単語を使ってくださる方もいらして、ほんとにほんとに驚きました……!ただ単にわたしが料理してほしい単語を持ってきただけでしたので……感嘆するしかない……モチーフの扱い方や視点もそれぞれで、かわいらしいものにもなるし恐ろしさの演出にもなるし、……ジャンルがそれぞれ違うからこその幅広さを楽めた気がします。
とても楽しかったですし、勉強になりました。時間切れで書くのあきらめてしまったんですが、わたしも何かしら書ければよかったな……。

ちなみに、サイダーは絵面とびしょびしょシチュエーションが好きだから、鼻歌は深い意味はなく(歌モチーフ好きなのでその手の話が読みたかったのかも)、急所は攻めに喉元に噛みつかれてもくすぐったいって言いながら笑ってる受け(ふたりともアイドルなので噛みあとつけるほど強く噛まないという協定は結んでいるけど、受は喉元食いちぎられてもいいって思ってそうだし攻は野生動物みたいなところがある)という自カプが好きだから、でした……!

改めまして、ありがとうございました!!
にしめ3年前【お題:舐めとる・ほだされる 】遅刻申し訳ありません。起きてるうちは今日、のもったいない精神で駆け込み投稿させてください。お題ありがとうございます。
8月なので!アイスです!

【二次創作BL・ジャンル】
ド!の勇圭です。
二人組アイドルをやっている男子高校生の二次創作BL、と認識していただければ充分読めると思います。(そして今回のはアイドル要素の薄い話です)

【感想募集中】
どんな内容でもとても嬉しいですが、
もしも【描写や説明がくどくないか、長い/冗長に感じていないか】という観点でなにかあれば言及してくださるとありがたいです。
内容の割に文字数が嵩んでいるのでは……?、と悩むことが多く、気になっているので、ご意見頂けたら嬉しいなあと。
募集するか悩んだんですが、せっかくなので置いてみます!反応0には慣れてる。

お手柔らかにどうぞ、よろしくお願いいたします。
迂闊に溶ける
(1600字程度)





 職員室で涼んだ身体は、数分も経たないうちに二人揃って汗だくに戻っていた。こんなことなら教室でよかった、とわずかに後悔を抱えつつ炎天下に晒された屋上へ、果敢に踏み出す。
 扉の裏手に回ると、そこには期待どおりの日陰ができていた。風が吹けばいくらか涼し気なその場所に逃げ込むと、勇人は座るのもそこそこに水滴まみれの透明なパッケージをさっさと破く。取り出した淡い黄色のアイスキャンディーは既に表面が溶けはじめていた。この暑さなら当然か。
 頓着せずにかぶりつくと棒の先端が歯に当たった。こんな細っこい一本で得られる涼なんてたかが知れているとはいえ、肩透かしを食らった気分だ。生え際から首筋へ流れる汗は止まらない。氷の欠片を噛み砕いていると、間延びした口調が隣から聞こえた。
「ヤマセンいいやつだな」
 見れば、圭吾はまっぷたつに裂かれた小袋から取り出した棒アイスを見つめていた。早く食えばいいのに。
「誰だよ」
「ヤマダ先生だよ、アイスくれただろ」
 彼はつまんだ棒をゆるく振って赤紫色のそれを主張した。先っぽを口に含む傍らで勇人は内心舌打ちをする。炎天下のプール掃除なんて補講というよりもむしろペナルティだ。それをたかだかアイスひとつ――しかも、一箱数百円の、霜だらけのアソートボックスの一本程度でほだされやがって。
 ちょろいとか、そういうのを通り越していっそ心配になってくる。
「なんだよその顔。単位もアイスもくれたんだからいいだろ」
 さっきまでやかましいほど文句を垂れていたくせに。たしなめる言い方にカチンとくるが、暑さのせいで苛立っている自覚はあるので押し黙る。
「時々ウサギにキャベツあげてるらしいよ」
「そうかよ」
 それなら悪い人ではない。あっさりと考えを翻して勇人はアイスの残りをすべて口に収めた。ばりばりと咀嚼する勇人とは対照的に、圭吾は溶けかけた表面をのんびりと舐めとっている。滴の落ちてしまいそうな根元を軽く吸い、舌を這わせて舐め上げていく。ラーメンは一瞬で平らげるくせに、その機敏さはここでは発揮されそうにもなかった。悠長な食べ方を横目で見守っていると、案の定。
「うわ、っと」
 落胆の声と同時に、圭吾の親指に溶けたアイスが垂れた。赤紫の液体が汗に混ざって腕の表面を滑り落ちていく。
「あ、うわ」
 慌てて吸いついて、と思えば次の滴は中指に落ちて手の甲へと伝う。傾いた勢いでシャツの袖にも一点のシミがとぶ。慌てながら自分の腕にあちこちくちづけているのがおかしくて、勇人は思わず吹き出してしまった。
「勇人!」
「へたくそ」
「なんだと、あ、こら!」
 それでいて情けない非難の声にじわりと悪戯心が掻き立てられてしまった。隙だらけの腕を引き寄せて、べとつくところを舌で辿る。ひじの裏から、手のひらまで。
「んっ、」
 圭吾の息が鼻から抜ける。短く漏れた声が、唐突に二人の間の空気を甘ったるく塗り替えたような気がした。視線がぶつかる。その間にも流線型を帯びたアイスはゆっくりと着実に溶けていく。
「食っていいか」
 ほとんど本能的に言葉だけがまろび出た。そして何を、と自問する。視線の先でみどり色の瞳が丸くなって、すぐにとろける。
「……勇人は食い意地が張ってるな……」
 圭吾はほだされてやるよ、とでも言いたげに肩の力を抜いた。掴んだままの勇人の手ごと、アイスが口先まで誘導される。ひとくちで食べてしまうと「ちゃんと味わえよ」と小言がとんだ。舌に残る新しい味はさっきよりも甘い。
濃くて、甘くて、呑み込むとどうしてか渇く。
「満足したか?」
 圭吾は甘い汁がついたままの手を引っ込めず、勇人の眼前に晒したままで首を傾げた。足りないならどうぞ、という意味なんだろうか──足りないって、何を。あんまりなほど無防備に自分を差し出す恋人を前にして、茹だる頭はもうそれを正確に理解できてしまっていた。
 圭吾の首筋に汗が一筋絡みつく。掬いとろうと指先が動く。
頼む、続きが読みたい!
絵文書き3年前お題:ベッドに潜り込む
いつも文章が長くなりがちなので短くまとめる練習を兼ねてお借りしました
1000文字以内
ほんのりホラー風味
僕は怖い話が好き。だけど臆病だ。そして兄ちゃんも怖い話が好き。でも兄ちゃんは臆病じゃない。
 怖がる僕を見るのが楽しいのか、兄ちゃんは怖い話を仕入れてくると決まって寝る前に話してくれる。そして今日もまた、得意げな顔で怖い話を披露してくれた。

