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#山姥切長義
志苑(石月)2年前来年のオンラインイベントで出したい本の内容なんだが、続きを悩んでいる…
(載せてるのは序章のみ。完成したら、支部にちゃんとしたサンプル掲載よてい)
「こ、こは、一体……?」
 くらい、暗い部屋の奥。周囲にはなにも見えず、一切の音も聞こえず。
 ただただ暗く、闇よりもさらに黒い空間があるだけの、大広間。
 そんな感想をいだいたとき、ふと頭をよぎった光景は。……みずからが高い場所からか落下したときのことと、見知らぬだれかが死ぬ刹那。
 ああ、そうか。私はあのとき、たすからなかったのだ。
 それなのになぜか、今はこうして、生きている。その証拠に、自分がたたずむ暗闇が、とてもくるしいのだから。
「……はあ……」
 状況はよくわからないが、とにかく、しめつけられる感じがする。息ができないというか、首のあたりが、熱を持っている。
 あたたかさの理由は、すぐに理解した。自身の頸動脈から、ながれる血なのだ……と。
「あ、そういうことね……」
 いやだなあ。一度は命を落としたはずなのに、また殺されてしまうなんて。ふっと浮かんだ言葉に、頭をかたむける。
 瞬間的に、脳内をよぎった光景は。
 彼らに……刀剣男士にひどい仕打ちをして、うらまれ、にくまれて。……最終的には裏切られて。
 仮にも神である男士を、乱雑にあつかえば、ただですむはずなんてないのに。おろかな行動ばかりをしてのけた、この身体の主。
 最後にはみなに告発されて、断首刑にされる。そういう、よくある断罪エンドだった。
「……バカね、あなたは。もっとあのひとたちを、だいじにするべきたったのに……」
 元の世界にいたとき私は、なんでもかんでも人のたのみを聴く、都合のいい人間だった。他人からたよられることに、よろこびさえ感じてさえいた。
 けれどそれは結局、周りの人間からしてみれば、便利な道具なだけでしかなくて。
 自分は、周囲にうまいこと、利用されていただけだ。やっとその事実に気がついたときには、精神を壊してしまった。
「……ま、あるじさま!」
「……え?」
 ずっと声をかけられていたのだろうか、すこしイラつきぎみの相手に、目線をむける。
「聞いていらっしゃらなかったのですね?」
 あきれた様子をかくしもせず、大きなため息をつく。
「……ですから、現状のままですと、刀剣たちから反発がでる一方です。今のうちに、行動をあらためてくださらないと……」
 そこにいるのは、たしかに、かの管狐で。夢ではないのかと、目のまえの、丸い頬をつかんでやった。
「おやめください!」
「あ、うん、ごめん。……現実、みたいね……」
 これ……というか、彼? の名は、こんのすけ。ここのこんのすけは、しょうしょう口うるさいタイプのようである。
「あるじさま! こちらがよそのあるじからなんと呼ばれているか、ごぞんじですか! たまには、みなのことも、お考えを!」
 彼女の記憶によると、どうやら、いわゆるブラック本丸というやつだ。なぜ黒いかといえばと、刀剣男士の扱いが悪く、すぐに破壊してしまったりするからだ。
 自分の世界で審神者をしていたころ、自本丸もそのたぐいなのではないか? と、なんども、悩んだことがあるけれども。
(ふうん。いろいろとながれこんでくるけど、これは……)
 この主はまさに、まっくろそのものだった。
 意識の片隅のさやかという人物は、とにかく、手入れをしない人のよう。さすがに重傷の一にでもなれば、するのかと思ったけれど。そんな基本的なことさえも、していないのだ。
 過去には、貴重な刀さえポンポンと折っていたようで。刀装もつけずに進軍して、ひどい目に遭わせてきている。
「……はあ……」
 ……もしこいつの刀剣だったら、いっそ、こいつを殺してやりたいわよ。そうおこりそうになってから、あ、自身がそいつになってしまったのだったわ。と、気づく。
 うん、決めた。こうなった以上はもう、独自のやりかたで、本丸を変えて行くしかない。
「……こんのすけ、とりあえず、今重傷や中傷の男士はどのくらい?」
「……あるじ、さま……?」
 どういうつもりなのかが理解できないのか、こんのすけが、おどろいたようにこちらを見る。
「それから、現在の部隊編成と、初期刀はだれ?」
「え?」
 意味がわからない、という顔をされたので、苦笑いをかえし。
「ごめんなさい。ところどころ、記憶が欠如しているみたいなの……。だから、いろいろとおしえてもらっていい?」
 うたがいの眼差しをおくりながらも、肝心なことはおしえてくれるこんのすけに。
「ありがとう」
 と笑顔をむけたら、たいそうおどろかれてしまった。彼女は、そうとう冷たい人物でもあったのか。
 わかったことは、はじまりの一振りが山姥切国広で。近侍が、山姥切長義であること。……そして。
「つまり、私はもともと、国広と長義がお気に入りだったのね?」
「はい。山姥切だけは、とてもたいせつになさっているようでした」
 おきにいりだからこそ、刀装もきちんとつけていたし、手入れもしていたようで。折ったことも、ないようである。
「……は、はは……。さいってーね……。そりゃあ、政府に売られて、殺されるわけだわ……」
「……? あるじさま?」
「……ああ、なんでも。こっちの話しよ」
 怪訝な表情をされてしまったので、ごまかしの笑みをかえす。
 それにしても、だ。ここの主は、みなの食事も、ろくな食材は用意していないのか。ならばまずは、そこからかな?
