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#一次創作
昆虫の外骨格5日前ブロマンス的なネタに挑戦!とりあえず完成まで漕ぎつけましたw
ちょっと路線変更で支部のコンテストのテーマに寄せてみましたが…な感じになってます←
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16518642
おめでとう!
戌丸アット1ヶ月前書き直したけどテンポ遅いかもしれない。あと前の方が主人公の異質さがあったかもなぁ哲学的な事を考えた事はあるだろうか?
人類とは何か?のような科学的哲学とかでも良い。
誰でも一秒くらい疑問に思う事があるのではないだろうか。
少なくとも悩む、と言う経験は小さなものを入れてしまえば必ずある。
最たるものなら、神はいるのか?
これに尽きる。
兎に角、飽きない議題で陳腐とすら思える上に、話しかけてきた奴は詐欺師と思ってしまうかも。
ただそれでも。
有り触れていて、かつ答えがないのに追い求めてしまう魅力的な存在。
それが神様だ。
これは、そんな陳腐で魅力的な存在を求めた末の結果として書き留めようと思う。
有り得た可能性から出された一つの結果に過ぎないが終わりがあっただけマシな結果だ。
そう、だから手始めに、まず被害にあったのは髪からだった。

「いって!」

天使の髪のように輝きを纏った綺麗なオレンジ髪にハサミが添えられて耐えられなかった。
だから殴ってしまったのだが、残念な事に正義の味方になれなかった青年はベッドから転げ落ちて目が覚めた。
悪役も呆れるような結末で終わった夢に、ぶつけた頭を庇いながら起きた青年を伊勢武蔵(いせ むさし)と言う。

「なんだあれ」

それはそれは丁寧に論じられた説明など無視した脳みそで武蔵は朝食のパンに齧りついた。
苛立ちから獣さながらに齧ったところで武蔵の虚しさは消えない。
何故、夢くらいで悔しくなっているのかすら納得できないが覚えてないので仕方ない。
そんな辛気臭い武蔵に朝の挨拶をするように玄関の呼び鈴が鳴る。
土曜の朝から訪ねてくれる人なんて誰だろうか?

「はーい、どちら様ですかー」
「……ふむ」
「えっと……」
「本当に居たのですね、ムサシ」
「は?」

は?と呆気にとられる武蔵は悪いだろうか。
本当に居たのですね、と誰に話した訳でもなさそうな緑髪の風変わりな少女は初対面だった。
緑色の髪を持つ同級生なら目立つから覚えてない訳ないのになぁ、と武蔵は途方に暮れた。
コスプレするなら余所でして下さい、と言えば良いか?
誰かと間違えてませんか?と聞くべきか。
どれも正しいかもしれない。
けれど武蔵を見つめる少女の表情が、あまりにも武蔵にとっては心動くほどに安らいだ顔をしていた。

「とりあえず休みたいなら、そう言えば」
「えっ…!」

話しかけた武蔵自身も噛み合わない言葉を言ってしまって内心、焦る。
少女とはいえ見知らぬ相手だ。
突然、訪ねてきた相手に言うべき言葉ではないし、何より会話が成り立っていない。
だが、それでも武蔵には彼女がとても疲れているように見えた。
疲れているなら休めば良い。

「……言うは易し、ですよ」
「でも行動できないなら、せめて言葉にした方が違うと思うぜ」
「なら口は災いの元、と言います」
「は?なら何も出来ねぇよ。そもそも何の話だ?コレ」
「貴方の未来の話です」
「えー?意味分かんねぇ、そういう話なら帰ってくれ」

教会なら、この町にもあるからさ!と関わり合いになってはいけないのだと言う気持ちを隠す事もなく扉を閉めようとした。
しかし扉から嫌な音がした。
まるで大木が折れて倒れるかのような耳障りな音だ。

「失礼します」

そう言われた気がするが武蔵の気のせいかもしれない。
だが気が付くと"玄関に立っていた筈の少女の後ろに武蔵は居た"。
目の前の出来事にゾッとする。

「目標補足。貴方はどうしますか?」
「なんだよ!ゲームみたいな聞き方してくんな!」

ボロボロと壊れた泥団子のように家の扉が黒ずんで消えていくのを目にして、武蔵は途方に暮れた。
人生経験がなくとも分かる。
嫌な予感しかない。

「目標は、およそ1キロ先からの威嚇射撃でしたが何か心当たりは?」 
「ないない!アンタに用なんじゃない?つか玄関どうしよ、流石に武人さんキレっかなぁ」
「タケヒトサン?貴方もしか、っ!伏せて」
「ぎぇっ!?」

警告した口で息を小さく深呼吸をした緑の少女は何故かボールを下投げするように右腕を下から前へと振り上げた。
ビュッンと突風が駆け抜けたような重い音を奏でたとは思えない細腕を止めると、何やら前方へと向けられたものの正体はビニール傘だ。
まさに雨上がりの小学生のように振り回したらしい。

「あ、それ俺の傘」
「呑気ですね、ムサシ」

などと的外れな会話をした瞬間。
家の前にある民家は瓦礫となって、武蔵と少女に襲いかかってきた。
だが想定内だったのだろうか。
慌てる様子も無く、少女は優雅な仕草でビニール傘を振ると、どういう訳か崩落による瓦礫の雨をモーセの奇跡のように真っ二つにした。

「うわっ!風つよっ!」
「おや、埃が目に入りましたか?」
「いや、違うけど!どうなってんの、コレ!」
「説明は難しいですが……とりあえず貴方が夢じゃないのか、と騒がなくて何よりです」
「現実逃避してたら俺、死ぬだろ!」
「ええ、賢明かと。今のは挨拶代わりのようですが今の貴方の様子では回避は不可能なようでしたので私が処理しました」
龍澤澁彦2ヶ月前短くても少しずつ足していくテスト。今度は台風が過ぎてイメージしたことを。家の中にこもりきりだった体を起こそうと、久しぶりの晴れの日に近くを散歩してみた。
台風が明けて晴れ渡った空はすっかり秋の高さだ。見上げてマスク越しに深呼吸する。あの空の青が始まるところの空気を吸い込むように。
今あなたがいるところもこんな風に晴れてるだろうか。
応援してる!
昆虫の外骨格2ヶ月前例の如く、お題確保からの検討タイムです(笑)

・同棲
・手首を縛る
・抱きかかえる
・呆れ返る

内容が決まったらタグ入れ直します!
お題:呆れ返る



「……わ、うわ、あああああああああああ」
「!!?」

 爽やかな早朝におおよそ似つかわしくない叫び声が響いた。そしてその声に男は不意打ちのように叩き起こされる。
 勢いよく身体を起き上がらせた男は、布団から動けず首から上を動かして周りを見渡してみる。薄暗い室内は何も変わることなく、静まり返ったままだ。

 ここで男は考える。
 あの叫び声は紛れもなく家主のもの。だが、なぜ叫んだのかが問題だ。まさか、侵入者がいて家主と鉢合わせたのか。
 考えられなくもない、と男は思った。人里離れた場所で、なかなか大きな屋敷とあれば金目のものが残っているかも、と考える輩がいるかもしれない。また、多少の騒動があったところで立地的にも、気付かれる心配はほとんどないと言っていいだろう。

 そして家の中はあの叫び声以降、不気味なほどに静かだった。男は意を決し、立ち上がると静かに障子戸を開け廊下を覗く。右も左も異変はない。
 廊下に出て、足音を立てないようひっそりと歩を進める。途中、台所に寄り壁にかけられていたホウキを手にする。それをしっかりと握り家主の名を小さめに呼びながら進んだ。
「……おぉーい……無事かぁー?」
「……あ、こっちこっち、風呂場ですー」
 何度目かの呼び掛けに、家主が応えた。男は声の示す通り風呂場へ向かう。脱衣場の戸を開けるが誰もいない。そして風呂場へ向かう戸は閉められている。
「……あれ? 風呂場って言ってなかったか?」
 男の呟きに対し、閉めきられた風呂場の方から家主の声が返ってきた。
「合ってます合ってます! 俺は風呂場の中にいますので」
 あぁー、助かりましたー、と閉めきられた戸の向こう側で安堵する家主の声がする。男は全く状況がわからず、ホウキを持ったまま立ち尽くしていた。
「……いや、無事?ならいいんだ。あんな叫び声上げるから何かあったのかと」
「あります!大ありです!!俺にはもうどうしようもなくて、叫べばもしかしたら聞こえるかも来てくれるかもって思って」
 戸を閉めたまま家主には珍しく、冷静を欠いたように早口で捲し立てるが、男が改めて何があったのかを分かりやすく説明してほしいと言った。
「……ムカデが、ムカデが、出たんです!」
「……ムカデ?」
 意外な答えに思わずおうむ返しをしてしまった。
「ムカデ知らないんですか!?」
「ムカデが何かくらいは知ってるって」
「……風呂掃除してたら排水口から上がってきて、叫んで脱衣場の方に追いやったんですけど……俺、脱衣場の戸閉めてきちゃって……」
 そこにいますよね!?と常ならざる勢いで言われ、男は脱衣場の床を改めて見ると、確かに小さなムカデが歩いていた。
「……あー、このちっちゃいヤツ? ゲジゲジもこんなんじゃなかったっけ? これムカデ?」
 この小さな虫にあんな大騒ぎをしていたのか、と半ば呆れ気味に呟く。その呟きは家主の耳に届いたようで、力いっぱいの反論が戸の向こうから聞こえてくる。
「……ゲジゲジじゃありません!ムカデです!それはオスです!!」
 力強く叫んでいるかと思えば、お願いですから捕まえて外にでも放り投げてきてください……と弱々しい声でお願いまでされる。わかったわかった、と返事をして、チリトリにホウキでさっとムカデを掃き入れると、言われた通りそのまま外へ放り投げてきた。脱衣場に戻り、片付けてきたことを告げると、恐る恐る風呂場の戸が開いた。注意深く周りを見渡して、ムカデがいないことを確認し、男の姿を見てほっとした表情をする。
 緊張していた表情が男を見て緩んだ瞬間を目撃した男の内心はざわめき荒れていた。そんなふうに自分を見て安堵した表情を取られたら、庇護欲を刺激されるしあらぬ勘違いをしてしまいそうになる。
 男は内心に沸き上がった感情を悟られまいと気を付けながら言う。
「……いや、まさかこんな虫だらけの山奥に住んでいて、ムカデが大の苦手なんて意外だな」
「……誰にだって、苦手はあります」
 冷静さを取り戻したのか、いつものように振る舞う家主に対し、男は意外な一面が見れたと心の中で秘かに喜びを感じていた。
「……だから、ムカデが出たら今後もどうにかしてください!!少しの隙間からも入ってくるんですから!!!」
 頼られるのは悪い気はしないが、ムカデが出る度にこんな騒ぎになるのか、と思わず遠い目をしてしまう。
「……嫌いなら逃がさないで始末しちゃえば?」
 言っておきながら、始末するのは俺だ、と気が付いてしまった。しかし家主は首を降る。
「俺が嫌いだから、という理由でそうそう殺せませんよ。彼らだって役割があって生きてるんですから。……それに死体残るの気分悪いので」