 だけど、あんな話聞くんじゃなかった。後悔がぐるぐると僕の中を駆けめぐっている。
 壁に掛けられた時計に目をやると、もう少しで日付が変わりそうだ。明日も学校だから早く寝ないと。
 なのに僕はベッドに潜り込むことを躊躇ってしまう。僕はなすすべもなく、ただベッドを眺めて立ち尽くすしかない。
 そうしていると、兄ちゃんの披露した怖い話が頭の中で勝手に再生された。

 深夜、Aは妙な気配を感じて目が覚めた。嫌ぁな感覚がじっとりとまとわりつく──それはまるで何者かの視線のように思えたらしい。
 怖くてたまらなくなったAは布団を頭から被って朝までやり過ごすことにした。


 だが布団の中に潜り込んだ瞬間、そいつと目が合った。


 そいつはずっとAのベッドの中にいて、そこからAを見ていたんだ。


 思い出したと同時に悲鳴を上げそうになったが、なんとか我慢する。
 兄ちゃんの話を思い出して怖くなったら、僕もAと同じようにしていた。ベッドの中に潜り込んでしまえば、そこは安全地帯だと信じていたから。
 だけど、兄ちゃんの話はそれを覆した。まさかベッドの中に潜む怪異があるだなんて……!

 しんと静まり返る僕の部屋にくしゃみが一つ響く。今は12月。そして僕の部屋には暖房器具はない。早くベッドに入らないと風邪を引いてしまうだろう。
 僕は覚悟を決めてベッドに入る。何も起こったりはしない。安堵が眠気を呼び寄せる。そうして微睡みに身を委せていると……


 布団の中で、もぞもぞとうごめく何かが──


 反射的に布団をめくると、光る目が僕を見ていた。


「うわぁ!」

「ニャア」


 僕の悲鳴に可愛らしい鳴き声が被さる。
 よく見ると、我が家で飼っている猫──チャマメであった。

「な、なんだチャマメか。一緒に寝たいの?」

「ニャア」

『うん』と言っているように聞こえた。

 僕はチャマメとともに再びベッドに潜り込んだ。まだ胸がドキドキいっている。
 けれど、チャマメが一緒だからか、怖れる気持ちはもう無くなっていた。


《了》
ぐはっ😍
水月 千尋3年前お題『朝寝坊』をお借りしました。私は朝寝坊をしたことがない。
 小学校に入学した日から、会社に入って一年が経とうかとしている今現在に至るまで。一度もだ。これは何もかもが十人並で、人様の前で披露出来るような突出した特技があるわけでもない私の、本当に唯一の自慢だった。だから働けなくなる年齢になるその日までは何があっても──それこそ死んでも貫こうと強く強く決意していた、が。

