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R18 言い張るネタワンクッション待っている!いつまでも!現パロ バレンタインの時先に書いててまとまらないなーーと思ってやめたもの 直接的じゃないですが事後表現ありワンクッション頼む、続きが読みたい!かけなかった 魔法使いの伊作と人狼になれない食満の話途中ワンクッション待っている!いつまでも!原稿書きかけ尻叩き 「不運が治りますように」ってお祈りしたら何故かいさくの体が超成長して超背が伸びてしまった六はの話「それどころかいつもより調子がいい位なんだ、朝からずっと――」
「「伊作せんぱあい!」」
 もう情報が広まったのか、遠くから保健委員会の一年生が駆けてくる。嫌な予感がする、と思うや否や、次の授業の準備をしていた一年い組の体育委員が陰から飛び出してきた。
「うわっ……!」
 互いに前を見ていなかった二組は思いっきりぶつかり、箱と、その中に入っていた手裏剣が宙を舞う。その落下点には転けて動けない乱太郎と伏木蔵が。そして目を見開いた伊作がいる。
「伊作!」
「おおっと」
 俺が手を伸ばすより先に伊作は一年生の襟首を引き、自分の後ろに下がらせる。そうして返す手で飛んできた箱を掴むと宙を掬い上げるように動かした。
 トトトトト、と軽やかな音と一緒に、手裏剣がみるみるうちに箱の中に吸い込まれていく。伊作はその合間に一つ二つ素手で掴み取ったと思えば、遠く飛んだもの目掛けて打つ。手裏剣同士がぶつかり、弾き飛ばされ、ココン、と天井に刺さる。
 やがて動きを止めた伊作が息をつく。その時にはもう、手裏剣は天井に弾かれた幾らかを除いて、ものの見事に箱の中に納まっていた。
「びっ……くりしたなあ。乱太郎、伏木蔵、大丈夫?」
「――……す……っ」
 一瞬の沈黙の後、場は弾けるように湧き立った。
「すごい! 伊作先輩、凄いです!」
 乱太郎がそう叫んで抱き着いたのを皮切りにどっと下級生が押し寄せた。「今のどうやったんですか」「一体何があったんですか」なんて口々に聞かれ、乱太郎なんか「ついに不運委員会返上ですね!」なんて涙を流してへたり込んでいる。当の伊作はその輪の中心で、あたふたしながら笑っている。
 ぽかんとしているのは俺達六年生だけだ。
「………………留三郎」
「ああ」
「何だ今の」
「…………俺にも分からん」
「あれ、本当に伊作か?」
「どこからどう見ても伊作に決まっているだろう!」
 お前だってさっき確かめた所じゃないかと水を向ければ、文次郎は首を梟のように捻って頭を抱えてしまった。俺だって本当はそうしたい。だがどう考えても、あれは間違いなく、伊作本人なのだ。
「留三郎、今の見てた⁉」
 片付けを終えた当の本人がバタバタと駆けてくる。俺の着物を身に纏って、目を嬉しそうに輝かせ。後輩の前という少しの緊張感から放たれた、子供のような顔をして。
 ああ、幸福っていうのは表情にするとこんな顔になるんだな、と思った。
 悩んでいたことが全部吹き飛んだ。思い切り手を伸ばし、乱暴に肩を組む。
「見てたよ勿論! ――お前、凄いな、伊作!」
「いやほんと、凄かったよねえ⁉ びっくりしたよ、絶対どこかのタイミングで滑ってこけるだろうなって思ったのに!」
「なんでそんなに悪い方に考えるんだよ」
「だって」
 肩を強く強く引き寄せて、それでも何かが納まらなくて髷をぐしゃぐしゃにかき混ぜると、伊作は笑いながら俺の手から逃れた。
「何が良かったんだろう。分からないけど、でもすごく体が思った通りに動くんだ」
 伊作は嬉しそうに拳を開閉したり足を回したりしている。あの大立ち回りにも関わらずその手のひらには一筋の傷もない。
「……ありがとうね。留三郎」
「ん?」
「やっぱりこれ、昨日のお陰だよ。……本当に今回こそ、ちゃんと願い事が叶ったのかも」
「こら、まだ分からないだろ」
「分かってるよ、分かってるけど!」
 そう興奮で身を震わせ、伊作は俺の肩に回した手にぐっと力を籠めた。
「でも、嬉しいんだ。本当にありがとう」
 その手は興奮のためか酷く熱くて、その熱が肩を伝って、胸の内にじわじわと染み込んでいくような心地がした。

(略)

