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#878
ぷーさん3年前書いたり消したりしてたけど、雰囲気は気に入ったものが書けたので見てもらえると嬉しいですhttps://privatter.net/p/7259476これ好き! 好きすぎる!ぷーさん3年前二次創作の片想いホモってこんな感じでいいんてすか!?
な試作品です。
甘酸っぱさ、が出てるのかどうか解らなくて自信がない
遺跡探索に駆り出されていたバラカが飛空艇に戻る頃にはとっぷりと夜も更けており、談話室では酒呑みたちが今夜も気持ちよく発泡水ののどこしを酩酊していた。
「バラカ、戻ったか」
その環の中に昨日までは見なかった顔が一人増えていると呼ばれてバラカは気がついた。
「し、師匠……っ!」
思わず身構えながらも挨拶をしないわけにもいかないだろうとラドゥリのそばまで歩いていく、疲れていると言った顔色ではないが妙に緊張している面持ちのバラカにその場に居た仲間たちは目を丸くした。
「しばらくはこの飛空艇で世話になる。まさかお前も居るとは思っていなかったが……」
同じ船に乗った者同士一杯飲もうと差し出された炭酸水を遠慮がちに受け取るバラカの笑顔は引きつっているようにも見える。酔っ払いの男たちとは違って酌をしたりつまみを運んだり、と世話に追われるセフェルだけはバラカの表情を見逃していなかった。
何よりセフェルから見たバラカは社交性を敢えて見せない男という認識がある。いつも周りが盛り上がっていても一歩引いた場所からそれを眺めているといった印象だ。
暗殺者であるがゆえに前後不覚を取るような行動を無意識に避けているのだろうと言う推測はすぐに出来たが、だからこそ父親のようにやや強引に社交の輪に引き入れようとしてくるラドゥリが苦手なのかも知れない。あまりにも困るようであれば助け舟の一つぐらいだしておこうと、この飛空船の執事として考えていた。
だが、バラカ自身は苦笑いをしながらもラドゥリからの好意自体は受け入れているようで、よくよく話に付き合っていた。
「……では、師匠……今日はこの辺で。あまりグレン殿に飲ませすぎないでくださいね。この船の唯一の飛行士ですから」
炭酸水の瓶を軽く四本は空にして顔色一つ変えないバラカは頃合いを見計らって立ち上がると、深々と礼をしておかわりはと問いかけるダンカンに疲れてますからと穏やかに微笑んで談話室を後にする。その後ろ姿を見ていたラドゥリは妙な違和感を覚えていた。
「バラカの奴……落ち着きが出てきたか?」
首をひねりながらそう呟くラドゥリの前にグレンが新しい炭酸水の瓶を開けて置く、エストリスの名産ドラゴンの怒りが大量に手に入ったのだと幸せそうに笑う男の顔にラドゥリも思わずつられて笑った。
中年オヤジ達の酒盛りはまだまだ続くのだった。
そんな賑やかな談話室を離れて充てがわれた部屋に出来る限り音を立てずに入ると、二つ並んだベッドの片方には既にこんもりと誰かが寝ていると解る盛り上がりが出来ている。脱ぎ散らかされた服に靴、まるでだらしない子供の部屋のような惨状に思わずバラカは苦笑いしながら床に散らばったそれらを片付けた。
今日は朝からその顔を見ずに遺跡探索へと駆り出されてしまっていたから、と寝顔を覗き込めばあどけなさに安心する。癒やされると言っても過言ではないほど、バラカは彼の寝顔を眺める時間を大切に思っている。
「お前が俺と同い年なんて……今も信じがたい。なぁ、ゼオン?」
自分と同じ年齢だと聞いた時には耳を疑ったが、育ちを考えれば仕方の無い事なのか
もしれないとも思える。実の弟より手の掛かる弟のような、親愛と友愛が混じったバラカの微笑みは今日一日の全ての疲れを忘れてしまったと言わんばかりだった。
「……ん……か、あ……さ……っ……」
ふと眠るゼオンを見つめていたバラカが彼の寝言に耳を傾けると苦しげに誰かを呼んでいる。断片的にしかゼオンの過去を聞いてはいないが、懸命に呼んでいるのは母親と妹の名前だろうか。
不意に伸ばされたゼオンの手を両手で包み込み類を擦り寄せる。少しでも夢の中のゼオンが安心出来るように温もりを伝えようと寄り添った。
「……し、しょ……」
最後に呼んだ名前の後に再び安らかな寝息が聞こえてきた。
落ち着いたのだという安堵と共に訪れる胸に何かがつっかえた様なモヤモヤとした気持ちがわだかまる。時折心臓をチクチク刺す何かが訪れては消えていった。
「師匠?誰だ、そいつは」
夢の中でゼオンを安心させたのが自分ではない事実を突きつけられたようで、バラカは腹の底で何かが渦巻いているのを感じた。
「……いや、待て。何だこれは……なんだと言うんだ?」
突如として自分を苛む感情に自身でも驚き戸惑ってしまう。よろける様にしてゼオンから離れたバラカは自分の胸に手を当てて、妙に上がった心拍数に首を傾げた。
「つ、疲れているに違いない。そうだ、疲れている……疲れているんだ」
首を振りながら自分の奥底に積もっていた感情に蓋をして、バラカはシャワーを浴びるのもやめて布団を頭から被った。
ゼオンの言葉を反芻する度に冴える頭が容易に寝かせてはくれないと知りながら寝たフリに徹するのだった。
ぐはっ😍