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#727
にしめ3年前Twitterで 「#自分の絵柄の特徴あげてもらってそれを全部封印した絵を描く」 というのが流れてきて、これ文章でやってみてえ~!!と思いました。とても練習かつ頭の体操になりそう。特徴を教えてくれる人が現れるのかはわかりませんけども……
(しかも文章、文体の特徴ってことだもんな?絵よりも指摘が難しいような気もする)
文体封印というにはお粗末なんですが、敬体で書いたことないな~と思い書いてみました。敬体にすると言葉づかいも動作や状況の分解の仕方も変わる気がして、お、おもしろい……。
内容はツリーとは関係ない話ですが、登場人物やカップリングは同じです。
1,800字ぐらい





 ぐるる、とお腹にひびく低い音は、からだの中から聞こえてくるようでした。海底に埋もれた宝物を探すように抱えたギターを鳴らし続けていた勇人くんは、あらがえない浮力に導かれるようにして、ひとつまばたきをしました。まなうらに描いていた深い闇は一転、蛍光灯がまぶしく光る、見慣れたリビングルームへと姿を変えます。渦を巻くような音の中に沈んでいたので、静けさがより際立って鼓膜を打つようでした。
 まだ心臓がどきどきしています。うずくまるようにギターを抱えてかき鳴らしていただけだというのに、勇人くんはまるでほんとうに海底に潜っていたように息が上がっていました。曲作りとは、頭だけでなく体力もすりへるものなのです。
 勇人くんは音楽がだいすきです。何時間でも音の世界にのめり込んでしまいます。でも、限界はありました。 
 はらへった、と心の中でつぶやくと、勇人くんはゆっくりと首を起こしました。がらんとした部屋のなかには誰もいません。この家のあるじ、圭吾くんの気配はずっと感じていたはずでしたが、いざ見渡すと勇人くんが背もたれにしていたソファーに文庫本がひとつ置かれているだけでした。きちんとしおりが挟まれているのは慎くんから借りた本だからかもしれませんし、長い時間席を外すつもりだったからかもしれません。勇人くんにはわかりませんでしたが、またぐるる、とおなかが鳴ったので、とりあえず食べるものを求めて立ち上がりました。
 すると、どうでしょう。ダイニングテーブルの上にはこじゃれた箱が広げられていました。ほのかにあまい香りもします。八等分に仕切られた箱のそれぞれには、薄紙に守られるようにしてきれいなかたちのチョコレートが並んでいました。
 チョコと言うと圭吾くんはおこりますが、勇人くんはおいしいのだから名前にこだわる必要はないと思っています。食べる順番だってそうです。右から二番目だけが空いている小さな区画たちの、いちばん近いところに手を伸ばしました。
 ちょうどその時です。
「あっ、こら!」
 猫の盗み食いに居合わせたような言い方で、背後から声が飛んできました。ふりかえると、グレーのスウェットに身を包んだ圭吾くんがぱたぱたとスリッパを鳴らしてかけよってきます。赤らんだほっぺたに、シャンプーのにおいがふわりと漂って、お風呂から出てきたのだとわかりました。垂れた目尻を厳しくつり上げていたのはほんのわずかな瞬間だけで、あきれたように、もしくは安心したようにふうっと息を吐き出すと、圭吾くんの表情はみるみるやわらいでいきました。
「集中してたな。腹へっただろ」
 そしてチョコの箱を手にとると、どれが食べたいのかと尋ねてきます。適当に指をさすと、「それはオレが食うから、こっちな」と、勇人くんの指がよごれるのを嫌ってか、しろくてながい指先が隣のひとつぶをつまみ上げました。 口に近づけられたのでぱかりと開くと、遠慮なくチョコレートが押し込まれました。
 今までにたくさんのつまみ食いを重ねてきた勇人くんのことです。圭吾くんのように饒舌な品評を並べられなくとも、舌の上でとろける甘さは今までに味わったことのないものだとすぐにわかりました。目をみはる勇人くんを前に、うまいだろ、と言いたげな圭吾くんの視線も満足げです。
「もうひとつ食べるか?」と言いながら戻っていく指の先に溶けたのこりがついていることをめざとく見つけた勇人くんは、圭吾くんの手首を捕まえると、ぺろり、とその指先を舐めとりました。わずかな量でも、じんわりと余韻がからだをひたしていきます。
「ぎゃっ」
「うめえ」
 思わず口にして圭吾くんの方を見ると、お風呂上がりよりも肌を真っ赤に染めて、ぽかんと固まってしまっていました。うるうると揺れる瞳に誘われて、なんとなくくちびるを寄せました。歯を磨いたばかりの圭吾くんのくちびるは、ミントのさわやかな香りがして甘くはありません。しかしどうしてか空っぽのお腹にたまっていくような心地がします。
「……そんなに腹減ってんならなんかつくるけど」
「別にいい、腹いっぱいになった。サンキュ」
「……あ、そう……あんま根詰めるなよ」
「おー」
 うわのそらで返事をする勇人くんの耳には、海底を照らす光のように音がそそぎ込んできます。まぶしくてまっすぐで、きっとうもれた宝物のことも照らしてくれるでしょう。
 勇人くんはギターを抱えてリビングルームの定位置に座りなおしました。うしろではソファーに深く沈んだ圭吾くんが文庫本をひらいたところです。夜はこれから、静かに更けていきます。
おお〜😲
にしめ3年前【お題:舐めとる・ほだされる 】遅刻申し訳ありません。起きてるうちは今日、のもったいない精神で駆け込み投稿させてください。お題ありがとうございます。
8月なので!アイスです!