 ムカデだけじゃなくて、この家に侵入した生き物はもれなく生きたまま外に逃がしていると言われ、男はいよいよ大きなため息をつくしかなかった。
応援してる!
昆虫の外骨格2ヶ月前創作ネタ記録(仮)

なんとなく思い付いた案みたいなもの
名前もまだ決まってません(笑)
その内、設定とか中身とか増えていくと思います
傾向としては、都会から田舎に移住してきたばかりの40歳(無職)×田舎で実家は農家の33歳(サラリーマン)
とりあえずいい年して両片想いでうだうだしてほしいし、ヘタレ攻めのオットコマエ受けにしたいwww
両片想い:家主編
多分、向ける愛がより重いのはこっちだと思う(笑)

++++++++++++++++



 惚れ込んでしまう人に会ったなら、性別など関係ないと考えている。
 人間性に惚れ込み、その人を知れば知るほど好きになる。共に生きていきたいと望むようになる。それがたまたま、『男性』か『女性』か、というだけのことだった。
 そして、今までとは異なり、かつてないほど長い片想いが続いている。こんなことは初めてだった。驚くべきことにその年数は13年を過ぎた。数字で見ると長さがより際立つように感じる。
 相手はSNSで知り合って、意気投合して、たまに会って、そしてインターネットという空間でやり取りを行う存在だ。相手には相手の生活があり、こちらも同様である。いわゆるプライベートな部分まで深追いなどしないほうがいいのだと思っていた。
 
 ……思っていた、のだが。

 ある日の通話で転職すると知り、新しい仕事が決まるまでの空白期間、まぁまぁ高い家賃の支払いがしんどい、といった愚痴を聞いたとき冗談のように(内心は本気だというのを悟られないよう気を使って)、ウチに来ないかと言ってみた。田舎だし、一軒家で一人暮らしだから部屋が空いてると言えば、あっさりと彼はこちらへ来ることを決めたのだった。

 それからの展開は早かった。あっという間に共同生活がスタートする。

 そして家主には、惚れ込んだ相手には尽くしてしまう、という自覚があった。とにかく、相手の為にできることをしたかった。しかしこれは度が過ぎれば鬱陶しいだけだと理解もしているので、必要以上にのめり込まないよう、常に己を律していた。
 どれほど仲良くなったとしても、言葉遣いが丁寧語のまま変わらないのは、そのためである。距離を詰めすぎないよう、常に一線を引き続けるためだ。
 その線を越えた瞬間、抱えるこの感情は愛ではなく独占欲に変わってしまいそうで怖いと感じている。

(……難儀な……)

 自分のこの性質は本当に難儀だと思っている。常に相反する感情が拮抗してしまうのだ。
 近寄りたいけれど、それ以上踏み込んではならない、とブレーキが掛かる。
 向ける愛情が大きくなればなるほど、こんな感情を抱いていると知られたくはない。


 年数ばかり重ねた結果、愛や恋にすっかり臆病になってしまい反射的に上っ面を整える事ばかりが上達してしまった。
反応ありがとうございます!!!
その内、気が向いたら増えていると思います(笑)
昆虫の外骨格2ヶ月前進行中ばかりですが……お題に挑戦したいと思います
どれを使うか、まだ考え中←

・元恋人
・一晩中
・指でなぞる
・負けず嫌い
お題:元恋人



「つかぬことをお聞きしますが」
「……な、なに……?」
 家主が帰宅すると開口一番、ただいまを言うでもなく突然そう言うので、男はつい身構える。

 SNSで知り合って13年、それなりに交流もあった間柄ではあるが、実際に一緒に暮らすとなるとまた印象が変わるものである。普段から穏やかな口調でそれは変わらないが、今の問いかけに含まれたのはいつもの静かな響きだけではなかった。人を緊張させる何かが含まれている。
「…そういえば、お付き合いされている女性がいましたよね。こちらに来ることを知っていますか?」
「……? …いや、仕事を辞めた時にそれを理由に別れてきたんだ……。向こうは結婚する気でいたから、結構モメて……って何で急にそんなことを聞くんだ?」
 帰宅していきなりこんな話題を出すなど、家主のどうにも常とは異なる様子に男は訝しんだ。それが男の視線に含まれていたのか、目が合うと家主は小さくため息をつく。
「……今日は、帰りにスーパーへ寄ったんですよ。そしたら入り口で見知らぬ女性に声をかけられましてね」
 その女性は家主にスマホを向け、画面の写真を見せてこう問いかけてきたのである。
「……『この男性を探しています。見かけませんでしたか?』と」
「……おい、まさかそれ」
 男はそれ以上の言葉が出てこなかった。家主の沈黙がより恐ろしさに拍車をかけてくる。
「…なんていうか、独占欲は強かったしすぐ嫉妬してきたし、束縛が強かったし思い込みも激しいタイプだとは思ってたが……まさか追いかけてくるとは……」
 その呟きに、家主はそれでよく付き合ってたなと言いかけたが、言葉になる前に飲み込むことにした。頭を抱えてしまった男に、家主は更に続きを話し始める。
「他にも、その女性は気になることを言っていました。『確かにここに立ち寄った形跡があるんですが、途切れてしまって』というような。……まさかとは思いますが、持ち物に仕込まれてませんか? その可能性が捨てきれません」
 それを聞き、男はもちろん考えたよ、と小さく呟いた。だから所持品を必要最低限にし、衣類は異変がないか入念に調べたことを話す。
「……でもピンポイントでこの村まで来たことを考えると、まだ可能性はあります。たかだか一週間程度でここを探り当てるとは思えませんしね」
 家主はいくつかの考えられる可能性を示した。
 まず、スマホにそういった追跡アプリをいつの間にか仕込まれたのではないか、と。村内でも麓の方は追跡できる電波を受け取れたが、そこからぐっと山の中に入ったこの集落では探知しきれなかったのかもしれない。
「……だから女性は、形跡が途切れたと困っていたのでしょう」
 そして、仕込まれている可能性として靴とキャリーケースも示した。出かける際にほぼ絶対に身体から離れないものといえば靴である。
「……スマホに追跡アプリを仕込まれたっていうのもよくわかるな……。やりそうだわ……」
 靴に仕込むのはできるかわからないが、可能性が捨てきれない以上、処分やむ無し、と男は決めた。改めてスマホのアプリを全て表示するが、もちろん見慣れないアイコンはたくさんあるし、なんのためのものかわからないファイル名も多々ある。女性が仕込んだ追跡アプリも、こういった見慣れないものに擬態するよう作られているものだったのかもしれない。あからさまなら、誰だって気付いて消すだろう。
「……割って壊すか……それで新しいの契約し直そうぜ」
 それがいい、と男はスマホの掴むと土間に向かう。段差の上に立ち、地面に向かって叩きつけようと振り上げた腕を家主に止められた。
「それではせいぜい、画面がひび割れる程度ですよ。確実に、使えなくしましょう」
 それを貸してください、と差し出された手の上に男は自分のスマホを置く。家主はそれを持って居間へ戻っていくので、男はそのあとについていく。
 家主はペンスタンドに入っている細めのマイナスドライバーを持つと、スマホの充電口に差し込み、テコの原理を用いて画面を本体から容赦なく剥がす。剥き出しになった基盤も同様に外し、繋がる細いコードはハサミで切り離した。こうして手際よくスマホを魚の三枚下ろしをするかのように分解し、男の手に乗せて言う。