「…………っ!?」

 夢のぬかるみから唐突に意識が浮上し、はっとまぶたを開く。
 固い床の上だった。遮光カーテンがぴったり閉じられた薄暗い部屋で大の字になって、見慣れた天井をしばらく呆然と見つめる。
 身体に染み付いた長年の習性。いや、賜物か。どうやらスマホアプリでセット済みのけたたましいアラームも、眩しい朝日の力すら借りずに覚醒したようだった。
 それにしても今はいつだ。
 何時何分何曜日なんだ。
 何故か全力疾走の後のようにバクバクする心臓を押さえる。必死に答えを求めて目をさ迷わせると、壁にかけたウッド調の時計が見えた。
 七時三十二分。時刻を針で刻むだけのシンプルな壁掛け時計なので、さすがに曜日まではわからない。慌てて身体を起こして周辺の床をまさぐった。
 目的はスマホだ。あれを見れば、今知りたい全てが解決する。いらぬ絶望までもたらしてくれる可能性は高いが、どのみちあれがなければ会社に全力で謝罪の電話をすることも出来ないのだから、遅かれ早かれ見つけなくてはいけない。
 いつもなら頭の周辺に置いてあるはず──そう思いながら探っていると、寝ている間に弾き飛ばしでもしたのか、ベッドの下に半分潜り込んだスマホを見つける事が出来た。喜ぶ間も惜しい。早速それを引っ付かんで電源ボタンを押す。
 ところが画面はつかなかった。長押ししても連打しても、うんとも、すんともいわない。
 考えうる事は、ただひとつ……。

「スマホの充電切れとかバカかな自分!?」

 叫びながらすぐさまコンセントの周囲を見るも、充電アダプターはない。どこに置いたのかも思い出せない。もう頭の中はパニックだった。
 とにかく充電出来るものを──。
 いや最悪テレビでもつければなんとか──。
 あれこれと策を練りつつ、跳ねるように立ち上がる。ドアを開け放って駆けた先はリビングだ。そこにならきっと解決策があると信じて。しかし。
 私は、リビングの入口で床の一点を見つめて動けなくなった。
 フローリングに敷いたブルーのラグには、部屋着用のだぼっとしたワンピースを着た女が倒れていた。うつ伏せなので顔は見えない。女の頭の側には、手に持っていたらしい白い充電アダプター。くねるコードは肩までの黒髪と絡み合うように重なり、ラグの海に線を描いていた。
 ……やっと思い出す。
 充電器を探して夜中にリビングまで来たこと。
 殴られたかと思うほどの激しい頭痛に見舞われたこと。
 そのまま、気を失ったこと。

「…………なぁんだ」

 もう寝坊してもいいんだった。
 ほっと胸を撫で下ろした私は、静かに薄闇の中へと戻った。
これ好き! 好きすぎる!
✱✱✱✱✱3年前2021年8月kakenee民へのお題は
・朝寝坊
・ベッドに潜り込む
・舐め取る
・ほだされる
です。好きなお題で創作してみましょう
(診断:CP創作お題を自分で決める)

タグをつけて選んだお題を記入の上でご参加ください。
使用した診断は報告/表記必須ではないので、完成した作品はお好きな場所でご自由に投稿いただけます。
kattan3年前お題参加! サイダーで!

