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ちま🍶
11/10 12:42
#夢小説
冥婚。ひとがしぬ
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落ち着けっ!
頑張って!
応援してる!
明日はきっとよくなるよ
明日はきっとよくなるよ
#夢小説
20年春くらいから執筆・停滞。pkmn/kbn/男主
荒れ果てた文章。途中までしか書いていないが最後までの流れが雑にメモしてある。苦手な描写が出現した際には見なかったことにしてそっとじしてください。すいません
はしりがき
11/10 12:42
その日もキバナは普段と何一つ変わらぬ様子で朝を迎えた。
もうずっと長い間、朝起きて一番に見るものは彼の伴侶の顔だった。あまく蕩けた瞳はあふれる愛をたたえ、掠れた声で囁く朝の挨拶が耳の奥で木霊する。やわらかく綻ぶ目尻にそっと唇を落として、彼はベッドルームを後にした。例年であればもう暖かくなっていてもおかしくないというのに、廊下に出た瞬間頬を撫ぜる空気はまだ冷たかった。
誰もいないリビングは寒々しい色をしていた。部屋を明るくするよりも先にキッチンの端に設置されたコーヒーメーカーへと向かう。小窓の薄いカーテンから漏れ落ちる光に照らされて、危うげない手つきで準備を済ませれば、けたたましい音を立てて抽出が始まった。
それはほんの僅か、ぼんやりとしているうちに全ての動作を終わらせる。真白の湯気を立ち昇らせるマグカップを手にとって、彼は漸くベランダの方へと近づいた。大きな窓を覆う遮光カーテンを左右に引けば、照明の必要などないほどに部屋は一気に明らんだ。彼の職場でもある街の象徴が、朝陽に縁取られて浮かび上がっている。
ガラス越しに見える世界は、どことなく霞がかって見えるような気がした。
春を告げぬ鳥
ナックルジムにジムトレーナーとして勤めるリョウタにとり、キバナとは自身の上司であるまえに、ただ敬愛する人物であった。宝物庫の管理や街に隣接するワイルドエリアの治安維持など、なにかと仕事の多いナックルジムでは繁忙期を過ぎても手の取られることが多く、まとまった休みを取ることは難しい。それがジムリーダーともなれば尚更である。
だから、この長い羽休めは彼らにとってもとくべつなものであったのだ。朝早くにスタジアムへ入り、清掃に着手したリョウタたちジムトレーナーは、丸一週間の休暇を明けて久しぶりに顔を出したキバナへ向けて一礼する。敷き詰められた芝生を踏みしめるまできゅっと引き結んでいた表情は、自らのジムトレーナーたちを視界に入れた瞬間ゆるりとほどけ、人好きのする笑みは、背の高く、ともすれば威圧感を与えやすいキバナの印象を一瞬にして塗り替えた。ヌメラにたとえられることも多い彼の纏う空気は、勝負事を除けばいつだって穏やかで優しかった。
「キバナさま、おはようございます」
「ああ、おはようリョウタ。長いこと留守にして悪かったな」
「いえ。キバナさまは普段休まなさすぎですし、ちょうどいい機会でした」
留守中の沙汰を訪ねるキバナに対し、リョウタが簡単な報告を済ませていると、ジム内の私送便を一手に引き受けるデリバードが彼らの元へやってきた。普段は餌を包む尻尾から緊急性の高い緑色の封筒を取り出して、キバナへ向けまっすぐに差しだす。薄っぺらなそれを指先で受けとり、長い足を折りたたむと、彼は空いた左手でデリバードの頭を撫ぜた。
リョウタはそんなキバナの様子をぼんやりと眺めていた。
優しい微笑みが配達人を労うのを、ひとつ覚えた憂慮の上で見守っていた。
ガラルリーグの王が代替わりをしてから季節がふたつ移ろっていた。当時の騒ぎで崩れた街の城壁などはあらかたの修繕を終えることになったが、取り戻せていない部分も多く、全てが片付くにはまだ遠い。ローズ前委員長の残した爪痕はナックルシティの至るところに残っていたが、それでもひとびとはすっかり元の色を取り戻しつつある。何かと駆り出されることの多かったキバナもようやく一段落を迎えたところであった。