「これで今週末の予定は決まってしまいましたね」

 隣の市まで足を伸ばして、大型商業施設に行きましょう、と家主は微笑んだ。

 スマホに加え、靴や服も一新した方がいいかもしれない、と男は手の上に乗っているスマホの三枚下ろしを見ながら思った。
反応ありがとうございます!!!
嬉しいですー🙌
掛内翔2ヶ月前都市伝説とクトゥルフをかけ合わせた一次創作です。カクヨムで不定期に更新してますが、載せる分量じゃないけど自分を追い込むために書けたところまで載せてこうと思います。1-3(作成中)
*
*
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「さて、話もまとまったところでわたしは帰ります」
 アイネは立ち上がると、ぱんぱんとスカートをはたいて埃を落とした。
「怪異退治は今夜から始めますので、イチロもそのつもりで」
「え、今夜から?」
 急な話におれは思わず声を上げた。
「何ですか、自分で祈里を助けるって言ったそばから撤回するつもりですか」
「い、いや。もうちょっとこう、心の準備とかいろいろあるだろ」
 アイネはぐいっと顔を近づけて、少し怒るように眉間にしわを寄せた。
「さっきの話を聞いてなかったんですか? 祈里はすでに狂気に陥ってるんですよ。このまま時間をかければ、いずれ瘴気による汚染で取り返しのつかないことになるかもしれないんです」
「そ、それは……」
「もしかしてイチロ、もう少し祈里の狂気が長引いてくれればキスだけじゃなくてもっといろいろしてもらえるかもしれない、なんて期待してるわけじゃないですよね?」
 軽蔑するようなアイネの目に、おれは慌てて首を振った。
「そんなこと考えてるわけないだろ。わ、わかった、完璧に理解した。今夜から早速始めよう」
 物問いたげな祈里の視線から顔をそらしつつ、おれは頷いた。
「結構です。それじゃまた夜に。それと、祈里のことはちゃんと見ていてあげて下さいね。もしまた発狂したら、適度に発散させてあげて下さい」
「は、発散?」
「さっきもしていたでしょう」
 言われて、祈里の唇の感触を思い出してかっと体温が上昇した。
「言っておきますが、あくまで祈里が発狂したらですからね。自分から迫ったりしないように。偏愛の狂気のせいで祈里が仕方なくしてるということは忘れないで下さいよ」
「わ、わかってるって」
 おれに詰め寄るアイネの横から、祈里が顔を覗かせる。
「巻き込んでごめんね、イチロ君」
「い、いや、こっちこそごめんというかなんというか」
 祈里から謝られると、狂気のせいでキスをしただけでおれを好きなわけじゃないからとはっきり言われたようで心に来る。いや、わかってる。全部おれの勝手な願望で祈里は最初からおれのことなんか興味がないってことぐらい。
「アイネ、ご飯」
 祈里がアイネの服を引っ張る。
「ああ、忘れるところでした。はい、頼まれてた物です」
 アイネが少し大きめの紙袋を祈里に渡す。ふわっとパンの香ばしさが鼻をつく。
「イチロ君、一緒に食べよ。お詫びの意味もかねてだから、遠慮しなくて良いよ」
 祈里が綺麗にラッピングされたサンドイッチを取り出して、手渡してくる。そういえば今は昼休みだったと思い出し、急に空腹感が襲ってきた。
「ここのお店の好きなんだ」
 渡されたサンドイッチからマスタードのツンとした香りと甘辛のソースの匂いが広がり、忘れていた食欲が勢いよく鎌首をもたげる。
「しっかり食べておいて下さいね。怪異退治には体力も必要ですから」
 背中を向けるアイネから、01の青い燐光が舞う。それは昨日初めて会ったときも、そしてさっき現れたときも見えたものだ。
「アイネ、それ何なんだ?」
 肩越しに振り返ったアイネが、おれが指さしているものに目を向けて頷いた。
「これですか。あー、エフェクトです」
「エフェクト!? エフェクトかかってる人間なんていないだろ」
 アイネがおれをからかうために冗談を言っているのだと思ったが、その表情は真面目なものだった。
 あごに指を当てて、少し思案した後アイネが呟いた。
「そうですね、わたしについてもどうせ後で言うつもりでしたし」
 アイネは一度向けた背を戻すと、おれに向き直った。
「先ほど魔術の話をしましたが、怪異に対する知識やそれに対抗する方法はどのように蓄積されて、伝えられると思いますか?」
「え、っと……都市伝説みたいに噂とかでじゃないのか?」
「確かに口伝もそのひとつではあります。ですがそれはあいまいで正確性には欠けますね」
「じゃあ、書物とかか。怪異ものでよくある古文書とか、魔道書みたいな」
「イチロにしては察しが良いですね。そうです、魔術の知識は基本的には魔道書に書き記され、伝えられてきました」
 ぴんと指を立てるアイネに、おれは首を傾げた。
「それがアイネと何の関係があるんだ? アイネが怪異とか魔術に詳しいのは、その魔道書を読んでるからって言いたいのか?」
「いいえ、そうじゃありません」 
 アイネは半分閉じていたまぶたを開き、意外と女の子らしいくりっとした瞳をおれに向けた。
「一応言っておきますけど驚かないで下さいね、イチロ」
 それはどういうことだと聞こうとして、おれはアイネの瞳の奥に煌めく蒼い光に気がついた。おれは反射的にその光を目で追い、吸い込まれるようにアイネの双眸を覗き込んだ。

 そこには、蒼い煌めきに満ちた夜空が広がっていた。

 0と1の無数の羅列によって星々が形成され、それらが無限の暗闇の中に点在している。ひとつひとつに目をこらせば、それは文字列となっていることがわかった。それらの意味していることはほとんどわからなかったが、直感的に理解できるものもあった。それは今までアイネに教えられてきた怪異の知識だった。
 さらに身を乗り出してほかの文字を見ようとしたが、アイネがおれの胸を押しとどめた。
「それ以上はイチロにはまだ早いです」
 我に返って、おれは頭を振った。
「今のは……?」
 アイネはそれについて直接答えずに、再び半分目を閉じた。
「魔道書は時代によって形を変えてきました。大昔は石版に刻まれ、木簡、羊皮紙、紙などの様々な歴史を経て、イチロもよく知る本の形にたどり着きました。ですが、現代ではインターネットを通じて都市伝説の情報交換が行われるようにさらにその形を変えたのです。つまりは、データとして」
 アイネの指先がほどけ、蒼い燐光へと変わっていく。それらひとつひとつが無数の0と1の螺旋により形成され、文字でとなり、知識を形作っていた。

「わたしは電子魔道書アイネ。怪異と戦うために現代で造られた存在です」

   *

 アイネが立ち去った後、おれは祈里と昼食を済ませて教室に戻っていた。祈里は食事中にほとんど何もしゃべらなかったので普段なら気まずく感じていたが、一度にいろいろと説明されて頭がぐちゃぐちゃになっていたおれにかえってその沈黙がありがたかった。
「ねえ、イチロ君」
 ぐでっと机に倒れたおれに、祈里が声をかけてくる。
「さっきのご飯おいしかった?」
「え、ああ、うん。おいしかったよ、ありがとな」
 正直考えるのに忙しくて味なんかわからなかったけど。
「ああいう味、好き?」
 用がない限り口を開かない祈里にしては珍しく重ねて訊いてくる。おれは不思議に思いつつ、どんな味だったっけと必死に思い出して頷いた。
「そっか。うん、わかった」
 何がわかったのかがわからなかったが、祈里は満足したのか話を終えて席を立った。心なしかその歩調が弾んでいるような気もするけど、さすがに気のせいだろう。
「今晩から怪異退治か……」
 口にしてみてその非現実さに笑いがこみ上げてくる。昨日実際に自分で経験したにもかかわらず、まだその実感がわいていなかった。
「ねえねえ、イチロ君。ちょっといい?」
 顔を上げると、数人の女子がおれの席を取り囲んでいた。
「比良守さんと何かあったの? っていうかあったんだよね、普段一人で食べてる比良守さんとお昼も一緒だったみたいだし」
「二人って付き合ってるの? 何があって付き合うことになったの? 昨日からいきなり変わってるから、昨日何かあったんだよね?」
「比良守さんって二人だとどんなこと話すの? 二人でどんなところ行くの?」
 何事かと身体を上げるおれに、女の子たちは一斉に質問を浴びせてきた。
「い、いや……別におれは……」
「どっちから告白したの? やっぱりイチロ君? それともまさか比良守さんから?」
 襲ってきたのは向こうから、なんて答えたらとんでもない騒ぎになりそうだ。
「わたしたち比良守さんと話してみたいと思ってたんだけど全然機会がなくてさ。でもイチロ君と仲良くなればしゃべれるかもしれないから、よかったらーー」

「ごめん、そこどいてくれる」

 おれを囲んでいた女の子たちがばっと振り返る。女の子たちの後ろに立っていた祈里は開いた隙間を通っておれの隣の席に座る。いつもは静かに椅子を引く祈里が珍しく音を立てていた。
「あ、えっと……お邪魔だよね、わたしたち」
 無言の祈里のプレッシャーに負けて、はははと笑いながら潮が引くように女の子たちが去って行く
「比良守さん、怒ってた?」
「わかんないけど、なんか不機嫌そう……」
 横を通り過ぎていく女の子たちのつぶやきに、おれは祈里の横顔に目を向ける。いつもと変わらない、感情の読めない表情に見えるけど。
 そんなことを考えていると、くるっと祈里がこちらを振り返り目が合う。
「ねえ、イチロ君」
 別にやましいことをしていたわけじゃないのに見ていたことがバレたかと内心焦りながら返事をする。
「えっと……何かあるのか、比良守?」
 おれの言葉に祈里は少し目を細める。
「それ」
「え? それって?」
「名前」
「名前?」
 何を言われているのかわからずに首をひねる。そうしている間にも、さらに祈里の目が細くなっていく。何かまずいことをしたのかと思い、冷や汗が流れ出す。
「祈里」
「え?」
「比良守、じゃなくて、祈里でいいよ」
 その言葉の意味がよくわからずおれは何度か瞬きをした。そして意味がわかった後で、ぽかんと口を開けた。
「わたしはイチロ君って呼んでるから。それに名字で呼ばれるのあんまり好きじゃないから」
 何かを期待するように祈里がおれをじっと見る。
 いやいや誤解するな。さっきおれのことは別に好きでもないんでもないってわかったじゃないか。ここで調子に乗ったら気持ち悪いって思われるはずだ。冷静に、冷静になれ。
「い、祈里……」
 平静を装ってなるべく自然になるような声を作ったつもりだったが、残念ながら震えまくっていた。
「うん」
 それでも祈里は満足そうに頷くと、用は済んだとばかりにスマホを取り出してそちらに視線を落とした。
 女の子の名前を呼ぶという今までの人生でほとんどない体験に、無駄に緊張した心臓がずきずきと痛んだ。
 祈里のことを助けるって言ったけど、これからも好きでもないのにキスされたりしたら身体が持たない。早く怪異退治を終わらせないと。
 決意を新たにしたおれに、アイネからメッセージが届いた。
『今夜のターゲットの情報を送っておきます。目を通しておいて下さいね』
 おれはそこに書かれた名前を見て、思わず声を上げた。
頼む、続きが読みたい!
龍澤澁彦2ヶ月前kakenee始めたからには自分も何か書かなきゃなあと思い、今週末の台風で浮かんだシチュエーションを書いてみました。拙いですが……。「おはよ。雨すごいねえ。タコ殴りの雨ってやつ?」
「それを言うなら横殴りね。おはよ。雨うるさかった?」
パジャマ姿で目をこすりながらリビングにやってきた彼女に答える。
「うん、やっぱり台風来てるんだね~。昨日はそうでもなかったのに。」
「そうだね。私も音で目、覚めちゃったから。紅茶入れるね。」

カップに少しの水と牛乳を注ぎティーバッグを入れてラップをかけて電子レンジにかける。そして電気ケトルに水を入れて台にセットする。これは私の分。電子レンジが彼女のミルクティーを錬成している間に、沸いたお湯を自分のカップに注いでティーバッグを入れる。抽出を待つうちに電子レンジが音を立てるので、私はカップを取り出し砂糖をひとさじ入れてかき混ぜる。

彼女との交際は二年にもなろうかとしている。完全週休二日制だが小さな会社で休日出勤も多い私と、接客業で週末の仕事も多い彼女との間で会える日はそう多くはなく、今日は久しぶりに二人で過ごす休日だった。
この日に向けてどこに行こうかなんて予定を立てていたものの、数日前から発表された台風の進路予報に外出のプランはあえなく崩されてしまった。ならせめて家で映画でも見て過ごすかという話になり、彼女は台風に足止めされないよう、勤務明けの前夜から私の住むマンションの部屋に泊まりに来ていた。