二次創作BL要素有
某異界の住人と若者たちが戦う系作品より
孤月師弟。
ワンでライしたくらいの殴り書き。
こくこくとペットボトルから液体が注がれる音、というのが、昔から自分は好きだったような気がする。透明のグラス。しゅわしゅわと細かな泡をその透明にはりつかせているさらに透き通った液体。薄い黄色だったり紫だったり鮮やかな黄緑だったり、色はいろいろあったけど、やっぱり完全に透明なのがいちばん好きだった。だってはりついた泡がいちばんよく見える気がするから。ガキだったころにはこのどこからともなく現れる泡が不思議で仕方なくて、ボトルの中では見られないのになんで浮かぶんだろうって目を輝かせてた。氷を入れるともっと泡立って、そんなことにまでいちいち目を見開いてはしゃいでた。俺、あんまり頭はよくないけど、好奇心だけは旺盛な子どもだったと思うんだよな。
 好奇心。好奇心だよな、やっぱ。
 どうしてだろう、なんでだろう、理由を知りたい。そういう思いから突き動かされることがとても多いんだ。
 目の前のこの人に対しても、そう。今はのんきにサイダーなんてコップに注いでるけど、俺の師匠はとにかくもう、言い表しようがないくらいに強い。めちゃくちゃ強い。ノーマルトリガー最強の男、なんていう称号をいつになったら俺に譲るんだよって呆れたくなるくらいには強いままだ。
まだボーダーに入ったばかりのころ、訓練生の中では結構俺は飛びぬけてて、たぶんちょっとばかりは調子にのってた。そんな最中に出会ったのがこんなひとで、俺はもう、とにかく驚いたんだ。こてんぱんに叩きのめされたけど、わりとそんなことはどうでもよくて。剣の筋のあんまりにも迷いなく綺麗な様子に釘付けになっていたのもある。
 どうしてこんなに強いんだろう。何が俺と違うんだろう。なんで俺とは違うんだろう。どこが違うんだろう。このひとの強さの理由はどこにあるんだろう。好奇心の塊になった俺を、そのひとはおかしなやつだなって笑い飛ばして、それからわしわしと頭を掻き回すみたいに撫でられた。悔しくないのかって聞かれた。負けたこと自体に対する悔しさはもちろんあるけど、悔しさよりも勝ったのは好奇心だ。だって、どう考えても大人で戦闘経験豊富なこのひとに俺が敵わないだけの理由はたくさんあって、実力もないのに悔しがってばっかりいても仕方がない。そんなことよりもう一度。模擬戦でも何でもして、このひとの強さを知りたい、もっと知りたい。強くなるのなら、そっちの方が絶対に近道だ。そんなようなことを言ったらこのひとは、ふむ、と考え込んで、それから。
「きっとお前は強くなる」
 そんなことを言うものだから。
「あんたが強くしてくれるの⁉」
 俺は目を輝かせて言ったんだ。それからなんとかこのひとに追いつこう追い越そうと、このひとの強さを解き明かそうと俺は必死にやってきた。とりあえずは攻撃手のトップまで昇りつめたけど、このひとにだけ負け越したままだ。
 まあ、そんな最強の男が、今は俺の目の前でなんだか楽しそうにサイダーなんてものを注いでるわけなんだけど。グラスは二つ。暑い夏の盛りだから冷たいもんが喉越しいいのはわかるけど。これがもう少し遅い時間で明日の俺が講義もなくてなおかつ非番なら、注がれるのは揃ってビールなんだけど。残念ながら明日の俺には朝一の講義はあるし、非番でもない。二人揃ってアルコールには弱いからどうせ量は飲めないけど、俺は「大人」だからできることをこのひととするのが好きなんだけどな。出会ったころには許されなかったいろいろが、今やっと許されるようになって、このひと自身に許してもらえるようになって、俺は嬉しくて仕方がない。このひとだって、弟子である俺の成長を叱り飛ばしつつも喜んでくれてるとは思うんだけど。喉渇いたって言ったら、出てきたのはサイダー。しかもやたらと嬉しそう。
「なんで忍田さん、なんか嬉しそうなの」
「ん?」
 忍田さんが首を傾げる。いい歳したいい立場のある大人がそういうかわいい仕草むやみにするの、反則だと俺はいつも思うんだけど、このひと完全に無意識だから困るんだよ。いつでも凛々しくてかっこいい本部長、を貫き通してくれればいいんだけど、このひとのこういうかわいいところのギャップを他のやつが知ったらなんかいっぱい寄ってきそうで困るんだよ。ただでさえ尊敬だの憧れだの向けられてんのに。
 俺の内心なんか当然のことながら全く知るはずもないこのひとは、にこにこと機嫌よく笑っている。なんでって、って俺に顔を向けて。
「お前、昔からサイダー好きだろう」
 この時期は訓練のあと決まってこれだったろうって。
 うん、好きだよ。好きだ。俺の好物差し出して、そうしたら俺が喜ぶと思ってるかわいい忍田さんが。どうにも出会ったばっかりのころのイメージがいつまでも抜けなくて俺は子ども扱いされがちだけど、でも、そこにあるのがこのひとの愛情だってわかるから、なんだかんだで俺も満足はしてる。……しちゃうんだよなあ……。
 はあぁぁと盛大な溜め息をついて、机に突っ伏する。おいおいどうしたってきょとんとした忍田さんの顔を、サイダーが並々注がれたグラス越しに見る。
 グラスは二つ。それなのに、俺側に置かれたサイダーは並々溢れそうなほどで、もうひとつはそうでもない。ついでに言うと、まだ半分以上中身が残ってるでっかいペットボトルが置かれた位置も、随分とこっち寄り。これってさあ。
 無意識でするから、ほんと困るんだよこのひと。
「飲まないのか?」
 好きだろうって。
 ああはいはい、好きです、大好きです。顎を突いたまま上目遣いに見上げると、俺のために注がれたたっぷりの愛情の向こうに、しゅわしゅわいう泡に飾り立てられてにこにこ笑うひとがいる。
「……サイダーで、よかったな」
「うん?」
「……なんでもない」
 今目の前にあるのが無色透明のサイダーでよかったなって。変に着色されたんじゃなくて、このひとのそのままの笑顔をこうやって見つめられるから!
笹百合3年前お題の鼻歌でひとつ!お借りしました!