【二次創作BL・ジャンル】
ド!の勇圭です。
二人組アイドルをやっている男子高校生の二次創作BL、と認識していただければ充分読めると思います。(そして今回のはアイドル要素の薄い話です)

【感想募集中】
どんな内容でもとても嬉しいですが、
もしも【描写や説明がくどくないか、長い/冗長に感じていないか】という観点でなにかあれば言及してくださるとありがたいです。
内容の割に文字数が嵩んでいるのでは……?、と悩むことが多く、気になっているので、ご意見頂けたら嬉しいなあと。
募集するか悩んだんですが、せっかくなので置いてみます!反応0には慣れてる。

お手柔らかにどうぞ、よろしくお願いいたします。
迂闊に溶ける
(1600字程度)





 職員室で涼んだ身体は、数分も経たないうちに二人揃って汗だくに戻っていた。こんなことなら教室でよかった、とわずかに後悔を抱えつつ炎天下に晒された屋上へ、果敢に踏み出す。
 扉の裏手に回ると、そこには期待どおりの日陰ができていた。風が吹けばいくらか涼し気なその場所に逃げ込むと、勇人は座るのもそこそこに水滴まみれの透明なパッケージをさっさと破く。取り出した淡い黄色のアイスキャンディーは既に表面が溶けはじめていた。この暑さなら当然か。
 頓着せずにかぶりつくと棒の先端が歯に当たった。こんな細っこい一本で得られる涼なんてたかが知れているとはいえ、肩透かしを食らった気分だ。生え際から首筋へ流れる汗は止まらない。氷の欠片を噛み砕いていると、間延びした口調が隣から聞こえた。
「ヤマセンいいやつだな」
 見れば、圭吾はまっぷたつに裂かれた小袋から取り出した棒アイスを見つめていた。早く食えばいいのに。
「誰だよ」
「ヤマダ先生だよ、アイスくれただろ」
 彼はつまんだ棒をゆるく振って赤紫色のそれを主張した。先っぽを口に含む傍らで勇人は内心舌打ちをする。炎天下のプール掃除なんて補講というよりもむしろペナルティだ。それをたかだかアイスひとつ――しかも、一箱数百円の、霜だらけのアソートボックスの一本程度でほだされやがって。
 ちょろいとか、そういうのを通り越していっそ心配になってくる。
「なんだよその顔。単位もアイスもくれたんだからいいだろ」
 さっきまでやかましいほど文句を垂れていたくせに。たしなめる言い方にカチンとくるが、暑さのせいで苛立っている自覚はあるので押し黙る。
「時々ウサギにキャベツあげてるらしいよ」
「そうかよ」
 それなら悪い人ではない。あっさりと考えを翻して勇人はアイスの残りをすべて口に収めた。ばりばりと咀嚼する勇人とは対照的に、圭吾は溶けかけた表面をのんびりと舐めとっている。滴の落ちてしまいそうな根元を軽く吸い、舌を這わせて舐め上げていく。ラーメンは一瞬で平らげるくせに、その機敏さはここでは発揮されそうにもなかった。悠長な食べ方を横目で見守っていると、案の定。
「うわ、っと」
 落胆の声と同時に、圭吾の親指に溶けたアイスが垂れた。赤紫の液体が汗に混ざって腕の表面を滑り落ちていく。
「あ、うわ」
 慌てて吸いついて、と思えば次の滴は中指に落ちて手の甲へと伝う。傾いた勢いでシャツの袖にも一点のシミがとぶ。慌てながら自分の腕にあちこちくちづけているのがおかしくて、勇人は思わず吹き出してしまった。
「勇人!」
「へたくそ」
「なんだと、あ、こら!」
 それでいて情けない非難の声にじわりと悪戯心が掻き立てられてしまった。隙だらけの腕を引き寄せて、べとつくところを舌で辿る。ひじの裏から、手のひらまで。
「んっ、」
 圭吾の息が鼻から抜ける。短く漏れた声が、唐突に二人の間の空気を甘ったるく塗り替えたような気がした。視線がぶつかる。その間にも流線型を帯びたアイスはゆっくりと着実に溶けていく。
「食っていいか」
 ほとんど本能的に言葉だけがまろび出た。そして何を、と自問する。視線の先でみどり色の瞳が丸くなって、すぐにとろける。
「……勇人は食い意地が張ってるな……」
 圭吾はほだされてやるよ、とでも言いたげに肩の力を抜いた。掴んだままの勇人の手ごと、アイスが口先まで誘導される。ひとくちで食べてしまうと「ちゃんと味わえよ」と小言がとんだ。舌に残る新しい味はさっきよりも甘い。
濃くて、甘くて、呑み込むとどうしてか渇く。
「満足したか?」
 圭吾は甘い汁がついたままの手を引っ込めず、勇人の眼前に晒したままで首を傾げた。足りないならどうぞ、という意味なんだろうか──足りないって、何を。あんまりなほど無防備に自分を差し出す恋人を前にして、茹だる頭はもうそれを正確に理解できてしまっていた。
 圭吾の首筋に汗が一筋絡みつく。掬いとろうと指先が動く。
頼む、続きが読みたい!
むむむむむ3年前▶迂闊に溶ける 読みました!



 登場人物が学生さんのこともあって、若々しいふたりの雰囲気と、アイスとか夏の情景がとてもよく合わさって、読んでいてとても楽しかったです。それにお二人がいちゃいちゃしていて微笑ましかったです🥰
 表現がくどくないか、等お気になさっていらっしゃるようですが、全くそんなこと思いませんでしたよ!一文一文が程よく短いので、具体的な表現が並んでいてもくどくないですし、かえってリアリティが出てすごく素敵だと思いました!お話の中でカプの生活感が垣間見えるの大好きです。
 素晴らしいお話をありがとうございました!
マジ天使