「はい、できたよ。砂糖足りなかったら足して」
「ありがと~。台風の日って家の中にいるありがたさを実感するねえ。」
安心しきった彼女の声を聞きながら、自分のマグカップからティーバッグを引き上げる。外に目を向けると、朝目覚めたときから勢いを落とすことなく雨粒が窓に打ちつけている。このままの勢いが続けば都心でもどこかが冠水するかもしれない。

ふと自分のマンションの外までも水があふれた姿を想像する。街が私たちのいる階の真下の高さまで水に覆われて、この部屋が陸の孤島と化す。そうしたら仕事に行くこともなく明日も明後日も二人で過ごすことができるのに……いやいや食料はどうする水道も電気も止まるだろう。阿呆な妄想は即座に現実的思考に却下されて、私はマグカップをもって彼女のもとに戻る。
「これだけ雨がすごいとさあ。ここらへんも水に浸かっちゃってこの部屋だけ陸の孤島になっちゃったりして!そしたら帰らなくてもいいのにねえ。」彼女が言った。

「……んなわけないでしょ。」
私は呆れ混じりに微笑んで返す。たまたま昔読んでいた漫画の、一番好きだった描写までもが一致してたような、そんな気持ちを隠しながら。
きゅんとした
souryoni12ヶ月前一次創作書きたくてもほば1つもいいねもブクマもとれなくてうまっていくお前は俺かkaturausui2ヶ月前とりあえず一妻多夫~の番外編最終回分(26日更新)まで更新予約セット完了。

これから書くこと。
詰んでる元悪役令嬢の10月更新分(できれば2回分)。
完璧な王子様~の番外編のネタをひねり出す。せめて一年経つ前に更新したい。
一妻多夫~の次の番外編のネタをひねり出す。
9月中にできますように。

でも、相変わらず燃え尽きかけてる……

新作は遠いなあ……
頼む、続きが読みたい!
unknown3ヶ月前登録してみたのでリハビリしてみました。普通の人間には見えない姿。サキュバスと猫のハーフの『デザインベビー』として生を受けた彼、湊は双子の妹である海月の生気不足に真っ先に勘づいて寝静まった夜の街を『獲物』を求めて滑空していた。不意に、眠っているとも起きているとも捉えられる気配を感じ、窓辺で浮遊を続けながら室内を覗き込む。枕元には大量の薬剤シートが散らばっており、微弱に感じられる彼女の夢の中へと侵入を試みた。複数の薬剤で昏迷状態である彼女の夢への侵入は容易く、現実と同じようにベッドにただ横たわっていた。気が引けないといえば嘘にはなる。ただ、過去の事件から湊からしか生気の供給を受け付けない海月のためにはそんな綺麗事は言っていられない。
せめて苦痛を与えないよう、静かに夢の世界でも横たわりどこを見ているのかわからない、焦点の定まらない瞳を覗き込む。ここまで接近してようやく彼女は反応を示した。
「だれ……?」
「大丈夫だよ。ここは君の夢の中。現実ではないから安心して」
「ゆめ……、なら私まだ生きてるのね」
 自嘲からか彼女の口許が吊り上がった。やはり意図を持っての過剰服薬だったようだ。
「そうだね、残念かもしれないけど。でも俺は嬉しいよ」
 死を願ったまま眠りに就いたためか彼女の肌は氷のように冷たかった。
頼む、続きが読みたい!
はるあられ3ヶ月前とりあえず、導入だけ。先っちょだけ。
モチベが著しく下がっているので先っちょだけ(2回目)。
かつて、この世界には星々が生きた証を刻み、そして語り継ぐ一族が存在した。
彼等は〈星の記録者〉と呼ばれ、世界が正しくあるようにと後世に語り継いでいった。
しかし、文明の発達や戦争により一族は絶滅の一途を辿った。命からがら生き延びたものの、多くの同胞を失った彼等は酷く傷ついた。
そして、彼らをさらに追い込んだのは機械の発明だった。これにより、星の記録はヒトから機械へと変わり、もう社会は彼等は必要とすることはなくなった。
役割を終えた彼等は、社会に、人に、紛れ静かに生きていくことになった。今となっては本当に彼等が存在したかもわからない。
ただひとつ、わかるのは彼等の名前にはC〈チェゼラー〉の名が付くということである。

これは、そんな云われがある青年の話。
なるほど
やしお3ヶ月前[お題] 
一晩中/指でなぞる/負けず嫌い/元恋人
最近見た作品の影響でした。創作キャラの青年×少年です。
いい加減にしておけと言っても利かん坊の少年は諦めが悪かった。何度地図と風景を見比べても決断は覆しようがないのだし、まじまじと下ばかり見詰めないで欲しいのだが。勢いよく顔を上げると「やっぱり戻るんだった」なんて言う。この満天の星が目に入らないとは驚いた。短気というか、何というか。ここははっきり言うべき所だ。『“元”になりたくないのなら』なんて念押しも兼ねて。

 「今更遅いっての。一晩馬車走らせてここまで来た苦労は?」
 「それは俺のせいじゃないだろ!」
 
 何がご不満なのやら、隣でやいのやいの憤懣やる方ない顔をくい、と上向かせてやる。「ほら」。真っ黒の空に指で線を描いていって、最後に一続きにして完成した図形を見ると刺々しかった相好がほんの少し揺らいだ。

 「せっかく良く見えるのに勿体ないぞ」
 「あくまで認めないつもり?」
 「つもりも何も」
 
 偶には旅路の中で道が途切れる方を選んでしまう事もあるさと、物言わぬ天上に感謝を呟いて。林野の虫の音とせせらぎに自然と瞼が重くなる。返って来るのは恨めしそうに懐へ身を寄せる体温だけだったが、心地よい睡魔に意識を預けると眩い光の群れはふっつりと微睡みの向こうへ流れていった。
やしおさんのやる気に変化が起きました!
焼き肉3ヶ月前今から今日の夜出す300字ssと、消化中の過去お題の2本書くどー!お題「年の瀬」(287文字)
注・さっき投稿した会話文ssと同一人物です。



「クリスマスーは今年も終わったねー♪」
「歌の原型ないよ、カノジョの花乃ちゃん」
「なくていいの。彼氏の彼ノ矢史郎くん。クリスマスってお店は12月の始め、下手したら11月から飾り付けで雰囲気出すのに、撤収早ーい」
「すぐ年末、正月とイベントがこの時期は詰まってるからね」
「なのにクリスマスばっかカップルが浮かれてるって言われるのよね。何で」
「性夜……」
「0点」
「年の瀬と正月は家族行事イメージでしょ、日本では」
「50点の模範解答。今年は私、彼氏くんと過ごすもんね〜」
「うふふ」
「えへへ……。あっ、クリスマスケーキ安売りしてるみたい! 買っていこ!」
「あっという間を楽しんでるじゃん」
企画投稿日明日なのに今日と間違えてたという綺麗なオチがつきましたとさ……まあバタバタしなくて済んだってことでw
焼き肉3ヶ月前あなたの季節感を破壊する!300字一次健全クリスマスssです。スマホのカメラで名もなき花の、写真を撮った。すると花が画面からニョキニョキ生えて来た。

「名もなき花じゃないわ。ユウゲショウって言うのよ」
「なるほど、君のあの可愛いピンク色の花ってユウゲショウって言うの」
「可愛いなんてそんな……キャッ♡」

 花が恥じらう乙女となった。以来、名前も知らない花を撮ると、彼女がスマホから生えてきて、名前を教えてくれるようになった。

 ユウゲショウの盛りは過ぎ、とうに秋。写真の中のユウゲショウは今も、永遠に色あせない写真の中で生き生きと、僕に花の名前を教えるために咲き続けている。

 ほら、今も!

「アレはねえ、イヌタデって言うの。私と同じピンクの花でも見惚れちゃダメよ……」
ひっそり続けている一次300字ssで気に入ったやつを久々に。出来るだけ毎日書きたいが、結構ネタに詰まるな……。
醒(せい)3ヶ月前一次創作というよりもポエムですが、とある出来事でネタが下りてきたので走り書きします。
一応タグはつけておきます。
月と太陽を象徴する、青を基調とした虹色に煌めく石が敷き詰められた庭園を歩いていく。
足音すら吸い込まれる程に静かな空間の向こうに見えてくるのは白金の宮殿。
門戸は大きく開かれていて、いつでもどこでも誰でも訪れるものを拒まない、大いなる慈愛に満ちた女神の住処。
以前は何のためらいもなく訪れていたのだけれど、今の僕はその入り口で足を止めてしまう。
神殿の中に入り、姿を見せない女神に恐れ多くも言葉を紡ぎ、その返礼を賜り、改めて信仰心を募らせていたのはかつての話。
今の僕はあなたに声を掛けるどころか近づく資格すらない。信心するのはあなただけだと誓ったはずなのに。
「…」
手に持っているラピスラズリで出来た枝は、いつかあなたが僕のようだと言ってくれたもの。
ありったけの感謝と敬愛、慕う想いを唇に乗せそっと口づけ、神殿から伸びる石段に添えるも、それは跡形もなく消えていく。
分かっている。神殿の中に入らなければ、その想いはいくら重ねても届きはしないということ。

神託でもお告げでもなく、僕の言葉に真摯に向き合い返してくれたあなたの言葉はずっと僕を支え続けてくれた、何ものにも勝る宝物でそれは今も変わりません。
あなたは愛(かな)しいくらいに優しくて慈悲深く、そしてとても繊細で。
そんなあなたをもっと知ってほしくて、人の世に引きずりだしたのは僕で。
あなたの力を認めた多くの人があなたの元に集って、僕の役目はもう終わったのだと、そう思った。思ってしまった。
僕が居なくたってあなたは十分にやっていける、心が不完全で不純な僕が居てはあなたの魅力が霞んでしまう。
だからあなたの膝元から何も言わず旅立っても、きっとあなたは前を向いて、新たに会得した同志と共にやっていっているのでしょう。

–––他の神に魅せられて、勝手にあなたを置いて行った、僕のことなんか忘れて。

それでもこうしてあなたが息づく神殿に足を運んで、あなたの神託を聞く僕は何ともおこがましい存在であることは重々理解しています。
だけど、拠り所や敬う神が増えても、唯一神はあなただけ。
きっともう信じてもらえないだろうけども。