1つしか織り交ぜて書けないので全て入れて書ける人すごいな〜…と尊敬します…。1つ入れるだけでも難しい〜…上手く書けぬ。ぐぬぬ。

腐向けなのと自ジャンルのカプ(春海)そのままなのでご注意を。






 静寂に雨音が降る。その音に耳を傾けながら、二人並んでソファに深く腰掛ける。
 お互いにオフで天気予報も雨ならと、どこかに無理して出かけずに二人で静かに過ごそうなんて提案してみたけれど、思った以上にゆったりと過ごせていた。
 海とはそれなりに付き合いも長く、仕事の相談や遊びの作法、くだらないことまで気兼ねなく話せるけど、敢えて何も話さないというのは初めてかもしれない。なのに、それが全く苦にならないというのも不思議で、それが堪らなく心地良い。
 たまにお互いに視線を交して笑ったりするけど、その度に心が弾む。
 海と一緒にいるの、楽しいなと改めて噛み締めていると、隣から声が零れた。声、というより鼻歌がふわりと耳に届く。その歌はどこか聞き覚えがあって。
「あれ、俺の歌?」
「せーかい♪ 雨が降るとなんとなく口ずさみたくなるんだ、この歌。すげー好き」
 それは俺の歌、『アクア・リフレイン』。あまり他の人が歌っているところを聞く機会がないから、不思議な感覚がする。だが、それ以上に好きな人が俺の歌う歌を好きだと言ってくれて、鼻歌を口ずさんでくれるのは、こそばゆくて、胸が躍った。
 その鼻歌に合わせて俺も口ずさむ。雨音と合さり、なんだかオーケストラでも奏でているかのような気分だ。
『焦らずにハナウタ一つ』
 サビを終え、顔を見合わせた。
「鼻歌とはいえ、ご本人を前にハモるのは緊張するわー」
「えー、すごい伸び伸び歌ってたのに? 好きだよ、海の鼻歌。もっと聞きたいな」
 素直に喜びを口にすれば、海は照れ臭そうにはにかんだ。可愛くて頭がくらくらしそうになる、とか言ったら怒られそうだ。
「春さんってば褒め上手だな〜。でも、俺も春の鼻歌、聞きたい。俺も春の声、めっちゃ好きだ」
 不意打ちに思わず胸を抑えた。というより反撃な気がしないでもない。でも、海は思ったことを口にしただけで、反撃のつもりでも不意打ちつもりでもないのだろう。きょとんとした表情が恨めしいやら愛しいやら。
「海ってそういうとこあるよね……」
「なんか不名誉なこといわれてる気がするな?」
「そんなことございませんよ?」
「本当でございますか?」
 見つめ合って、同じタイミングで噴き出した。くだらないやりとりでも、海と重ねるとどれも愛しくて大事な時間だ。
「『安らげる声、穏やかな笑顔のずっと続く場所』……海の傍が、俺にとってそうかな」
 アクア・リフレインの出だしの歌詞。それをすくい上げて考えてみると、思い浮かぶのは海になる。
「あーなんか先越された気がする……! 俺も、春の傍がそうだぞ」
 ソファの上に置いた手を握り合う。温もりが絡まって、心地良い。
「俺の声、届いてるか?」
「雨の中でも、どんな時でも、届いているよ」
 愛しい人の声。どんな喧騒の中でもきっとその声は零さない。
ありがとう、これで今日も生きていける
やしお3年前[お題]サイダー・鼻歌・急所

一次です。二度目の参加ですがご容赦下さい。若干アングラ仕立てなのも注意。おまけ程度の腐。
悲鳴が書きたかったやつです。駄洒落ではないハズ
湿り気混じりの真夏が振り撒く、執拗な暑さには殆辟易させられる。しかし熱帯夜の寝静まった街頭に漂う陰気な、それでいて何処か爽やかにすら感じる清々しさは嫌いじゃない。知らず軽くなる足取りが通りに響き渡る。
 今夜の相手は誰だろうな。構やしないか、誰だろうと同じだ。
 知らない路地で調子っ外れの鼻歌がしている。何処の誰だか知らないが良いBGMには違いない。憂鬱な夜にはぴったりだ。
 道端に捨てられたサイダーの空瓶を見つけ、何の気無しに勢い良く蹴り飛ばす。少しでも問題を先延ばしにしたいが為の時間稼ぎみたように。あらぬ方向に転がった瓶は閉じ切られたシャッターにけたたましく打っつかって大人しくなった。からからからからからからから。甲高い主張に天啓を得た。
 閃いた、今日はこれにしよう。
 ブルーシートはあったろうか。


 「んん、ぅうんんんん‼︎」
 「へいきですよ。すぐおわりますから」

 無機質な部屋の中、拾った瓶の口を握って壁に叩き付けると辺り一面にペールブルーの海が広がった。破片の水面を踏み砕き、汚らしい嗚咽で顔を濡らす肉袋を宥め賺すも効果は薄いようだ。
 簡素な室内でがたがたと喚いて悪足掻きをされても困る。赤ん坊をあやしているのではないのだけれど、大抵目覚めたら皆一様に似た反応をする。何一つ後ろ暗い記憶を持っていないのならここへ辿り着いたりはしないのだから、諦めて貰う他ない。
 鋭利な先端をちらつかせると怯え切って震える口元で猿轡を噛み締めて首を横に振るばかりになってしまった。脳震盪になりそうな勢いだったが、瓶から凶器へ昇格した得物は中々どうして不敵に輝いている。目の高さまで持ち上げた切先を急所にあてがう。あともう一息、一思いに引ききってしまえばお終いだ。
 というところで。

 「あ、っうぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァッああぁぁぁぁァァッぁぁぁァァッァァッ——っ‼︎」