「留三郎。小松田さんはいつ戻ったと」
「さあ……。吉野先生の口ぶりでは、十日は経っていそうだったが」
 だがそれも、乱太郎きり丸しんべヱと吉野先生が一緒にお参りに行った時だったという。「ならまた次の時は様子を見よう」という仙蔵の言に皆して頷いた。
「そういえば、留三郎も慣れるの早いな。気にならないのか」
 呼ばれて見れば、小平太のどんぐり目は真っ直ぐに俺を見つめていた。
「気になるって、何を?」
「こう、このままでいて欲しいとか、実はペース狂うから早く戻ってくれとか、そういうの」
 急に相方が変わったら何かありそうなもんだと思って、と興味を隠さずに言う。隣の長次が『言わなくてもいいんだぞ』という顔でこちらを見ている。
 だが別に何を心配される内容でもない。まっすぐ小平太の目を見つめ、深く呼吸をする。
「別に。伊作は伊作だろ」
「おお」
 そうだ、伊作は今までと同じように真面目に励んでいるだけだ。その結果がちょっと変わったくらいで、俺が何を気にする必要があるだろうか。
「大体これで態度変わったらその方がおかしいじゃないか。不運があろうが無かろうが、背が高かかろうが低かろうが、伊作がしてる事は変わらないだろ。だから、それだけだよ」
「おお……」
 歓声めいた声を上げた小平太は、パチパチと手を叩いて俺を見て、それから俺の背後に立つ伊作に目をやった。振り返って見上げると目が合う。眉を下げた穏やかな笑顔が返って来たので、俺も笑顔を返した。


「でもさ、本当、いつ戻るんだろうね。これ」
 風呂上がり自室に戻ると、伊作はポツリとそう呟いた。
「え、お前、戻りたいのか?」
「戻りた………んー……」
 棚から布団を下ろそうとしていた伊作は、そのまま布団に顔を埋めた。
「だって出来過ぎだろ。こんなの」
 それこそ言い過ぎだと思うが、見ている限り本当にそんな気分なのだろう。
 仙蔵が「慣れるのが早い」と言っていた通り、伊作は今や大きくなった自分の身体を完璧に扱いこなしていた。もしかして本来この姿こそが正で、今までが異常だったのではないか。六年一緒にいた俺ですらそう思うほどに今の伊作は生き生きとしている。
 当の本人からしたら夢でも見ている気分なのかもしれない、と思った。それこそ覚めるのが怖くなるくらいに。
 なんて返してやろうか思いあぐねていると、ふと、伊作の後ろ髪が寝間着の衿元に巻き込まれているのに気が付いた。いつも通り直してやろうと手を伸ばしかけたが、遠い。悩んでいると気付いた伊作が自分で直した。
「…………。いいんじゃないか、気にしなくても。その時はその時だろう」
「でも」
「なんだよ心配性だな。いいだろ? 今は今で楽しめば。案外、これからずっとこの生活が続くかもしれないんだぞ」
「――留三郎はさぁ」
「うん?」
「僕が元に戻らなくてもいいの」
 いやに真剣な目が返って来た。思わずごくりと唾を飲んだ。
「……だって。お前、困ってないんだろ? なら、別に……」
「今の僕の方がいいと思う?」
 立て続けの質問に内心頭を抱えた。なんでそんなことを聞いてくるんだ。そういうのは俺に決めさせることではなかろうに。
「お前がいいと思えばいいって、それだけじゃないのか」
「客観的に見てどうかが気になるんだって。どうかな」
 どうもこうもない。何と答えたものかと暫く頭を悩ませ、恐る恐る口を開いた。
「いい……んじゃ、ないか、今のお前も」
 本人が出来過ぎだと不安になっているのだ。認めてやるのが友人の務めという物だろう。
「……そっかあ」
 伊作は噛み締めるように頷いて、ほうっと息をついた。目でも潤ませていそうな声色だった。……これで正解だったのだろうか。
「僕、こんなに幸せでいいのかな」
「いいに決まってるだろ」
「った」
 いつものように肩を叩いてやろうとして、うっかり背中を叩いてしまった。俺が引っ込めようとした手を伊作はぐっと引いて、肘を曲げさせて、自分の首に引っ掛ける。肩を組ませようとしたのだろうか。
 だがこれじゃあ、俺はまるで大人にじゃれる子供のような体勢だ。
 見上げれば笑って首を傾げられた。ほんの少し片眉を上げて、『これで満足か』と問うてくるような顔。何故か急に胃がムカムカして腕を引き離した。
「どうしたの留三郎」
「別に」
 変に硬い声になってしまった。咳払いして喉を整える。
「ちょっと肩叩こうとしただけだよ」
「なんだ、残念。肩組もうとしてくれたのかと思ったのに」
「組むか? ほら」
「うわあ痛い痛い痛い」
 ひとしきり笑って、伊作は胸から漏れたような息をついた。
「よかった」
「何が」
「僕の同室が留三郎で」
「急にデカい話にするなよ」
 腕をうんと伸ばして髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜながら、内心胸を撫でおろした。良く分からないが、伊作が幸せだというならそれでいい。