「また、来ます」

新たな聖詞が発言されるという神託を受けて、僕は白金の神殿を後にする。
僕のことなんかもう忘れてください。
でも僕はあなたを忘れない。

優しいあなたに漬け込むことしかできない卑怯な僕に天罰が下るまで––。

****
先日投稿したものと設定は地続きなんだけど単品でも読めます。
これ好き! 好きすぎる!
水月 千尋3ヶ月前お題『朝寝坊』をお借りしました。私は朝寝坊をしたことがない。
 小学校に入学した日から、会社に入って一年が経とうかとしている今現在に至るまで。一度もだ。これは何もかもが十人並で、人様の前で披露出来るような突出した特技があるわけでもない私の、本当に唯一の自慢だった。だから働けなくなる年齢になるその日までは何があっても──それこそ死んでも貫こうと強く強く決意していた、が。

「…………っ!?」

 夢のぬかるみから唐突に意識が浮上し、はっとまぶたを開く。
 固い床の上だった。遮光カーテンがぴったり閉じられた薄暗い部屋で大の字になって、見慣れた天井をしばらく呆然と見つめる。
 身体に染み付いた長年の習性。いや、賜物か。どうやらスマホアプリでセット済みのけたたましいアラームも、眩しい朝日の力すら借りずに覚醒したようだった。
 それにしても今はいつだ。
 何時何分何曜日なんだ。
 何故か全力疾走の後のようにバクバクする心臓を押さえる。必死に答えを求めて目をさ迷わせると、壁にかけたウッド調の時計が見えた。
 七時三十二分。時刻を針で刻むだけのシンプルな壁掛け時計なので、さすがに曜日まではわからない。慌てて身体を起こして周辺の床をまさぐった。
 目的はスマホだ。あれを見れば、今知りたい全てが解決する。いらぬ絶望までもたらしてくれる可能性は高いが、どのみちあれがなければ会社に全力で謝罪の電話をすることも出来ないのだから、遅かれ早かれ見つけなくてはいけない。
 いつもなら頭の周辺に置いてあるはず──そう思いながら探っていると、寝ている間に弾き飛ばしでもしたのか、ベッドの下に半分潜り込んだスマホを見つける事が出来た。喜ぶ間も惜しい。早速それを引っ付かんで電源ボタンを押す。
 ところが画面はつかなかった。長押ししても連打しても、うんとも、すんともいわない。
 考えうる事は、ただひとつ……。

「スマホの充電切れとかバカかな自分!?」

 叫びながらすぐさまコンセントの周囲を見るも、充電アダプターはない。どこに置いたのかも思い出せない。もう頭の中はパニックだった。
 とにかく充電出来るものを──。
 いや最悪テレビでもつければなんとか──。
 あれこれと策を練りつつ、跳ねるように立ち上がる。ドアを開け放って駆けた先はリビングだ。そこにならきっと解決策があると信じて。しかし。
 私は、リビングの入口で床の一点を見つめて動けなくなった。
 フローリングに敷いたブルーのラグには、部屋着用のだぼっとしたワンピースを着た女が倒れていた。うつ伏せなので顔は見えない。女の頭の側には、手に持っていたらしい白い充電アダプター。くねるコードは肩までの黒髪と絡み合うように重なり、ラグの海に線を描いていた。
 ……やっと思い出す。
 充電器を探して夜中にリビングまで来たこと。
 殴られたかと思うほどの激しい頭痛に見舞われたこと。
 そのまま、気を失ったこと。

「…………なぁんだ」

 もう寝坊してもいいんだった。
 ほっと胸を撫で下ろした私は、静かに薄闇の中へと戻った。
これ好き! 好きすぎる!
かりん3ヶ月前二次創作で書いていたものを一次創作に変えたんですが、キャラが半端なく多いため吐血案件かもしれません…「はぁ・・・はぁ・・・っ!」

夜、辺りは暗く何も見えない深い森の中を、必死に走る少女がいた。
彼女は、時々後ろを振り返りながら、何かから逃げるかのように走っていた。

いつもは慣れているはずなのに、どうしても走る事が出来ない・・・っ!
早く、あの子の元へ行かないといけないのにっ・・・!

「・・・っ!!」

後ろから足音が聞こえてきて、慌てて近くの草むらに身を隠した。
そして息を潜めていると、数人の男達が少女が隠れた草むらの前で立ち止まった。

「くそっ・・・どこへ行ったんだ!?」
「女の足だ・・・そう遠くまで行く事はないだろう。」
「早くしないと、殿に申し訳がたたんぞ!?」
「ここからは、別々に探そう!」

そこで話していた男達は、別々に別れて探し出す事にしたのか、足音がバラバラに別れていった。
彼等の足音がしなくなったのを確認し、少女は隠れていた草むらから出た。


と、その時。


「いたぞっ!!」
「・・・っ!!」

少女の後ろから声が聞こえ慌てて振り向くと、そこには別の男が立っていた。
その姿を見てすぐさま走り出すと、後ろにいた男が追いかけてきた。

「待てっ!!」

先程の声でか、別のところを探していた男達も集まってきた。

「止まれっ!止まらないと撃つぞ!!」

一人の男がそう叫んだ。
どうやら、弓を持っているようだ。

しかし、少女は止まる気配を見せなかった。
必死に、自分の目的の場所へ走る。

「止まれっ!!」

そう、男が叫ぶのと同時に音が聞こえた。

ビュッ!!

後ろから聞きなれない音が聞こえ、少女が振り返った瞬間。

ドスッ!!

何かが刺さった様な音。
その時、少女の目は見開き身体が小さく揺れた。
胸に痛みがある・・・。
少女はゆっくりと、自分の胸を見た。
そこには、普通無いはずの矢が刺さっていた。

先程、男が放ったのは矢だった。
そして、その矢が少女の胸に刺さったのだ。

ジワジワと赤い液体が、矢が刺さった部分から溢れてくる。
そして、ゆっくり自分が倒れていくのが分かる・・・。
意識が朦朧としてくる頭で、ある人物を思い出していた。





・・・ごめんね・・・。
もう・・・一緒に暮らせないわ・・・。
これから・・・貴女に不安な日々が訪れてしまう・・・。
それを・・・止めれなかった・・・母さんを・・・許して・・・。
どう・・・か・・・貴女に・・・・幸せな・・・日々を・・・。




草の上に倒れ、視界が滲む。
遠くから、追いかけてきていた男達が近寄ってくる。
ゆっくり目を閉じながら、少女はある人物の名前をつぶやいた。



誰にも聞こえないほどの小さな声で・・・・。



少女は、そのまま息をひきとった。





『鳥の詩』





昔、翼の生えた少女がいた。

生まれた時は、普通の人と同じで赤子だった。
しかし、17歳を迎えると成長は止まり、背中から純白の翼が生てきていた。
その姿を、誰も忌み嫌う者はいなかった。
逆に純白の翼を持つ少女を、周りの人たちは『神』として崇めていた。

少女を神と崇める理由・・・それは、不思議な力を3つ持っていたからである。

人々とは別に、この世に生まれた生物全てと会話が出来るのが1つ目。
治癒能力が2つ目。
そして、3つ目・・・。
国に富と安らぎを与えられる事。

3つ目の力は、少女自身で決まるのだ。
少女がこの国の為に尽くしたいと思うと、その力は発動する。
丁度、少女が暮らしていた国は平和で豊かだったのだ。

そんなある日、少女の話を知った身勝手な他国の権力者達が、少女を我が物にしようと戦を起こし始めた。

争い事が嫌いな少女は、泣きながら何処かへ身を隠してしまった。
大好きな人々が争うのは自分のせいだ・・・と、心に傷を負ったまま・・・。
その瞬間、平和で豊かだった国は一気に滅びてしまったのだ。
権力者達は必死になって、少女の居場所を探したが見つからなかった。

それから、何百年も経ち・・・。
翼を持つ少女『翼人』の話は、昔話になって伝わっていった。

事実を知る人間は、もういない。
ただ、少女は物語の人物としてでしか生きてはいない。
『翼人』は存在しない、架空のモノだと思われていた・・・いや、思っていた。

しかし、ある日を境に運命の歯車は回り始めた。
存在しないだろうと思われた『翼人』の出現によって・・・。
そして、1つの国の運命も変えようとしていた・・・。









「リー、薪割り終わったぜー?」
「はーい。」

外から聞こえる声に少女は返事をすると、持っていた布を机に置いて慌てて外へ向かった。

少女の名前は「紅 璃茉(リームォ)」。
圭璋(ケイショウ)より北の方にある森の奥に、母親と兄2人姉2人の6人で暮らしている。
あまり人と接する事が嫌いな母親が、静かに暮らせる場所としてこの場所を選んだのだ。
生活が大変そうな場所でも、家族で一緒に暮らせるのが璃茉は幸せだった。

璃茉の父親は、彼女が小さい時に亡くなったと母親から聞いている。
父親という存在を感じられない事は悲しい事だが、その代わり兄2人が父親の代わりとして
接してくれていた。

外に出た璃茉は、目の前で汗を拭いている白髪の少年の傍に駆け寄る。

「晧月(コウゲツ)、お疲れ様。」
「おー、結構割ったから暫くは安心だぞ?」

璃茉が声をかけると、晧月と呼ばれた少年は振り返って笑顔を見せた。
彼の横には、山となっている薪があった。
璃茉は、その山を唖然として見つめる。

「本当だ。・・・でも、必要のない分まで割ったら清切(セイセツ)が怒るんじゃない?」
「大丈夫だろう。」

ケラケラ笑う晧月に、璃茉は呆れた表情を見せる。


晧月は璃茉にとって2番目の兄になる。
しかし、璃茉は晧月のことを「兄」と呼んだ事はなかった。
それは、晧月が「兄」と呼ぶなと言ったからである。
他にも、1番上の兄である清切、姉の春燕(チュンイェン)、2番目の姉・芽衣(ヤーイー)がいた。
その3人も、「兄」や「姉」を付けずに名前だけで呼んでいる。


「そろそろ母様帰ってくるよね?」
「あー、春蘭(チュンラン)母さんか。・・・そうだな、圭璋に行ってるからな。」

家に戻りながら、用事で出かけた母の事を話す。
璃茉の母・春蘭は、見た目は少女のような姿だが5人の子供を持つ母親だ。
家事や農作業など彼女に出来ない事はなく、璃茉は凄く尊敬していた。
そんな母親の帰りを晧月は、うーんとうなりながらも答えてくれた。