 「あ」

 パニックを起こした身体が一瞬で脱力した。どうやら失神したようだ。まだ五分しか経っていないのに。俺にとって大した値打ちもないなら手間を取らせないで欲しい。部屋で待つ彼の為にも。ああ、喉が渇いた。これは時間泥棒だ。取り出した端末を片手で操作する。

 『もう終わる?』
 「もうちょいかかる。待ってて」
 『分かった』
 「あーそうだ」
 『なに?』

 『買っておいて欲しいものがあったんだ。丁度飲みたくなって来て——』
AA(A)AAA3年前使用お題:朝寝坊/ベッドに潜り込む

今書いているものの息抜きに一本。二次創作だけど名前は出てこないよ。どこの誰君か分かっても黙ってもらえると助かるよ。BLのつもりはないけど同生産ラインでBL作ってるから念のためBLタグ付けておくよ。よろしくね。
季節感? そんなものうちにはないよ……
できた報告してなかったよ……。PCから読み辛いからついでにポイピクに投げたよ……。https://poipiku.com/3385161/4997754.html
@sL063VoATUKzPr93年前#2021年8月kakenee民へのお題
素敵すぎるタグに惹かれて、名前好きに入れてくださいの〇〇シリーズと推しCPで書かせていただきたいです…
とりあえず、推しCPの場合は閲覧注意とか前ふりさせてもらいます…
よろしくお願いしますm(__)m
2021年8月kakenee民へのお題から
・朝寝坊・舐め取る・ほだされるを〇〇シリーズで


朝から盛大に朝寝坊した〇〇を起こしたのは〇〇の自分のスマホのアラームの音ではなくミャアミャアと鳴いて朝の食事を強請る愛猫の鳴き声だった。
「んんっ…いま何時?」
猫の鳴き声で起きた〇〇はおぼつかない手の動きで枕元のスマホを取り、スマホの時計を見ると朝の10時と表示されているのに気がつき慌てて身体を起こす。
「急がないと、◎◎(←好きな相手の名を入れてください)と約束に遅れちゃう!」
◎◎と出掛ける予定のために急いで支度をしないと思いベットから抜け出して立ち上がった〇〇は寝間着から着替えては今日の着て行く服を選ぶためクローゼットの前に立ったに時だった。
「ミャアーミャア」
美しい漆黒の毛並みを持つ金色の目と緑の目のオッドアイに(好きな色を入れてください)→☓☓色や首輪を着けた黒猫が鳴いて甘えては朝の食事を貰うために〇〇の足の間に頭を擦り付けてまとわりついく。
その黒猫を見て、まだまだ寝坊していた〇〇の脳は完全に覚醒した。
「そうだね、もう、◎◎との出掛ける予定は入らないんだったね」
足にまとわりついていた黒猫を抱き上げては〇〇は別れしまい会えなくなった◎◎への思いから静かに涙を流す。それを見ていた黒猫は〇〇の涙をザラついた舌で舐め取ると、元気出してというように甘えた声で鳴く。
「ミャア…」
「◎◎とは会えないけど、・(好きな自称を入れてください)には※※(←名前か好きな二人称入れてください)がいるよね」
そう言って〇〇は涙を寝間着の袖で拭き、黒猫の毛に顔を埋めるように抱き締めて、気合を入れるために深呼吸する。
「よし、朝ご飯にしよう」
キッチンに向かい黒猫と自分の遅めの朝食を用意するために優しく黒猫を腕から降ろそうとしたが、黒猫は〇〇の腕の中のが好きなのか肩にしがみつき離れようとせず、〇〇の頬に自らの頭を擦り付けては甘えてはひょいと、身軽な動きで器用に〇〇の前足を左肩に置いては後ろ足を右肩に置いては肩に乗る。
「しかたないな、朝ごはんの用意するから、大人しくしててよ」
そんな愛猫の愛らしい姿にほだされる〇〇は苦笑いしながらも、愛猫を落とさないように気をつけつつ、キッチンに向かい愛猫と自分の遅め朝食を用意するために寝室を出て行った。
書き忘れがあったので
追伸です
二次創作です…
kattan3年前お題タグ参加したくて書きました!
「朝寝坊」より

