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櫂 詫人10/25 18:422年くらい温めてるハロウィンネタをいい加減今年で完成させたい。
あと一息のところまでできたので、ワクチン二回目副反応が思いの外軽かったのでこの機に終わらせてしまおう。

ジャンル:映画ドラえもん「月面探査記」
カプ:ゴダート×ルカ
※ハロウィンネタがやりたくて色々無視したり都合の良く利用したりと、細かいことは気にしない人向け作品
『唇のテレパシー』

 今日が何かのお祭りの日だと知ったのは、日もとうに沈んで闇が濃くなってからだった。ルカもルナも、なんだか最近町が騒がしいとは気づいていたが、それがお祭りによるものだとは思いもよらなかった。いたるところにオレンジだの紫だの、特定の色がやけに多かったのはそのためか、と二人は納得する。
 情報源はアルだった。いつも遊んでもらっているカグヤ星の子供たちから教えてもらったらしい。
 アルが言うには、「オバケの恰好をして、合言葉を言うとお菓子がもらえる」お祭りだそうだ。何の意味があるのか、何を目的にしてできたものなのか見当も付かないが、幼い子らが楽しそうにはしゃいでいるので、まあ良いだろうと年長組は気にしないことにした。
 
「オバケの恰好って……どうすればいいのかな」

 ルカとルナは顔を見合わせる。急なことなので、仮装の衣装など用意していなかった。そもそもエスパルは「オバケ」なんて知らない。両親が生物学者であったから、巨大な恐竜や凶暴な鮫のような生き物は知っているが、「オバケ」とは違う気がする。
 何か模倣できるものはないかとルカが窓の外に視線を投げると、ちょうどお菓子をもらいに行くカグヤ星の子供たちの行列を見た。白い塊や、頭に何か角のようなものを刺している男の子、黒い帽子と黒いマントで黒ずくめになった女の子など、恰好は様々だった。
 
「あれなんか簡単で良くない?」
「どれ? ──あれはダメよ。シーツに穴を開けるなんて絶対にダメ!」

 同じように覗き見たルナがすぐさまNGを出す。ベッドのシーツを被るだけなら今すぐにでもできるが、視界確保のために穴を開けなくてはいけないため、一夜限りの祭りのためにやるにはいささか代償が大きかった。
 仮装も祭りの一部らしいので、仮装できなければ参加ができない。そうするとお菓子がもらえない。何よりもお菓子を楽しみにしてる弟たちは残念がるだろうな、とルカが窓から視線を外してふり返ると。
 ウサギの耳のようなものを頭から生やしたアルの姿があった。
 
「アル!」
「何やってるの!?」

 ルカもルナも思わず叫ぶ。アルの手には赤くて丸いバッジが握られていた。
 
「これならいけそうじゃない?」

 アルは自信満々に言った。「今なら本来の姿でいても誰も気にしないだろう」──言外の意図を汲み取ったルカは何とも言えない顔をする。そもそもこの“耳”がエスパルの証拠だということを知っている人は少ないし、もし知っていたとしても本物だなんて思うはずもない。頭から異物を生やしている仮装があるのだから、同じエスパルも仮装と見られる可能性は十分にある。
 
「そんなわけないでしょう!」
「だって、ルカ兄たんだって」

 アルとルナの視線がこちらに投げられた瞬間、ルカは肩を強張らせる。
 
「……他に似たような仮装の子はいるし、力を使わなければ大丈夫だよ」

 ルカに弟の発想を否定する権利はなかった。自分もかつて正体を隠して人間たちの生活に紛れ込んだことがあるので、案外人間は見た目が自分たちと変わらないなら気づかないことを知っている。あからさまにエーテルの力を使ったりしなければ、だが。アルは「ほらぁ!」と嬉しそうにし、ルナは「ルカ!」と完全に怒りの矛先を自分へと向けた。

「まあまあ、少しのあいだくらいならいいじゃないですか」

 エスパルのやり取りを見守っていたモゾが口を挟む。モゾもルカと一緒に地球に降りて人間の生活に混じるサポートをしてくれた当事者なので、彼も頭ごなしにアルの提案を否定できないのだ。

「変に隠そうとするから疑われるのです。堂々としていればバレないものですよ。それに、この星の人たちはエスパルを伝説上にしか存在しない架空の生き物と思っているので、仮装としてはありふれているかもですよ」

 モゾの助け舟に、ルカもほっとする。エスパルはこの星に住む人なら誰だって知っている。小さい頃に親から必ず聞かされる絵本の話のひとつとして親しまれている。そのためこういった非実在の生き物の仮装をする場ではメジャーな題材になっている可能性が高い。だからその中に“本物”が紛れ込んでいても、誰も本物とは思わないだろう。ルカだけでなくエスパルの保護者であるモゾが否定しないのはそのためだ。