「今日はどんなものを買ってきてくれるんだろ。」

椅子に座った晧月に、璃茉はお茶を出しながら嬉しそうに話す。
晧月は、一口お茶を飲むとため息を付いた。

「おいおい・・・春蘭母さんは、野菜とかを買いにいったんだぜ?」
「分かってるって。」

璃茉は自分の分のお茶を持って晧月の前に座ると、頬を膨らませた。
そんな璃茉の表情を見て、晧月は苦笑いした。

「でも、いつになったら母様はあたしを圭璋へ連れていってくれるんだろう・・・。」

一口お茶を飲んで、ふぅ・・・とため息をつく。
璃茉の様子に、晧月は首を傾げた。

「そんなに圭璋へ行きたいのか?」
「当たり前だよ。あたし、森から一度も出た事ないし・・・。」
「・・・別に行かなくてもいいんじゃね?」
「なんで?」

腕を上げて背伸びをする晧月に、今度は璃茉が首を傾げた。
晧月は、先程の璃茉と同じように小さく息をつくと、璃茉を見た。

「・・・実はな?圭璋には危険がいっぱいなんだ。」
「きっ・・・危険っ!?」

顔を真っ青にしてテーブルに身を乗り出してくる璃茉に、晧月は心の中で笑いと焦りを見せていた。
圭璋は危険がないとは言えないが、そうも言わないと璃茉が勝手に森を飛び出しかねない。
そんな自分の心を表に出さない様にして、晧月もテーブルに身を乗り出して小声で話し出した。

「春蘭母さんは武術の心得があるけど、璃茉はまだ中級だろ?上級並みの武術の心得がないと行けねぇんだよ。」
「そっ・・・そんなに!?」
「そう、だから璃茉はまだ無理って事。春蘭母さんも自分の身を守るのが精一杯だからな。」

晧月の言葉に、璃茉は先程以上に顔を青くして俯いた。
そんな璃茉の様子に、晧月はやりすぎたかな?と顔を覗く。
すると、ガバッと音がするぐらい勢いよく璃茉が顔を上げた。

「うぉっ!?」
「決めたっ!!晧月!!今すぐあたしに武術教えて!!」
「はぁっ!?」

璃茉の唐突な発言に、晧月は目を見開いて目の前にいる少女を見た。
少女の目は決意を持っていて、これはもう何を言っても無駄だな・・・と、晧月は肩を落とした。
・・・あんな悪戯、しなきゃ良かった・・・。
いきなり落胆した表情を見せた晧月に、璃茉は首を傾げる。

「晧月?」
「・・・あーっもうっ!!やめだやめっ!!」

いきなり大声を出したと思ったら、晧月は今まで座っていた椅子にドカッと座った。
そんな晧月の行動を、璃茉は不思議そうに見ていた。
璃茉が晧月に声をかけようとしたのと同時に、家の扉が開いた。

「ただいま。」

聞きなれた声が聞こえ、璃茉と晧月は扉の方を見た。
そこには、青い髪の男性と赤い髪の女性、そして緑の髪の少女が立っていた。

「あ、おかえり。清切、春燕。それに、芽衣。」

璃茉は3人の姿を見ると、嬉しそうに近寄っていく。
清切と呼ばれた青い髪の青年は、元から細い目をもっと細くして微笑む。

「ただいま、璃茉。良い子にしてましか?」
「うん。晧月とちゃんと留守番してたよ?」

頭を優しく撫でられながら、璃茉は彼等が居なかった時の事を清切に話した。
清切は、一所懸命話してくれる璃茉の話を相槌を打ちながら聞いていた。

「ちゃんと晧月も薪割りしてくれたよ。」
「・・・そうですか。しかし、普段より多かった様な気がしますけど?」

清切はそう言うと、ジロッと晧月の方を見た。
晧月はビクッと身体を振るわせる。
まるで、蛇に睨まれた蛙状態である。

「そっ・・・それは気のせいでは?」

冷や汗を流しながら答える晧月に、清切はため息をついた。

「・・・まぁ、割ってしまったものは仕方がないですね。」
「そっ・・・そうか!?よかった・・・・。」

清切の言葉に安心したのか、晧月は胸を押さえて深呼吸をした。
しかし次の瞬間、いきなり誰かが晧月の肩をポンッと叩いてきた。
晧月が顔を上げると、目の前には笑顔の清切・・・・。
晧月の身体が固まる。

「晧月?」
「はっ・・・・はいっ!?」
「・・・璃茉に意地悪、していませんよね?」

普段笑わない清切が、ニコニコしながら聞いてくる。
晧月は怖くなり、首を横に力強く振る。
そんな晧月の行動に、清切は再びニッコリ笑った。

「そう、良かった。じゃあ、誰でしょうね・・・。」
「・・・え?」
「璃茉に、圭璋は武術が出来ないと行けない・・・なんてホラを言ったのは・・・。」
「ぁ・・・ぁぅ・・・・。」
「ねぇ、晧月?」
「・・・・。」

肩に置かれている清切の手にいきなり力が加わり、晧月は顔をしかめた。
そうだ・・・璃茉は清切に全て報告してたんだ・・・。
駄目だ・・・完璧にバレている・・・。
晧月は心の中で大泣きした。
うなだれる晧月に、清切はまだニコニコしている。

「じゃあ、晧月。ちょっと僕の部屋に来てくれる?」
「・・・・はい・・・」

清切は晧月の襟首を掴むと、そのまま自室へ戻っていった。
そんな二人の様子を、春燕は呆れて見ていた。
その傍で、璃茉と芽衣が首を傾げていた。

「ねぇ、芽衣。清切と晧月、どうしたのかな?」
「さぁ・・・・?」
「どうして清切は晧月を部屋に連れていったの?」
「どうしてでしょう?」

不思議そうに首を傾げる妹二人に、春燕はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。








それから日が過ぎ、璃茉は少し不安になっていた。
母親の春蘭が、帰宅する予定の日になっても帰ってこなかったからだ。
そんな不安を取ってくれるかのように、兄妹たちは璃茉に声をかけてくれていた。
そして時間がある時は、晧月が武術を、芽衣が弓の使い方を教えてくれていた。
普段我侭を言わない璃茉が、唯一言った我侭だったからだ。



そんなある日。

「大変だっ!!!」

力一杯扉を開け、晧月が飛び込んでくる。
その姿に、椅子に座って本を読んでいた清切が眉間にシワを寄せた。

「晧月、扉は静かに開けなさいと、何度言ったら・・・。」
「それどころじゃねぇよ!!・・・結界が!!」

晧月の口から『結界』という言葉が出た瞬間、清切はもちろん、璃茉の傍にいた春燕と芽衣も顔つきが変わった。
そんな4人を、璃茉は傍で不安そうに見つめていた。

「・・・何があったんですか?」
「さっき、晩飯にと思ってイノシシを追いかけてたら、この森に
孟買麻(モウバイマ)軍の兵士がいたんだよ!」
「なんですって!?」
「それで不思議に思って、結界を調べたら・・・。」

晧月はそう言うと、俯いてしまった。
そんな彼の様子を、芽衣は不安そうに見つめる。
春燕はハッとして、口を開いた。

「・・・まさか・・・。」
「その『まさか』だ!!結界が消えたんだ!!」

晧月が叫んだ途端、いきなり外から大声が聞こえた。

「ここに『翼人』と四聖獣がいると聞いた!!高衢(コウク)様がお前たちに会いたいと言っている!!大人しく出て来い!!」

清切が窓から外の様子を覗くと、家の周りにはいつの間にか沢山の兵士が取り囲んでいた。
晧月も別の窓から外の様子を見て、小さく舌打ちした。

「かなり囲まれてるな・・・。」
「これは、かなりヤバそうですね・・・。」
「清切、晧月。逃げ出せそうか?」

外を覗く二人に、春燕が声をかけた。
聞かれた清切は、春燕の方を見ると肩を竦めた。

「なんとか逃げれると思いますが、曹操はかなりの兵をココに連れてきたみたいですね。」
「そうか・・・。やはり、強行突破しかないな。」

春燕の言葉に、晧月はよっしゃー!!と嬉しそうに声を上げた。
そんな晧月に、清切は冷ややかな視線を向ける。

「何嬉しそうな声を出してるんですか。」
「当たり前だろ?久しぶりに暴れれるんだ!!嬉しいに決まってるだろう。」
「知りませんよ、そんなの。」
「あとで倒した兵の数が少なくて泣くなよ?」
「貴方が倒す前に私が倒しますから大丈夫です。」
「なんだとっ!?」

清切と晧月のやり取りを聞いて、璃茉は不安そうな顔を見せた。

・・・ここで戦が始まっちゃうの?
沢山の人が死んじゃうの?

不安そうにしている璃茉に、芽衣が気付いた。
璃茉の傍に近寄ると、そっと彼女の手を握る。
優しい温もりに、璃茉が慌てて自分の隣を見ると、芽衣が優しく微笑んでいた。

「璃茉、大丈夫ですよ。清切も晧月も人を殺す事はしません。」
「本当に?」
「ええ。」
「・・・よかった。ここで戦が始まるんじゃないかって思っちゃった・・・。」

芽衣の言葉に安心したのか、璃茉は小さくため息をついた。
そして、心配してくれた芽衣に微笑んだ。

「ありがとう、芽衣。」
「どういたしまして。」

外をうかがっていた晧月は、春燕の元へ歩き出す。
それを見ていた清切も彼女の元へ向かう。

「さて、どのくらいで動き出す?」
「そうですね・・・。今すぐ・・・と言いたいところですが、必要最低限のモノを持たないといけないでしょうから・・・。」
「・・・半時でいけるか?」
「そうですね。」
「じゃあ、俺は外を見張るから先にやってくれ。」

晧月はそういうと、再び窓へ歩き出した。
それを見送り、清切と春燕は璃茉と芽衣の元へ歩き出す。
それに気付いた璃茉は、先程まで笑顔を見せていたが緊張した表情へと変わった。

「璃茉、今から私達はココを抜けます。」
「何処かへ逃げるって事?」
「はい。結界が消えた今、この森に居ては危ないと思います。」

清切の言葉に、璃茉は俯いてしまった。
住み慣れた森を離れるのは、正直言って反対だった。
しかし、今はそんな事を言っている場合ではない。
外には沢山の兵士。
それから、なんとしてでも逃げないといけない。
璃茉は顔を上げると、清切と春燕、芽衣の顔を見た。