彼のその変化に世間が気づくのはすぐだった。そもそもキバナ自身に秘匿するつもりがなかったのだから、そうなるのは当然の結果と言えるだろう。近頃はどこへ行くときも人目を憚らず、周囲の光を返してきらきら輝く約束の輪が彼の左手を彩っているのだ。
ジムリーダーとは存外地域に根ざした職業だ。彼らと街に住むひとびとの距離は、はたから眺めるよりもずっと近い。ナックルシティに住むひとびとのなかには、彼の抱えるたいせつなものの正体を知る者さえあった。幸福に蕩けるキバナの顔を日々見送った彼らは、軽い調子で質問に応える画面のなかの青年を、ただ静かに見つめている。
キバナはその見た目や振る舞いの表面的な部分から誤解を受けがちではあるが、このような形でメディアに露出することはほとんどない。彼自身が各種取材を無下に扱うことはないが、キバナを消費するような振る舞いは、キバナをポケモントレーナーとして尊敬する周囲をいたく傷つける。彼らの矜持を損なうものを、彼は是とはしなかった。
「相手は一般人だから、もうこの辺りで勘弁しておいてよ」
困ったように頰を掻くキバナを朗らかな空気が取り囲む。簡単な取材はそう長くはかからなかった。市井の好奇心を一手に引き受けたひとびとに、けれどもキバナは自身の伴侶のはなしをできるのが嬉しいようで、ゆるんだ口の端からあたたかなこころをたくさん零した。
「では最後に、結婚を決めたきっかけを聞いてもいいですか?」
くすくすと笑いながら尋ねる声に、ほんのわずか、視線が揺れる。左手の飾りをグローブ越しにそっと撫ぜながら、けれども彼がそのように彷徨う時間はそう長くはなかった。
「どうしても必要だったから、かな」
まるで祈るように、彼は心臓へと至るそれにそっと口付けた。
◇
抽出の終わったコーヒーが柔らかな湯気をくゆらせている。ヌメラを模したふたつのマグカップにあたためたミルクをたっぷりと注げば、それはしあわせの味になった。キバナは大きな手で取手を掴むと、恋人の待つリビングを振り返る。カウンターの向こうのソファでは、彼の最愛がひどくやさしい顔をして、卵から孵ったばかりのナックラーと戯れていた。神経質な指先がまあるい頭を撫でまわせば、赤子はよろこんでクルクルと喉を鳴らす。
幸福に姿があるのなら、それはきっと彼のかたちをしている。こみ上げる感情を飲みこんで、キバナはマグをひとつ手渡した。相手が両手で受け取るのを確かめながら、視線は膝の上のナックラーへと移りゆく。
「かわいいな」
「ふふ。この頃はちょっとやんちゃがすぎるけどね」
「そうなのか?」
キバナはちいさく首を捻ったあと、当事者であるナックラーの顔を覗き込む。膝の上でごろりと転がるそのちいさなお腹をぽんぽんと撫ぜながら、恋人もまたきらりと光る大きな瞳に自身を映していた。
「おまえ、きのうはちょっと目を離した隙にきのみ籠半分腹に収めちゃったもんな」
「くるる!」
「褒めてないよ」
「くる?」
短い手足をばたつかせて元気よく返事をする赤子に、恋人はふすふすと吐息だけで笑う。控えめに口元を隠す指先に視線を奪われていると、顔を上げた彼がことりと首を傾げた。どうしたの、という疑問は音になるより先に瞳が雄弁に物語る。キバナは見透かされたような心地になりながら、何にもないのだと誤魔化した。
赤子のおなかへと戻るてのひらを追いかけて、そのすらりとした指先を絡め取る。くすぐったそうに身じろぐ恋人を腕のなかのナックラーごとすっぽりと抱きすくめれば、さっき飲んだコーヒーが一気に甘ったるくなったような気がした。
「もう、どうしたの」
つむじにあごをのせる
音量を絞ったテレビからメタモンの歌が聞こえてきて二人で懐かしむ。
「そういやこの前姉ちゃんに会ったんだけどさ、いつのまにかメタモン手持ちに入れてて」
「メタモンを? めずらしいね」