 そりゃ、俺なしでも完璧にやってのける様に少しも寂しさを感じなかったとは言わない。言わないがそれは俺個人の問題であって、伊作とは一切、関係のないことなのだ。
やっちゃいましょう!
書きかけ尻叩き
できたのはぽいぴくで書き途中のはこっちに上げようかなあの気持ちです
■ ■ ■


 以前長次に教えてもらったカーシェアリングがうちの近所にもあること、またその在庫が意外にも車種も台数も潤沢だということは、以前調べて知っていた。無事に空いていたバンの前で伊作とじゃんけんして、無事俺が運転席に座る。「酔ったら言えよ」と言えば、スマホ片手にこくりと頷くのがミラー越しに見えた。
「出てどっちだっけか」
「左。それでスーパーのとこも左で、国道までまっすぐ」
「サンキュ」
 ウインカーを出して、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
「ごめんねわざわざ。別に通販でもよかったのに」
「それだとお前、暫く床で寝ることになるだろ。ほら、サイズとかも見たいし」
「別に大丈夫だよ、布団あるし。ていうか、背もたれが起きなくなっただけだからベッドとしては使えるし」
「…ソファ使えないの、俺だって不便だろ」
「え?でも普段から留三郎背もたれ使わないじゃん。ていうかソファ自体全然座んないし」
「…………」
「…………」
「……ここ左だったっけか」
「うん。ねえ留三郎、もしドライブしてみたかったなら、もっと早く言ってくれたら」
「気付いたんなら言うなよ!」
「ごめんって!」
 ぎゃあぎゃあ騒ぎながら車を走らせる。あんまりにも騒いでしまったものだから、向かいの車と目が合った気がして、バックミラーを見るふりで目をそらした。
 最近できたという大型の家具屋は、家から一時間しないくらいだ。折角だから昼飯もドライブスルーにしてみようと伊作が言うので、バーガーチェーンに車を入れた。初めてやったから二人ともしどろもどろだったが、無事に出てきた時には二人で年甲斐もなくはしゃいでしまった。
「留三郎、次何がいい?」
「じゃあポテト」
「オッケー」
 はい、と突き出された二、三本に齧りつく。きつい油と塩味に口の中がギュッとした。
「もうちょいくれ」
「はいはい」
 差し出された一つまみ、丸々がぶりと咥えると小さく笑われた。
「なんかさあ、あれみたい」
「わんこそば?」
「ううん、ほら手術のさ、『メス』『はい』ってやつ」
「お前こんなとこでもそれかよ」
「えっ駄目だった?」
「いや、全然。らしいなって思っただけ」
「何それ」
 心底不思議そうに言うので、信号待ちの隙にぐしゃぐしゃと頭を撫でたら笑われた。  やっぱり車にしてよかったな、と思う。こうやって周りの事気にせず構ってやれるから。
「あれ、留三郎。ちょっとこっち向いて」
「ん?」
 何かついていたか、と顔をそっちに向ければ伊作の手がすうっと伸びてくる。そのまま俺の顎を包み、口元を撫でてくる。
「塩付いてる」
「……そ、うか、ありがとな」
「あと髭剃り残してる」
「え。どこだ」
「へへ。ここ」
 なぞってくる指を伝うように触れてみると、確かに指に刺さる部分がある。ちょっとばつの悪い気持ちで見下ろしたら、蕩けるような榛色の瞳とはたと目が合った。
(――……あ、)
まずい、と思った。何がかは分からないが。伊作の指がもう一度俺の口元をなぞる。ほんの少し首を傾げる。ごくりと唾を飲み込んだ。
「あ、留三郎、青だよ!」
「……え?あ、お、おお」
 確かに対向車線の車はもう走り出している。慌ててアクセルを踏み込んで、その急な加速に伊作が小さく悲鳴を上げた。
「次どっちだって」
「まだまっすぐ。国道当たったら右」
「了解」
 ああ、なんだ。変な感じがしたのは俺だけか。
変に跳ねた心臓に静まれ静まれと言い聞かせながら、バックミラーを見て車線を変える。さり、と顎に伊作の指が伝って、危うくハンドルを取り落としかけた。
「なんだよ」
「一本だけ生えてるの面白いなって」
「……っはは、触んのやめろって!擽ったい」
「抜いてあげようか?僕上手いよ」
「だからやめろって、事故る事故る」
 しつこい手を掴んで膝の上に落ち着かせる。何度かごそごそ抜け出そうとしていたが、指を絡めて握りしめたらようやく静かになった。横目で伺うと諦めたのかもそもそポテトを貪っていた。
「伊作、俺にも」
「ふあい」
天才!