「絶対、璃茉を守ります。」
「・・・怪我しないでね?」
「大丈夫です。」
「・・・死んじゃ駄目だよ?」
「大丈夫ですってば。」
「なら、この森から逃げましょう。」

璃茉の言葉に、三人は頷いた。
その後、清切は晧月の元へ向かい、春燕は芽衣の隣に立つ璃茉を見た。
未だ不安そうにしている璃茉の頭を、優しく撫でながら微笑む。

「璃茉は、必要最低限で持っていくものを集めてください。」
「うん、分かった。」

春燕に言われ璃茉は頷くと、まず自分の部屋へ向かった。

璃茉を見送った春燕は、芽衣に頷く。
芽衣も頷くと、いきなり芽衣の右手が光った。
それを合図に、清切・晧月・春燕の右手も光りだす。
暫く右手が光っていると、芽衣の右手に弓矢が現れた。
少し遅れて清切の右手には槍、晧月の手には大剣、春燕の右手には細剣が現れた。

「・・・久しぶりですね・・・武器出すのも。」
「春蘭様が張った結界のお陰だったし。」
「・・・今は亡き春蘭様の忘れ形見、璃茉様を守るためです。」
「そうですね。」

其々の武器を持ち、四人は顔を見合わせて頷いた。
そして、家の外へ向かう為、歩き出した。
発想にすごく引き込まれた
昆虫の外骨格3ヶ月前結構、長いです
過去に書きかけて止まったため、当時はどう完結に向かおうとしていたのか、今ではもう思い出せません(笑)
しかもまだ序章くらいの展開…www←
それは穏やかな平日の午後だった。

 平日に来客が0人も珍しくはない、峠の麓にある小さなカフェでは店主が店内を掃除していた。時刻は午後3時を過ぎた頃合いで、このまま人が来ないのであればそのまま閉店準備をしてしまおうと考えてのことである。
「…木曜日って、本当に誰も来ないな……」
 常連といえば常連、といった面々も顔を見せないのではこの後も一向に来客は無いだろう。テーブルを拭き、椅子を全てテーブルの上に伏して上げた時、入り口のベルが控えめに鳴る。振り返ると帽子を目深に被った男が立っていた。
「…いらっしゃいませ。今、テーブルを直しますので申し訳ありませんが少々お待ちください」
 突然の来客に驚きはしたが、店主は椅子を下ろしテーブル席を整え直した。すると立っていた男は突然、ポケットから折り畳みナイフを取り出して店主に突きつける。
「…騒ぐんじゃねぇぞ…!金を出せ!こんな寂れた店でもレジ内に現金くらい入ってるだろ?」
 妙な真似はするんじゃねぇ、とナイフの先端を店主の鎖骨下あたりを軽く突く。その分、店主は後退り、男は前進する。それを繰り返しながら少しづつレジの方へと追いやられていく最中、店主は思った。

 こんな田舎でも強盗は起きるものか……、と。



 この週末は、平日の静けさが嘘のような賑わいだった。
 というのも、先日の強盗事件がニュースに取り上げられ、普段立ち寄りもしない人間までもが噂を便りに訪れたからである。たった一人で切り盛りするにはあまりに忙しい時間だった。
 そして客は事件の話を聞きたくてウズウズしているのも見て取れるが、店主は忙しさを理由にあまり会話をすることなく、淡々と注文を捌き続けていた。それでも、少しでも話題にしたい客は、会計時になんとか会話をねじ込んでくる。それもさっくりとかわしながら、店主は動き続けた。
 波のように押し寄せた客たちがようやく帰り、店内に残ったのは三人になった。カウンター席に離れて座る二人の男女、男は求人誌を見つめ、女は本を読んでいる。そして奥のテーブル席でパソコンに向かう若い女だ。ふう、と軽く息を吐いた店主に、カウンター席の男が声をかける。
「…隕鐵(イテツ)よ、朝からお疲れ様、だな」
 求人誌から顔を上げ、片頬を上げるようにニヤリ、と笑って見せる。店主、隕鐵は全くだ、とこぼしながらカウンター下から椅子を引き出し、腰を下ろす。
「…こんな田舎で事件が起きれば、あっという間に広まるし、刺激に飢えた人間にはいい暇つぶしの話題になったことだろう…」
 ぐるり、と首を回しながらさして感情も込めずに呟く。それに応えたのは本を読んでいた女だ。
「まぁ、当面はこの状態が続きそうね。……私たちもしばらくの間は控えようかしら」
「…そう言わず、普段通り来ていてもらうほうが有難い」
「そうだぞ、菖蒲(アヤメ)! そんな寂しいことは言いっこなしだぜ」
「太朗(タロウ)、あなたが静かにしていてくれるならいいわよ」
 カウンター席の男、太朗の方には視線を一切向けず、菖蒲という女は言い切った。太郎は身体ごと菖蒲の方を向けて話しかけ続けているが、菖蒲は全身で聞く気はない、と意思表示をしている。
 いつものやりとりを眺めつつ、隕鉄は閉店準備を始めた。太朗がそれに気が付き、もう閉めちまうのか、と声をかけると隕鐵は軽く頷き空いているテーブルから拭き始めた。
「…今日は思っていた以上の来客があったから、今日一日を想定していた在庫はほぼ空になってしまったし、明日の分まで使って営業を続けなくてもいいだろう。……それ以上に疲れたからもう閉める」
 客が途切れた今しかない、と言い切って作業を進めた。拭き終わったテーブルを示すと、太朗、菖蒲、そして奥でパソコンを操作していた若い女もそのテーブルに移動する。そして隕鐵はカウンター席、もう一つのテーブル席を拭き、その上に椅子を伏せて上げていく。表の入り口は閉め、カーテンを引いた。
 ここまでが喫茶店としての通常業務。閉店後は店内の一角を彼らに貸していた。スペースを貸し始めて少し経つが、正直、未だに彼らのことがよくわからない。
きっかけは以前にもあった強盗騒ぎ。喫茶店経営を受け継いでからすぐのことだった。元・警察官でもあった隕鐵は、犯人を取り押さえ警察に連絡した経緯がある。その時、一緒に来たのが菖蒲だった。彼女が政府関係者と名乗ってきた時点で新手の詐欺か、と思いはしたが。何やらいろいろ打ち合わせはしているようだが、厄介には巻き込まれたくないと思う隕鐵は、カウンターの向こう側で何も聞かないことにしている。彼らがこちらに声をかけてくるのはコーヒーの注文くらいだ。
 田舎の山の麓にあるような立地で、客も大して訪れることのない喫茶店を人に譲られ、なんとなく経営者になってしまったが、いまさら離れるわけにもいかず常に帳簿と睨み合いをしている中で、こうした副収入はありがたい。
「あ、菖蒲さん。悟(サトリ)、バイト時間伸びちゃってミーティング遅刻するって」
 若い女がスマホをいじりながらそんなことを言う。菖蒲はあら、そう、とだけ返した。
「いつも通り、裏口空いてるよ…っと」
 相手にそう返信をしたところで、彼女はスマホを机の上に伏せて置く。とりあえず先に座っている3人にそれぞれコーヒーを置いたところで、当分、隕鐵の出番はない。カウンターの向こう側で終わるのをひたすら待つのみだ。その間、事務仕事も捗るので特段、悪くはないとも思っている。
 しばらくして、控えめに裏口の戸が叩かれるので、隕鐵は出迎えに行った。戸を開けると若い男が立っている。男はこんにちは、隕鐵さん、とあいさつをした。
「いらっしゃい、悟くん。バイトお疲れ様」
「ありがとうございます。今日もお邪魔します」
 悟は一礼すると、3人が座るテーブルへと向かった。そしてまず、若い女に声をかける。
「恵玲奈(エレナ)、連絡ありがとう」
「どういたしまして。サービス業の週末は大変ね」
「…まぁね」
 少々、力なく悟が応えたところで、隕鐵からはコーヒーが渡され、菖蒲はミーティングを始める。カウンターの向こう側に戻った隕鐵も自分の仕事を始めた。在庫の確認、発注はこまめに行っている。多すぎることなく、しかし切らさないように、小さな店であるがゆえに量の調整はかなり気を使っている。また、コーヒー豆の発注は業者を通さず、直接海外などの農園から交渉して買い入れている。祖母が教育熱心だったお陰で、今では英語以外にスペイン語、ドイツ語、フランス語、ロシア語を使えるようになっていた。当時としては何でこんなことを、と疑問に思っていたが、ここにきてこれほど役に立つようになるとは思っていなかったので、祖母には感謝しかない。
 紅茶などの茶葉についても同じく、だ。
コーヒー豆、茶葉などの値段交渉が終わったころ、早々に菖蒲から声がかかった。コーヒーおかわりにしてはかなり早い。
「…隕鐵、協力してほしいことがあるの。ちょっといいかしら」
「……おれに、協力を…?」
 菖蒲は隕鐵をテーブル席に呼ぶ。そして自分と太朗の間に座るよう促した。言われるままに腰掛けると、菖蒲は改めて、状況を説明すると言い、手元の資料を机いっぱいに広げた。
「急でごめんなさい。どうしても人手が足りないし、隕鐵ならきっと即戦力になると思って、無理を承知でお願いするわ。いつも私たちが……言い方はあれだけど、こそこそと何やら話しているのはわかってくれてると思うんだけど」
「……まぁ…、なんとなくは…」
「実は知り合い経由である依頼を受けてね…。守ってほしい人物がいて、向こうの状況が落ち着くまで日本で預かっていてほしいそうなの」
「…嫌な予感がする、って素直に感想を述べてもいいのかな」
「多分、その感覚は間違っていないと思う」
 隕鐵の言葉をあっさり肯定し、菖蒲は話を進めた。
「相手は中東でも多くの石油関連会社を経営している男の後継者候補、アブドゥル25歳。若くして自分の会社を持ち始めたり、留学経験もある多才な人物で後継者にかなり推されているの。性格も良いそうよ」
 菖蒲が差し示す資料の中に写真が挟まっている。アブドゥルともう一人の男の分がある。
「護衛は元軍人のロシア人で、アレキサンダー35歳。この二人が来週、日本に来るわ。そこで今回、安全に日本で滞在していけるように、我々がサポートに入るわけ」
「…なるほど……」
 対象の人物の次は、それぞれの役割の話になった。アブドゥルが日本に来るのは、以前、世話になった日本人の友人に会うため。友人役は悟である。
「…まぁ、確かに俺が何年か前にワーキングホリデーでカナダ行ってた時に偶然会ったんだよね。5年くらい前かなぁ? アブドゥルは留学で来ててさ、バイト先のカフェによく来てたしよく話したよ。怪しげな奴らが店に乱入したときに一緒に逃げたことはあるけど……今思えば、あれってこういうことだったのか…」
 資料を指しながら、繋がりに驚きつつも縁ってすごいな、と呟いていた。
「…じゃあ、依頼側があなたを指名してきたのは明確な意思を持った理由があったのね」
「役、ていうか懐かしの友人そのものだよ」
 うーん、こんな形で再会するなんて、と悟はまじまと資料を見つめる。菖蒲は一部選び出した資料を隕鐵に渡しながら言った。
「…隕鐵は、この護衛ロシア人の通訳係になってもらいたいの。……実を言えばあなたの経歴にはしっかり目を通させてもらっていてね、悟は英語と中国語はわかるけどロシア語はさっぱりだし、なにより実戦経験が乏しいの。賢いんだけど腕っぷしの方はさっぱりでね。万が一の時、守ってくれる相手が必要なの。語学もできて警察官として訓練してきた経験のある隕鐵が適任なのよ。外国語じゃなければ太朗がやってたんだけどね、外国語じゃなきゃ…」
「……なるほど…。かなりの大役だけど…大丈夫だろうか…。それにおれは実戦から離れて久しいし…」
 少し、訓練しないと、と呟くと横から太朗の腕が伸びてきて肩にずしりののしかかってくる。
「心配いらねぇさ。そういうことなら俺がいくらでも相手になってやるぜ」
 ばしばしと背中を叩かれ、隕鐵は少し顔をしかめる。菖蒲は無視していいわよ、とだけ言い、さらに説明に入る。
「私と太朗はそれぞれ少し離れたところから見回っているわ。異変が起きたら駆け付けられるよう位置を取るように努力するから。恵玲奈はベースになるワゴン車で待機、常にいろいろなカメラで周囲を確認して、異変があったら知らせてくれるわ」
「任せて。どんなカメラもあたしは『自分の目』にできるから」
 よろしく、恵玲奈さん、と隕鐵が会釈すると、恵玲奈は隕鐵が何か言おうとするのを遮った。
「あたし、年下だし、さん付け慣れてないから恵玲奈、って呼んで。あたしはテツさんって呼ぶから」
 強めに引いたアイラインでより力を増した恵玲奈の目に真正面から見つめられ、隕鐵は迫力に押され気味にわかった、と頷く。そこへ悟も加わってきた。
「俺にも! 俺にも悟、だけでいいですから。俺もテツさんって呼びますし!」
 勢いよく加わってきた悟の迫力にも押されつつ、隕鐵は頷く。
「…さて、だいたいは把握してもらえたかしら。次の月曜日の午後、飛行機が到着予定なの。首都空港まで迎えに行くところから、任務開始よ。…その間、隕鐵には店を臨時休業してもらうことになるからよろしくね。…ちゃんと手当出るから心配しないで」
「……それはどうも…」
 喜ぶべきかどうなのか、些か複雑そうな表情で隕鐵は応えた。
「…今日が土曜日だから、訓練は明日しかできないな…」
「大丈夫だろ、明日は俺がしっかり訓練に付き合ってやるぜ!」
 楽しみだなー! と太朗が今からでも始めそうな勢いで言う。
「……それはどうも…」
 隕鐵はすっかり表情をなくし、同じ言葉を返すだけに留めた。

