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kattan
8/22 19:57
#2021年8月kakenee民へのお題
お題参加! サイダーで!
二次創作BL要素有
某異界の住人と若者たちが戦う系作品より
孤月師弟。
ワンでライしたくらいの殴り書き。
はしりがき
8/22 19:57
こくこくとペットボトルから液体が注がれる音、というのが、昔から自分は好きだったような気がする。透明のグラス。しゅわしゅわと細かな泡をその透明にはりつかせているさらに透き通った液体。薄い黄色だったり紫だったり鮮やかな黄緑だったり、色はいろいろあったけど、やっぱり完全に透明なのがいちばん好きだった。だってはりついた泡がいちばんよく見える気がするから。ガキだったころにはこのどこからともなく現れる泡が不思議で仕方なくて、ボトルの中では見られないのになんで浮かぶんだろうって目を輝かせてた。氷を入れるともっと泡立って、そんなことにまでいちいち目を見開いてはしゃいでた。俺、あんまり頭はよくないけど、好奇心だけは旺盛な子どもだったと思うんだよな。
好奇心。好奇心だよな、やっぱ。
どうしてだろう、なんでだろう、理由を知りたい。そういう思いから突き動かされることがとても多いんだ。
目の前のこの人に対しても、そう。今はのんきにサイダーなんてコップに注いでるけど、俺の師匠はとにかくもう、言い表しようがないくらいに強い。めちゃくちゃ強い。ノーマルトリガー最強の男、なんていう称号をいつになったら俺に譲るんだよって呆れたくなるくらいには強いままだ。
まだボーダーに入ったばかりのころ、訓練生の中では結構俺は飛びぬけてて、たぶんちょっとばかりは調子にのってた。そんな最中に出会ったのがこんなひとで、俺はもう、とにかく驚いたんだ。こてんぱんに叩きのめされたけど、わりとそんなことはどうでもよくて。剣の筋のあんまりにも迷いなく綺麗な様子に釘付けになっていたのもある。
どうしてこんなに強いんだろう。何が俺と違うんだろう。なんで俺とは違うんだろう。どこが違うんだろう。このひとの強さの理由はどこにあるんだろう。好奇心の塊になった俺を、そのひとはおかしなやつだなって笑い飛ばして、それからわしわしと頭を掻き回すみたいに撫でられた。悔しくないのかって聞かれた。負けたこと自体に対する悔しさはもちろんあるけど、悔しさよりも勝ったのは好奇心だ。だって、どう考えても大人で戦闘経験豊富なこのひとに俺が敵わないだけの理由はたくさんあって、実力もないのに悔しがってばっかりいても仕方がない。そんなことよりもう一度。模擬戦でも何でもして、このひとの強さを知りたい、もっと知りたい。強くなるのなら、そっちの方が絶対に近道だ。そんなようなことを言ったらこのひとは、ふむ、と考え込んで、それから。
「きっとお前は強くなる」
そんなことを言うものだから。
「あんたが強くしてくれるの⁉」
俺は目を輝かせて言ったんだ。それからなんとかこのひとに追いつこう追い越そうと、このひとの強さを解き明かそうと俺は必死にやってきた。とりあえずは攻撃手のトップまで昇りつめたけど、このひとにだけ負け越したままだ。
まあ、そんな最強の男が、今は俺の目の前でなんだか楽しそうにサイダーなんてものを注いでるわけなんだけど。グラスは二つ。暑い夏の盛りだから冷たいもんが喉越しいいのはわかるけど。これがもう少し遅い時間で明日の俺が講義もなくてなおかつ非番なら、注がれるのは揃ってビールなんだけど。残念ながら明日の俺には朝一の講義はあるし、非番でもない。二人揃ってアルコールには弱いからどうせ量は飲めないけど、俺は「大人」だからできることをこのひととするのが好きなんだけどな。出会ったころには許されなかったいろいろが、今やっと許されるようになって、このひと自身に許してもらえるようになって、俺は嬉しくて仕方がない。このひとだって、弟子である俺の成長を叱り飛ばしつつも喜んでくれてるとは思うんだけど。喉渇いたって言ったら、出てきたのはサイダー。しかもやたらと嬉しそう。
「なんで忍田さん、なんか嬉しそうなの」
「ん?」
忍田さんが首を傾げる。いい歳したいい立場のある大人がそういうかわいい仕草むやみにするの、反則だと俺はいつも思うんだけど、このひと完全に無意識だから困るんだよ。いつでも凛々しくてかっこいい本部長、を貫き通してくれればいいんだけど、このひとのこういうかわいいところのギャップを他のやつが知ったらなんかいっぱい寄ってきそうで困るんだよ。ただでさえ尊敬だの憧れだの向けられてんのに。
俺の内心なんか当然のことながら全く知るはずもないこのひとは、にこにこと機嫌よく笑っている。なんでって、って俺に顔を向けて。
「お前、昔からサイダー好きだろう」
この時期は訓練のあと決まってこれだったろうって。
うん、好きだよ。好きだ。俺の好物差し出して、そうしたら俺が喜ぶと思ってるかわいい忍田さんが。どうにも出会ったばっかりのころのイメージがいつまでも抜けなくて俺は子ども扱いされがちだけど、でも、そこにあるのがこのひとの愛情だってわかるから、なんだかんだで俺も満足はしてる。……しちゃうんだよなあ……。
はあぁぁと盛大な溜め息をついて、机に突っ伏する。おいおいどうしたってきょとんとした忍田さんの顔を、サイダーが並々注がれたグラス越しに見る。
グラスは二つ。それなのに、俺側に置かれたサイダーは並々溢れそうなほどで、もうひとつはそうでもない。ついでに言うと、まだ半分以上中身が残ってるでっかいペットボトルが置かれた位置も、随分とこっち寄り。これってさあ。
無意識でするから、ほんと困るんだよこのひと。
「飲まないのか?」
好きだろうって。
ああはいはい、好きです、大好きです。顎を突いたまま上目遣いに見上げると、俺のために注がれたたっぷりの愛情の向こうに、しゅわしゅわいう泡に飾り立てられてにこにこ笑うひとがいる。
「……サイダーで、よかったな」
「うん?」
「……なんでもない」
今目の前にあるのが無色透明のサイダーでよかったなって。変に着色されたんじゃなくて、このひとのそのままの笑顔をこうやって見つめられるから!
天才!
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負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
明日はきっとよくなるよ
のんびり行こう!
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なるようになる!
頼む、続きが読みたい!
この本欲しすぎる
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大丈夫!
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おめでとう!
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やるじゃん!
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