「だろ? なんかロケで仲良くなったんだってさ」
「はー! なるほど」
「そんでさ、むかしメタモンのうたあったよなって言ったわけよ、オレさま」
「うん」
「そしたら姉ちゃん、そんなもんは知らんって」
「えーっうそー! みんなであそぼうといえばメタモンじゃん!?」
「だろ!? でも姉ちゃんにとってはコイキングらしいんだよ」
「ああ〜っなるほど! お姉さんふたつくらい上だっけ」
「そそ。二年でそんな変わる!? って思って」
「でも確かにおれが弟と一緒に見てたときってもうゲンガーのうたに変わってたなあ」
「マジかよ。オマエのとこ年子だったよな。メタモンの時代短すぎねえ?」
「ちなみにいまはカモネギらしいよ」
「へえ……」
唐突に、この宝物を抱いて眠る想像をした。
いとおしい日々をともに重ねて、そうして最後はいっしょにねむりたい。それを望む権利がほしい。守りいつくしむことを社会的に認められたい。
「なあ、オレと結婚してくれない?」
かたまる
いとおしかった。こんな日々がずっとつづけばいいとおもった。あたたかい家だ。
「オレさま、ずっとオマエの隣にいたい」
たっぷりの間があって、惚けた恋人頬をつねる
なにしてんだよと笑うキバナ。ゆめかとおもって
「おれの人生のなかでこれ以上幸せなことってないよ」
「はは、なに言ってんだよ。これからもっと幸せになるんだろ?」
ほほえむ恋人。それに対する肯定はない
(もう少しわかりやすく今が「最高」でもいいかもしれない。今が最なので、この上はない(と思い込んでいる))
はにかみながらプロポーズには是を返した
◇
ふたりがけのソファにくっついて座る。キバナの恋人は深く腰掛けた彼の足の間に滑り込んで、そのしっかりとした胸板に頭を預ける。入浴後のからだはぽかぽかと暖かく、寝巻きにしているシャツ一枚隔てたそこからはとくりとくりと生きている音が聞こえていた。自身の腹の前で組まれた腕をそっと持ち上げて、そっと指をなぞったり手のひらを微かにひっかいたり。おおよそなんの意味もない行為ではあったが、それは不思議とふたりの心を満たした。
「よかった。おれ、きょうもきみがだいすき」
「はは、オレさまもオマエがだいすき」
心変わりをしない人間なんていない。昨日までどうしても捨てられずに拘泥していたものが、今日にはどうでもよくなっていることだってある。それ自体は仕方のないことだ、と恋人は言った。人間であるかぎり、ずっと心に振り回されて生きるのだ。寂しそうに語る恋人の言葉を、そのときのキバナは否定しなかった。
キバナの視界に映るつむじは何も語らない。彼のおおきな手に頬をよせてうんとひとつ頷く恋人が、いつかと同じ思考の波にさらわれるまえに、彼は静かにそのもちもちとした頬を指先で掴む。くぐもった笑い声を耳殻が拾いあつめると、ただ楽しくて頬がゆるんだ。
キバナが世間に結婚を報告したからといって、生活に変化が訪れるわけではない。彼はいままで通り、いまは配偶者となったとくべつと穏やかな暮らしをしていたし、それをわざわざ追いかけて詮索するような人間はナックル市民にはいなかった。街のひとびとの多くにとってキバナとは、ガラルリーグのトップジムリーダーという有名人である前に、たとえば、かつては膝小僧に擦り傷をこさえて涙を堪えていた小さなキバナくんでしかないのだ。
けれども、街に住む人間がそうであるからといって、キバナの私生活を切り売りしようとする人間が彼の生活圏に現れないわけではない。実体のわからないキバナの配偶者をただ一目見ようとカメラを構える彼らは、しかしいくら張りつこうとも微塵もその姿を表さないその人物について、しだいに下世話な憶測を世間に流布するようになってゆく。