 日曜日は前日に勝るとも劣らない人の入りを記録し、隕鐵は午後3時には早々に閉店、月曜日から臨時休業の貼り紙を入り口に貼りだした。片付けが一通り終わったころ、カウンターの上に置いていたスマホが低い音で震える。メッセージの送り主は太朗だった。
《よう、お疲れ! 片付けは済んだか? 訓練場所なんだけど、地図送ったからここまで来てくれ! いやー楽しみだな!楽しみにしてるぜ!》
「……」
 文面だけでもかなりテンションが上がっているのだろうと見て取れる。顔文字などが乱立していて少々うっとおしい。通信アプリにあるスタンプまで連投され、菖蒲が太朗と連絡取り合うのは喧しいからおススメしない、と言っていた意味がよくわかる。
 昨日、常連だと思っていた面々が実は水面下でいろいろ動いている特殊な存在だと改めて知り、まさか関わることになり、連絡先まで交換することになるなんて、全く想像もしていなかったことが立て続けに起こっている。しかも明日から急に任務本番だと言われ、事の早さに追いつけない。
 ふぅ、と軽く息を吐くと、車のキーとスマホを持ち店を出た。車に乗り込むと、運転席側に取り付けてあるスマホホルダーに地図アプリを起動させたスマホを入れる。太朗が指定する場所まで向かうことにした。



 翌日。
 一台のワゴン車に乗り込んだ面々は、首都にある空港へと向かって高速道路を走っていた。運転は隕鐵と太朗が交代で行っている。今ハンドルを握っているのは上機嫌の太朗だ。
「運転を交代できる相手がいるってめっちゃでかいよな! すげー気がラクだし!」
「…それはよかった。じゃあ、この次のサービスエリアでまた交代しようか、タロさん」
「おー、頼むわテツ」
  ちらり、と後ろに目をやると、先ほどまでスマホでゲームでもしていたであろう若者2人はすっかり眠りに落ちていた。菖蒲は外を眺めていたが、隕鐵が後ろを振り返っていることに気が付き、視線を隕鐵へ向けた。
「…あら、どうしたの?」
「……あ、いや、後ろが静かになったものだから」
 どうしてるかと思って……と控えめに呟く。少し沈黙が続いたので、隕鐵はそーっと身体の向きを前に戻していく。そこへ菖蒲が声をかけた。
「…いつもなら、この2人が移動中に寝落ちたりしないんだけどね、今日は随分、緊張が解けているみたい。テツがいるお陰ね」
「…そういうものなのか…?」
 助手席のシートに身体を沈めなおして呟く。それは菖蒲の耳に届いていたようだ。
「そういうものよ。いままでこのチーム内に無かった空気だわ」
「……そうだな、俺もそう思うよ」
 運転中の太朗も上機嫌のままそう言った。
「…なんてったて、ウチの小僧どもがこんなに落ち着いていられてるなんて初めてのことじゃね? なぁ、菖蒲!」
 ルームミラー越しに菖蒲と目を合わせ、太朗は笑顔で運転を続ける。
「…そうね、特に運転が太朗だけじゃないってところに安心してるのかも。あなたの運転、ヒヤヒヤしっぱなしで寝たらいつの間にか死ぬんじゃないかって思うこと多いもの」
「ヒデェ!」
「酷いのはあなたの運転よ」
 スパっと言い切られ、そこからは少ししょぼくれた感じで次のサービスエリアまで運転を続けた太朗だった。


「うーん、やっぱり運転してると気が張ってるんだな。地面に足がつくと安心するぜ」
 車から降り、太朗が大きく伸びをしながら言う。寝ていた二人も起きだし、全員が車の外に出た。
「順調に車が流れているおかげもあって、予定よりかなり早く到着しそうね。…ここで少し長めに滞在しましょう。各々、好きに行動してきていいわ。1時間後に集合ね」
 腕時計を見ながら菖蒲が言うと、恵玲奈がさっそくこの場を離れる。そこに悟もついていくようだ。若者を見送った三人は一度顔を見合わせ、無言でそれぞれ好きな方へ歩き出した。


 無言で歩く恵玲奈の斜め後ろを、これまた無言の悟が続く。途中で急に足を止めた恵玲奈に驚いて、悟は危うくぶつかりそうになりながらもなんとか止まる。振り向いてきた彼女の視線が今日も厳しい。
「……なんでついてくんのよ」
「…なんで…いや、なんとなく…?」
 いつもなら悟は太朗にずっとくっついている。幾度となく危険な目に遭わざるを得ない現場に遭遇してからというもの、助けてくれる存在の傍を離れることなどしなかったのだが。
 恵玲奈はひとつ、見当がつく。
「…テツさん、いるから?」
「……」
 思わず押し黙る悟に、沈黙は肯定とみなすよ、と恵玲奈は言った。悟が黙ったままでいるため、それ以上話すこともない恵玲奈はさっさと歩きだしてしまった。慌てて悟は後を追う。自分でもよくわからないんだけど、と悟は小さく呟いた。それは前を向いたままの恵玲奈の耳に届いている。
「…こんな、言い方していいのかわからないけど、得体が知れなくて…不安になるんだ。…この人は一体何者なんだろうって。ただの、寂れた喫茶店の経営者じゃない気がして」
 もちろん、その感覚は恵玲奈もよくわかる。表情の変化に乏しく、とても接客業を生業にしていくタイプには思えない。また、元警察官だと言われても、そんな仕事をしていたとも想像つかない。
「…それに、菖蒲さんやタロさんとも前々から面識あるんじゃないかな……。こんな仕事の話を突然されて、全然、動揺している様子なんて感じなかった…。いくらロシア語が分かるからって、二つ返事で了承できる?」
 悟の疑問は尤もだった。何より彼を最も不安にさせていることは、いつも仕事では守ってくれる護衛役が太朗ではなく、急遽協力を依頼された隕鉄だからなのだろう、と恵玲奈は思う。太朗のように、守ってもらえるのだろうか、生きて帰ることができるのだろうか。

 身を委ねるしかない若者たちは、今日も内なる不安と戦っていた。
これ好き! 好きすぎる!
宵月のわ*3ヶ月前現代日本──魔術とは縁遠いように見えるが、実は裏で魔術が発達していた。超常現象は全て魔術のせいにされ、魔術師に調査を依頼していた。そんな魔術師を育成する魔術学校があった。
 学校の名前は夢内学園。魔術学校であるが、魔術の素質に関係なく入学が許されている。普通試験と呼ばれる超高難易度の試験さえくぐり抜ければの話だが。魔術の素質があると加点され、基本的には魔術加点で入学する。しかし、たまに魔術の才能がないながらも普通試験をくぐり抜けて入学してくる者もいる。そんな魔術の素質がない生徒ですら卒業後は魔術関係の仕事に就くほど、教育水準の高い学校だ。
 夢内学園入学式が今年も開かれた。今年はどのような生徒が入学するのだろうか……。


現在執筆中の本編冒頭です。現代ファンタジーです。よろしくお願いいたします。
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