ジャンルは某異界の侵略者と若者たち戦う感じの漫画から。
弧月師弟の弟子×師匠。
一応事後なのでご注意を。
ピピ、と高い音が響いた。白い天井に小さく跳ね返って俺の額に降りてくるようなそれは、頭の上の方で鳴っている。
 アラーム。こんなアラームにしてたっけ。てか、今何時。普段のそれと違う音に違和感を覚えつつ、ふあ、とあくびをしながら腕を伸ばす。四角い時計の上にあるボタンを押せば、この電子音は止まるはず。手探りでいつもの辺りを探るけれど、目標とするものになかなか行き当たらない。
 おかしいな、どこかに動かしたっけ。ぱたぱたと手のひらは空を切るばかりでアラームの音は鳴り響いたまま。もうさっさと起き上がればいいんだろうけど、どうせ昼からの講義までにはまだたっぷり時間あるし。いや、でも、講義の前になんかするじゃなかったっけ。本部に寄って、模擬戦の約束を、……。
 ぱちりと目が開いた。そうだ、模擬戦。忙しすぎてめったに付き合ってくれない師匠がやっと時間を作ってくれることになって、俺は有頂天で師匠に抱きついたんだ。どこでって、そりゃあもちろん師匠の、忍田さんの部屋のベッドの上で。
 体が動かなくなっては困るし、落胆するのはお前だろうからちゃんと加減しろって。俺よりさらに体力おばけのくせにそんなこと言って、それでもしたいって言えば仕方ないなと頷いてくれた。昨日の忍田さん、連日仕事ばっかりでろくに帰ってもこれてなかったからかさすがの忍田さんでもくたくたで、でもその分敏感だった。いっぱい感じて喘いでくれて、加減しろなんて言われてたのが吹っ飛ぶくらいには。
 あれ。じゃあここ、俺の部屋じゃない。時計どこだ。音うるさい。
 あれ。じゃあ、ここ忍田さんのベッド。じゃあ、
「……」
 すうすうと静かな寝息を立てているひとが、すぐ隣に背を丸めて横たわっている。こっちを向いてる。ゆっくりの呼吸が胸を上下に動かしてて、本部長の顔してるときにはぎゅっと寄ってることもある眉間がふんわり緩んでいる。きりりとした顔はめちゃくちゃかっこいいけど、気の抜けた顔はめちゃくちゃかわいい。
 普段ならアラームひとつで飛び起きるじゃん。まだ鳴り続けてるのにぴくりとも反応してない。
 そうだ、アラーム。身を起こして見回すと、俺が手を伸ばしていたよりももう少し右の方に時計があった。パチリとボタンを押して、音が止む。それでも、隣に眠るひとはまぶたをぴくりともさせない。
 疲れてたもんなあ、昨日。それなのに俺がしつこくした自覚があるから、終わりの方にはもう本当にくたくたになっていた。でも、普段はきりっとした目がとろけて潤んでこぼれそうになってるのがかわいくて愛しくて、我慢できなかったんだ。だって、模擬戦もそうだけど、こうやって一緒にベッドに入るのだって久しぶりだったんだ。久しぶりの忍田さんだって思えば仕方ない。それに、仕事の邪魔にだけはなりたくないからここまでちゃんと我慢してきたご褒美くらいはあってもいいだろ?
 そっと手を伸ばして額に触れる。短い前髪はさらさらで、掬おうとしても掬ったはなから零れてしまう。
 触れても、起きない。他人の気配には敏感なひとだけど。……俺なら、いいのかな。このひとの愛弟子で、体にふれるのも許してくれた俺になら、いいのかな。
 危機感もなくすやすや眠って、触れられるがままにされて、それでも起きないし怒りもしない。やめなさいって叱られながら、本気じゃあないそれをものともせずにじゃれ合おうとする俺を仕方なく受け入れるこのひとの優しい呆れ顔、それすらなくて。穏やかな顔。俺には見せて、独り占めさせてくれるの。
 起きなくていいのかな。……まだいいか。俺は講義は昼からだし、このひとは俺に付き合って模擬戦してくれるっていうくらいなんだから、きっと午前に外せない予定はないんだろう。
 だったら、いいか。もう少しだけ、この顔を独り占めしていても。
笹百合3年前お題「ベッドに潜り込む」
腐向け。