「なにを置いてもまず、おいしいごはん、よね……」
 それから、装備をちゃんと作って、遠征にだそう。何かしようにも、資源が足らなすぎる。それでも、戦闘でなければ、負傷していたとてなんとかなるはず。
 本当にこの審神者ときたら、男士を物だとしか思っていなかったのか。ほとんどみんな、どんな場所でも安全かわからない、中傷以上じゃないの!
(どういう神経してるの!?)
 そりゃあ刀剣男士とは、元来は刀であり、モノかもしれない。けれど彼らは付喪神で、ヒトの肉体をあたえたのは、ほかでもなく自身ではないのか。
 それなのに、こんなにもひどい仕打ちが、よくもできたものだと感心すらする。
「……ほんと、最低だわ……」
 人の身をあたえられた以上、刀剣にも、心もあるというのに。それに、身体が傷ついたら、いたみだって感じるのだ。
 こんな、だれが見ても最悪な行為をしていたのだ。うらまれ、殺されるのは当然の結果だ。むしろ、直接手をくだされなかっただけでも、僥倖ではなかろうか?
(よく、数年間でも、業務ができていたわね……)
 だが今、体は、かの審神者のものだ。しかし、中身は別人だ。本人の意思など無視できる。彼女はすでに、死んでしまったのだから。
 今後とりしきるのは私なのだもの、どう変えたところで、文句など言えないはず。ならば、自分にできることをするまで。
「……そう、よね……」
 まっ黒い本丸だというのならば、まっしろにぬりかえてしまえばいいじゃない。この器の持ちぬし……結城さやかは、現世から消えてしまったのだ。
「……ふふ、ふふふふふ……」
「あ、あるじさま……?」
 軽く引いた態度のこんのすけに、むきなおる。
「いい? こんのすけ、今日からここを、ブラックなんて呼ばせない」
「……は、はあ……?」
 すぐには、むずかしいかもしれない。みなからの信頼は、地に落ちているし。そもそも、資源やら小判やらが、足りないにもほどがある。
 それに、現存している男士の情報も、知っておかなければならない。それから……。ああもう、やることが多すぎる! 
「さあ、いそがしくなるわよ〜!」
 ゆいいつ、お気に入りであったはずの、長義と国広。その二振りにさえも、見捨てられるほどの、どにもならない主だ。
 それをホワイトと言われる本丸にまで立て直すのは、かなりの時間がかかるはずだ。だがそれでも、あきらめたくなかった。
 こんなにも、たいせつにしなければいけなかった刀剣男士を、ひどい目にあわせたさやか。彼女を、許すわけにはいかない。
「……私が、やらなくちゃ……」
 そんなことをやっていて、前世? でも、こわれたはずなのに。本来であればそこまでしたいほど、審神者にとって彼らは、たいせつな存在なのだ。
 絶対に、ここのみなを、しあわせにしてみせる! ……なんて意気込んではみたものの、かんたんにはいくわけがなく。
 刀装作成のために呼びつけた近侍の山姥切長義には、これでもか! というほど、にらみつけられてしまった。
(無理もないわよねえ……。あからさまに、自分たちだけ、あつかいがちがうのだから……)
 思わず、にがわらう。こんな人間じゃあ、信用なんて、してもらえるわけはない。
 ちなみに、『にがわらい』とは、おこるに怒れない状況のことを指すのだと聞いた。今回のは、自身にたいして、だ。
 さいわいにも、まだ山姥切たちだけは、心がこわれていないみたいだ。男士のなかには、主からのあつかいに耐えかねたのか、瞳が死んでいる子もいたから……。
「刀装を、作成したいのだけどいい、ですか……?」
「……は? 昨日まで、つけようともしなかったくせに?」
「そう、ですね……。ちょっとした、心境の変化……と、言っておきます」
 再度、苦笑い。過去に一度も、敬語を使わなかったやつが、だ。突如ていねいにしゃべり、刀装作りをするといいだす。そりゃあ、不信感しかわかないわよね……。
「資源がとぼしいから、とりあえずはここまでかな……。あとは、遠征でしのいで……」
 独りごちると、近侍が怪訝……というよりにらむというのが正解か。……にながめていることには、気づいていたけれど。今はそれよりも、たりないものをなんとかするほうがさきだ。
「っと、こんなものかな」
 あるていどの予定をたててから、部隊の編成や、遠征先の確認かな? ひと先ずは、時間の短い所からだして、すこしずつ集めなければ。
 それから、すぐに手入れが出来きそうな男士は、先に入れてしまおう。ほかにやることは……と思考考をめぐらせていたら、きゅうに、肩をつかまれる。
「なにを、たくらんでいるんだ?」
「……え?」
「急にやさしくしても、俺は……俺たちは、きみを主とは認めないよ」
 その瞳を見たとき、すべてを察した。……この審神者は、むしろみなから、にくまれてさえいるのだ……と。
「……べつに、どんなふうに思われていても……できる手助けはあるでしょう?」
 長義の蒼い目が、見たことがないほど冷たくて。私は、精一杯の笑顔で、そう応えるしかなかった――。