降って湧いた待機時間に、キバナは自身のSNSを確認していた。彼がひとたび何かを投稿すれば瞬く間に反応は広がってゆく。良くも悪くも彼には影響力があり、彼に興味のあるひとは多かった。優しい言葉が重ねられていくときもあれば、冷たい言葉を投げつけられることもあった。彼はそういった様々なひとの感情と距離をとるのがたいそう得意であったので、増え続ける通知アイコンを無為に追いかけ続けることはしない。長い指先で流れるようにスクロールをしていくが、一向に終わりの見えないそれを途中で諦めてひとおもいに先頭まで飛び上がる。一瞬にして昼休憩から定時後へと移り変わったそれらは、流し見した程度ではあるが何やらきな臭い雰囲気が連なっているらしいことが読みとれた。タイミング良く届いた最新のメンションには、どうやらネット記事のアドレスだけが記載されている。またかと呟いたのは心中のことであったが、同じタイミングでロトムが声を出したので、思わず笑みがこぼれ落ちる。開く気はないが自動で表示されていたため勝手に視界へと映りこんだサムネイルには、ページを開かせるための手段を選ばぬような見出しが並んでいた。
キバナがスマホからそっと指先を離せば、キバナに画面を見せていたロトムは肩を回すような感覚でその場で一度宙を舞う。彼は大きなからだを椅子の背にもたれさせると、天井を仰ぎ、両手を重ねて唸り声をあげた。ロトムはそんな彼に向け、ただ月並みに大丈夫かと声をかけるが、定型となった大丈夫しか返ってこないのは聞くまでもなく明らかであった。
ジムリーダーとして、ポケモントレーナとして在る限り、キバナには心臓の証よりも優先しなくてはならない一線がある。寂しい薬指をグローブ越しにそっとなぞると、幸福を溶かした恋人の声がキバナを肯定してくれる気がした。
ジムの業務を終えて帰路に着くキバナが濃紺に沈みゆく景色のなかを歩いてゆく。深い色のパーカーは薄闇にすっかり溶け込んで、普段はまばゆい彼の存在感を紛れさせていた。夕食もそろそろ落ち着いたであろう頃、通りすがる街のひとが親しげに一言投げてくるのに手を振り返しながら、キバナは普段と同じようにすこし遠回りをしてひとつ先の通りを抜ける。この辺りの店は閉まるのが早い。うすぼんやりとした光が漏れ出す軒先もいくらか散見されるが、どこもおおむね施錠の済んだ後であった。昼間の賑 わいを忘れた街並みは普段の活気を知っているだけにいささかの寂寞を胸に植えつけるが、観光客の過ぎ去った故郷の景色は同時に彼の元へ深い安堵を運んでくる。連なったレンガの先からは、ガタガタと物を動かすような音が響いて聞こえていた。街頭のスポットライトを浴びて遠くで揺れる人影が、すこしずつその像を明らかにしていく。
正面にはきのみを並べた露店が見えた。広げていた木箱を積み上げる女性は明らかに店仕舞の支度をしていたが、彼の長身が近づいてくるのを視界に入れると大きく手を振って歓迎した。
「キバナくん今日も一日よく頑張ったわねえ! おすすめはフィラのみとマゴのみだよ」
「おっいいね。おばちゃん、それ五つずつ頂戴」
「はいよ」
「いつもギリギリにごめんな」
「はは、いいのよそんなの!」
訳知り顔で話を進める彼女は、慣れた手つきで重ねた木箱の最上段から今日のおすすめを紙袋へ詰めてゆく。イワンコの耳のように折り畳まれた口はクラフト紙の固さに負けてすこし広がるけれど、持ち運ぶのに不便はない。お代と引き換えにそれを受け取れば、薄明かりを拾った左手が鈍い光を返した。
「最近はどうだい?」
「んーまあぼちぼちかな。あっ、先週の休みはヤローんとこで牧場手伝わせてもらった!」
「フフッ、ありがとうな」
◇
壁のなかの天使が新たしい日を迎える彼らをあたたかく見守っていた。
高層階に位置する庭園は蜂蜜色のレンガに囲まれて、四角く切り取られた空はどこまでも高く澄んでいる。等間隔に並んだ柱が祭壇への道を示し、そこかしこを彩る草木の間を縫うように光はいく筋も差し込んで、まばゆい。足の裏に硬い石畳の感触を感じたとき、それらは一瞬、キバナから現実の一切を遠ざけた。ひんやりと心地よい風が彼の手の甲を擽るが、彼はそれを知覚することすらない。じわじわと狭まる視界に映る景色は、ムシャーナのもたらした夢の姿だと言われても納得してしまいそうだった。