「アル何やってんだよー!」

 突如外からの声にエスパルたちは飛び上がる。窓の外を見ると、同じように頭からうさぎのような耳を生やしている子供が、こちらを覗き込んでいた。突如現れた新たなエスパルに、皆が口をあんぐりと開けていると。
 
「お菓子は早い者勝ちだから、早く行かないとなくなっちゃうよ!」
「あっ、クロコ!」

 アルの声で、ルカははっと目の前に意識を取り戻した。
 
「クロコ、その恰好……」

 ん? とクロコはルカの歯切れの悪い言葉に首を傾げたが、アルの姿とルカの姿を交互に見て、何か得心したように「ああ」と相づちをした。

「そっか、おまえらは初めてなんだっけ。仮装が被ってもべつにペナルティがあるわけじゃないし、なんならエスパルの恰好なんて、オレ以外にもたくさんいるぜ?」

 どうやらクロコは、ルカ達の反応を仮装が被ってしまったことを気にしているものだと、勘違いしたようだ。だがそのおかげで知りたい情報を得た。ルカは人知れずほっと胸を撫で下ろす。ちらとルナの顔を覗き見れば、同じように安堵している色が見えた。

「エスパルは耳っぽいものを頭に刺せばいいだけだから、手軽で楽なんだよなー」

 よく見ればカチューシャで支えられている作り物の耳を揺らしながら言うカグヤ星の子供の言葉に、ルカはこっそり苦笑した。

 ○

 ルカたちは全員バッジを外し本来の姿に戻って、町に出た。確かにクロコの言っていたとおり、エスパルを模しただろう仮装はそこここで遭遇する。猫のような耳から象のような大きなものまで様々だった。どうやらエスパルは「動物の耳を付けた人間」という認識になっているようで、これならうさぎの耳であっても、悪目立ちすると言うこともないだろう。
 
「あの飾りがある家は、お菓子を用意しているから、行ってもいいんだ」

 クロコは初心者であるルカたちに説明してやる。普段から面倒見の良い兄貴分で、何かとアルが世話になっていた。
 案内のもと、何度か襲撃を繰り返して、ルカたちは両手いっぱいの菓子を手に入れた。これならしばらくはおやつに困らないな――とホクホク顔で帰路につこうとしたところ。
 
「トリック オア トリート!」

 アルが新しい獲物に目を付けた。もう十分過ぎるほど手に入ったのに、お菓子はいくつあっても良い、とばかりに大人を見つけたら誰彼構わず声をかけている。
 流石にルナも限度があると声を張り上げようとした時。獲物が驚きの声を上げてふり返る。
 
「なんだ、アルじゃねえか」

 聞き覚えのあるその声にルカもルナも動きを止めた。
 
「いきなり大声出したらびっくりするじゃん」

 傍らにいた連れの声にも覚えがある。
 そして、この二人はよく三人組でつるんでるのだと、思い出すと同時にルカとルナは頭を隠すように手を伸ばした。
 ――ひどく目を見開いてこちらを凝視している男と目が合いつつ。
 それでも抵抗として目を逸らしていると、呑気な弟は嬉しそうに二人へ飛びついた。
 
「キャンサー! クラブ! トリック オア トリート!」
櫂 詫人さんのやる気に変化が起きました!やる気0%のままだったwww※正式公開時には校正してるかもしれない部分

「そういや今日はハロウィンだっけ」
「朝からガキんちょに絡まれまくってクタクタだよ」

 そう言いつつも二人はアルにお菓子を差し出す。飴玉や個装されたチョコをひとつだけ。チョイスが実に子供慣れしていない男性のものらしい。これ以上貰っても持ち運びに難儀するので、今はそのくらいがちょうどいい。
 アルはそれに参加せずにひたすらこちらを凝視していた男——ゴダートに視線を向ける。

「トリック オア トリート!」

 だからこんな至近距離で大声出すなって、と顔をしかめながらキャンサーが言う。ひとつふたつ間を置いて、ゴダートがハッとアルに気づいた。

「アル、その姿は——」
「エスパルじゃないですか?」
「今日はハロウィンだもんな」

 状況の説明を求めたゴダートに、部下の二人が答える。
 いや、そうだけど、そうじゃないというか。多分ゴダートが聞きたいのはそういうことじゃないというか。
 ゴダートがまたルカとルナに視線を向けた。心を読まなくてもわかる。どういうことか説明してくれと、目が訴えている。

「ほら、今日はハロウィンだから、その、いいかなって……」

 いたずらがバレて、父さんと母さんに詰め寄られたことを思い出す。ルナも同じ気持ちなのか、
かわいい素敵31日滑り込みセーフ!!!!!!!https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16331448
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負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
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