自ジャンルのツキウタ。推しカプの37で。
上手く投稿できてなかったらごめんなさい。使い方分からねぇ〜よ〜〜〜〜。






「春ー」
「んー」
「はーるーーー春さーん」
「分かってます分かってます」
 夜の帳も下り、ベッドの上で二人。一人はベッドと布団の間に身を挟み込んだ後、相手を呼ぶ。もう一人は名前を呼ばれながらも手にした本に視線を落としたまま。
 何度恋人の名を呼んでも生返事しか返ってこず、さすがに立腹せざるを得ない。ベッドサイドの淡いランプの光に照らされた春の横顔は綺麗で、溜め息を吐きつつも見惚れてしまったりなど。
「もー先に寝ちゃうからなー」
「あー待って……! もう少しで切りのいいところだから……! ……はい! 今終わりました!」
 春は本に栞を挟むと勢い良く本を閉じ、ベッドサイドに置いた。そして、そのままベッドに潜り込んでくる。
「かーい、ごめんね? こっち向いて?」
 春に背中を向けてこれ見よがしに寝る体勢に入ろうとすると、春の甘い声が耳に滑り込んできて、つい言われるままに春に向き直ってしまう。
「恋人と本、どっちが大切なんですかー」
「それは……本……っていうのは冗談だからそんなにむくれないでよー海ー」
 じっとりとした視線を送ると少し慌てた様子で撤回した春。お互い冗談で言っているのは理解していて、一拍置いて二人で噴き出した。
 春とのこの時間が好きだ。一日の終わりに、こうして一緒に過ごせることが嬉しくて、心を満たす。
「海とこうして一日の終わりを過ごしていると、「幸せだなぁ」って感じて、俺、好きだなぁ」
 思っていたことを見透かされていたんじゃないかと感じるくらいに同じ思いを抱いていて、ぱちくりと瞬きを繰り返した。
「海? どうしたの?」
「んー、俺も同じこと思ってたからさ。びっくりしたっつーか、なんかこそばゆいな……!」
「そっか。ふふ、嬉しいな」
 春は目を細めて、そっと俺の頬に手を添えた。その手に自身の手を重ねて、交わる体温の心地よさに笑む。
「春と一緒にベッドに入ると「今日も一日頑張ったー!」っていうのと、「明日も頑張ろう!」って思えて、すげー元気になれるんだよ」
「ん、俺も同じ」
 だから春が本を読んでいても待つし、だからきっと、俺が呼べば春は本を読むのを切り上げてくれるんだ。
「じゃあ、明日も頑張ろうね?」
「おー。春もな?」
 ランプの灯りを消して、薄闇に包まれながら相手の温もりに笑みを零す。
「おやすみ」
 声が重なったその後、唇が重なる感触に心地良く微睡んでいった。
やしお3年前[お題]朝寝坊・ほだされる・舐め取る
息抜きに参加させていただきますー
一次勢なのでさらっと読んでくだされば幸いです
こういうシチュが三度の飯より美味しい
時計ばかりを気にする性分が抜けない。今か今かと目覚めを待ち焦がれる様は傍目からには餌を待つ犬と同じなのだろうか。甚だ遺憾ながら間違いとも言い切れないのだから、つくづく呆れ果てるしかない。
 それもこれも全て今日という日がいけない。カレンダーの印は休日。窓の外は恨めしくも曇りなく晴れ渡り、ベランダの下を覗き見ると賑やかな子供達の歓声が遠ざかっていく。こんな馬鹿な期待を持て余して隣をもう何度見ても重怠げに閉じ切られた瞳が開くことはない。カーテンの隙間に差し込んだ指を払って溜息をついた。
 このまま一日中部屋に篭り切りだっていいんだ。どうせ明日は雨だと聞いた。天気なんて気にしてない。空模様は関係ない。でも立ち込めるこの気分はなんだ。
 抜け出していた部屋に戻ってみると、決して大きくないベットの上に一人、起き抜けの姿があった。

 「寒いんだけど」

 起きたと見るや不機嫌に歪ませた顔と鉢合わせる。

 「なぁ」
 
 ほだされた方の負けだと分かっているのになんでこんなんで泣いてんだろう。

 「……馬鹿じゃないの」
 「な、っに」

 目尻を熱い舌に拭われて出ていたものも引っ込んだ。急に何てことをするんだこの男は。

 「起こせばいいのに」
 
 そんなこと出来たら苦労しない。出来ないからこんなことになっているんじゃないか。

 「待っ……おい、って」
 「うるさい」
 
 引き摺り込まれた腕の中で喚くと、更に力強く拘束されてしまい口答えるのもままならなくなってしまった。二度寝でもする気かこの年中引きこもり野郎。

 「……遅いんだよ」
 
 ぼそりと呟くと、黙らせるように唇を塞がれていた。
onikawakoinu3年前版権です。朝寝坊のお題で書かせていただきました。前世武将と忍びの現パロです。
気持ちが楽だとこんなに書けるのかと驚いています。
「起こしてくれと、言ったのに」
「それに関してはすまなかった! だが目覚まし時計にとどめを刺したのはお前だぞ!」
 それきり黙ってしまった狼を尻目にベッドから起き上がる。脱ぎ散らかされたままの昨日の情事の残滓は無視してとりあえず洗顔と歯磨きを済ませるために洗面所へ行く。
「来るな弦一郎。お前が来ると、狭い」
「いつの間に先に来た!? 前世の技は使えないと言ってたのは嘘か!? 早すぎだろう!?」
「明かせぬ」
「それは聞き飽きたからな!?」
 ぎゃいぎゃい騒ぎながら弦一郎の大きな体と狼の小さな体が押し合いへし合い洗面所を取り合っている。
「お前は電車じゃないだろう! 俺に譲れ!」
「昨日ガソリンを入れ忘れたから、スタンドを経由して行く。早く出たい」
「なら目覚ましにとどめを刺すな!」
「つい」
 結局先に身支度を整えたのは狼だった。弦一郎は波打つに任せた肩までの髪を整えるのに悪戦苦闘しながら、
「狼!」
 と呼んだ。振り返る狼の唇を掠めるように奪った弦一郎は、にっと笑って言った。
「お前、いい加減いちご味の歯磨き粉使うのやめたらどうだ」
 かっと赤くなる狼の顔を両手で掴むと、弦一郎はくわっと口を開けた。
「朝飯は、これでいい」
「俺を、食うな」
 昨日も今日もお楽しみでしたね!