それは、たとえば初めて宝物庫の塔に登ったときのような感覚に似ている。ジムに従事する身となった頃のキバナはまだ幼さの残る年頃で、扉の向こうに佇む無知に気を昂らせたまま足音荒く飛び込んだ。同年代の子供に比べれば幾分アカデミックな好奇心ではあったが、扱いとしては新しい玩具とそう大差ない。けれども、実際にその唯一不可侵の伝説を目にしてはただ圧倒されるばかりで、そこに読解も鑑賞も存在しなかったのだ。足元がぐらぐらと揺れて、ともすればひっくり返ってしまいそうな心地がするのに不思議と悪い気はしない。どこにでも飛び立ってゆけそうな開放感に包まれて、そして、彼は目の前の光景に戻ってくる。
参列者は他にいない。正真正銘自分たちだけの式だ。両家への挨拶から今日を迎えるまでには随分と長くかかったが説得自体はそう難くなく、存外すんなりとキバナの意向は受け入れられた。
キバナよりもいくらか低い位置で、彼の最愛があまくほほえむ。
彼にとっては見慣れた顔のはずなのに今日はよりいっそう輝いて見えた。
前提の取材について一文
「本件とは関係のない話ではあるんですけど、近頃世間を賑わせている件について、キバナさんから何か一言いただけないでしょうか」
記者がそう切り出すことは予想の範疇であった。キバナは一瞬考える素振りを見せたが、あまり間もなく頷いて、向けられたマイクに向かって声を吹き込む。
「正直オレさまとしては、なんでこんな話が世間で盛り上がってるのかなって不思議だったりはするんだけど」
「パートナーは妄想じゃないし、スピード破局もしてません! ファンのなかにはきっと心配してくれたひともいるよな。でもオレさまいま毎日しあわせだから安心してくれ!」
「彼は公平で、優しくて、オレさまにとってこの上ないひとです」
「ちょっと凝り性なところがあって、手を抜くことを知らないんです。以前タマゴが孵ったときとか、気合い入れて掃除してんなっておもってたら、リビングどころか換気扇やベランダの窓までぴかぴかに磨かれてて驚いちまったくらい」
◇
幼い時分より写真を撮ることがすきだった。日がな一日カメラを持ち歩き、気に入りの瞬間を切り取るのが彼にとっての至福のひとときで、それは今も変わらない。けれども、それだけで暮らせるほどに人生というものは彼に優しくはなかった。
毎日を生きるために彼は一度趣味を諦めた。職にするほどの技術はなかったし、仮に運良くそれを手にしたとして、逃避の先を失うこととなっては耐えられないだろうと思った。けれど、忙殺される日々のなかで、自分にとりいっとう大切なものの時間を失い続けることは何よりもつらく、そうであるならば物わかりのいいふりをして未来を諦めた自分はなんと愚かなことをしたのだろうと思わずにはいられない。結局諦めきれずに再び手を伸ばすまで、彼は何度も何度も苦心した。
だって、すきなだけではだめなのだ。結果を出さねばそれで食べていくことはできぬ。食うに困ればすきなものをすきなままでいることが難しくなるかもしれぬ。彼はそれを、万が一にでもすきではなくなるかもしれない瞬間がくることを、恐れていたのだ。
だからこれは、きっと天啓に違いなかった。仕事となってはすきなものだけ追いかけることは難しい。けれども、実績を伴えば、ある程度の自由は許される。許されるはずだと信じていた。そのために、選ばざるをえない手段があることを自分に飲み込ませて、彼は古い石畳の上で息を潜めてカメラを握った。彼の視線の先にはいつだって話題の中心にいるこの街のジムリーダーの姿がある。トレードマークのヘアバンドも特徴的なパーカーもない。いつもは結えている髪も下ろしてしまえば、まるで別人のように印象が変わる。唯一変わらない肌や目の色、そして何よりも周囲よりいくらか抜きんでた身長などが、総合的にその人物の正体を推察させた。
彼の視線の先に立つそのひとは、宝物庫の近くにある花屋のワゴンの前で店先の青年と談笑していた。笑う口元にはそっと指先が添えられて、それがいやに印象的であった。暫くじいと観察していると、彼は下ろした指先で淀みなく花々をえらんでゆく。最後に青いヒヤシンスを指差したところで、ふと、彼が動きを止めた。
そのままどこへ向かうかと思えばポケセンの近くにある屋台でふたりぶんのドリンクを購入。連れ合いはどこにも見あたらないが待ち合わせだろうか。手提げ袋に入れてもらったそれをぶらさげながら、街のなかをいったりきたり。すれ違うひとに渡されるタッパーであったり、彼の荷物はしだいに増えていく。まちのひとに見送られて、キバナがはずれの方へと消えていく、おいかけようとしたところで、見知らぬこえに呼び止められる。
「きみ、ちょっといいかな」
必要以上にびくついてしまったのは後ろ暗い事情があるからだ。
「キバナくんのことをずっとおいかけているよね」
すこしもめる
「あのこたちは本当に仲がよくていつも幸せそうだったよ」
彼はキバナがちいさなときからキバナのことを知っている
震える声がいっしょにしあわせになりたかったのだと言葉をかたどった。
「たのむから、そっとしておいてくれないか」
◇
控室から続く通路には深い影が横たわる。十回目の挑戦にして衰えぬ覇気を纏い、暗がりからぬるりと出てきたキバナは一切の揺らぎを見せなかった。
彼らの最後になった公式戦。結果はダンデの勝利で幕を閉じたが、その内容は未だに諳んじることができる。先鋒のヌメルゴンが場を作り、次に出てきたのは特殊型に調整されたフライゴンだった。よくよく鍛え抜かれた彼はギルガルドとドラパルトを立て続けに二体もっていき、ダンデを一気に追い詰める。その指示に一切の隙はなく、キバナの声を、仕草を、そのこころのうちでこだまする音を、それらすべてを正確に読み取ったポケモンたちが最大限のパフォーマンスを発揮することを、ダンデは心の底から楽しんだのだ。渦中で果敢に吠えるドラゴンが、いまにも砕け散ってしまいそうな薄氷のうえに立っていたとは知らないままに。
本来であればダンデはその脆さの一端すらも目撃することはなかった。実際に、彼がそれを知ったのは随分と後になってからである。いまは立場が変わり仕事で関わる機会が増え、存外話しやすい相手と気付いてからはプライベートでも度々会うようになった。けれど、当時はあくまでもチャンピオンとジムリーダー。世間が持て囃すほどの関わりはなく、仲は良くも悪くもなかった。彼と個人的に付き合いのあるネズなどは「見てられるもんじゃなかったですよ」などと濁し、キバナ自身もまた当時のことを多くは語らない。
ネズとさんにんでのんでる
飲み交わしながら近頃はよく女性を紹介されるのだという話を溢した
あいつはさ、嘘がきらいなんだ。少し考えすぎるきらいがあって、オレさまと足して割ったらちょうどいいな、なんて言って笑った日も少なくない。
あのときも、キバナのことがずっとすきだよって言って笑ってくれたんだ。オレさまうれしくって、次の休みに指輪を見に行こうって話をした。
薬指の指輪をじっと見つめる。
キバナが結婚したことは本人から報告を受けた。当然、今更なんて言葉は浮かんでこなかった。
ネズは、自分よりいくらか年下の腐れ縁を、それなりに気に入って大事にしている。
「おめでとうございます」
「ん?」
「結婚」
「ああ、ありがとうな。ネズには本当、世話になっちまって」
ふんと鼻を鳴らして続く言葉は黙殺した。困ったように頬をかく左手に、約束のあかしがきらりと輝いている。やわらかく綻ぶ表情もしあわせに浮かされたこえも目の前にあるというのに、ネズの表情は晴れない。いっしょに幸せになりたかったのだと涙ににじむ声が、いまも耳に残っている。
落ち着けっ!
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明日はきっとよくなるよ
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