こそフォロ タイムライン フォローリスト ジャンル すべて 男性向け 女性向け その他一般
カギョウ11/17 20:49mgd72 バーヒュト(未満)
メモ帳あさってたら出てきた(存在忘れてた)シリーズ。2020年3月頃
メギドとはなんだろうか。
ヒュトギンは考える。

メギドは個。
世界に“発生”した時から己のなんたるかを知り、名を持ち、あらゆる他の生物に勝る力を持つ。己の属した集団や周囲の環境に影響を受けるーー対話派に拾われたオレのようにーーこともあるが、それは同質化を意味しない。個が重視される文化ゆえに、示威行動としての争いがいつもついて回るのだと唱える対話派の者もいた。メギドは個、メギドの個とは闘争だとそのヒトは言った。

メギドはイマジネーションの化身。
いったい誰が言い出したのか、望む姿になれるわけではないので、想像力(イマジネーション)ではなく魂の像(イメージ)ではないかとも思うのだが、ことヴィータ体となると己の願望が反映されないでもない様子なので難しい。オレもメギド体はひらついた衣装の白い女のようだが、ヴィータ体はこうして碧髪の男だし服も体に沿うのを好む。初めてヴィータ体をとる時、特別なりたい容もないけれど醜いのは嫌だなぁと考えたかもしれない。

魂の鎧(肉体)をまとった闘争のための個。
それがメギドというものだろうか。
では、闘争なくばそこあるものは。
魂?

「退屈かィ?」
「そうだね。どうでもいいことをつらつら考えてしまう程度にはね」
「すまねェな。もうちっとだけ待っててくれや」

「ただの魂」代表、5年来の付き合いになるメギドの絵描きバールゼフォンは、こちらも見ずにそう言った。
オレはため息を吐いて、漫然と浮かせていたスフィアをくるくると回してみたりする。





ペルペトゥムに行ったバールゼフォンは、ベリトとアイムの肖像画を描いた。その後、あろうことかあのアスモデウスのメギド体を描きたいと申し入れ、その交渉の過程で彼女のヴィータ体の肖像を描きまくって倒れた。
旅の途中トーア公国を通ったついでにと、ご丁寧にオレへの面会を申し込んできた彼と共にした夕食の席で、そんな話を聞かされた。
ヴィータや幻獣は描いてもつまらないとか常々言っているけれど、描けないわけじゃないんだよなあとかその時は思っていた。先代トーア公に頼まれて親族や高官の絵を描いているのも知っていたし。

「結局メギド体の方のアスモデウスは描けなくて残念だったね。まあ、いちどOKを貰ったのだからタイミングさえ合えば可能性はあるだろ」

大臣が気をきかせて市内のレストランに予約を取ってくれており、向かってみればシックな内装の個室にフルコースが用意されていた。メギド2人にはもったいない優雅な食事だ。
大抵の料理は俺には味が濃すぎるのだけど、それなりに付き合いの長くなった大臣はそのあたりも抜かりなく、たとえば今俺の前に出された白身魚はバールゼフォンのムニエルとは違い、塩茹でにしたのみ。大臣とはこれからもよい関係を築いていこうと思う。

「そうさなァ。ま、気長に待つさ」
「気長に、ねぇ。それってハルマゲドンの前かな、後かな?」
「サァな! 差し当たって、今はお前さんが描きてェんだがどうだい」

本当に、そんなことを言われるなんて思ってなかったから、その時オレは多分変な顔をしていたと思う。

「…………ええ、君、宗旨替えした? ヴィータはつまらないんじゃなかったかい」
「それには変わりゃしねェが、ええとなんだ、ホラ、『ハマった』ってェやつかな」
「はぁ、『ハマった』……」

聞けばアスモデウスの習作たちは、無我夢中で描き散らすうちにもはや人の姿を離れ抽象の域に達したのだという。それでやっとOKを出したアスモデウスの感性は謎だが、倒れた後復帰してそれらを見た彼の中に閃くものがあった。
その閃きを試してみたいが、出てくる前のアジトは皆忙しそうだった。旅先で誰かにモデルを頼もうにも、出来上がるのが抽象画では理解を得にくい。さらには、これだというモデルがそもそもいない。

「俺のただ描きたいだけに付き合ってくれる奴っていや、お前さんだァってな」
「ご過分な評価をどうも? オレも暇じゃないんだよ?」
「こうして時間とってくれたじゃねェか。この後まだなんかあんのかい」
「あるね。この食事の時間分、片付けられた仕事をやりに戻る」
「そりゃ悪かった」
「いいけどさ。要するに、いま君の食指が動くのはメギドのヴィータ体なんだろ、多分」

そう推測を口にしてみたけれど、バールゼフォンは、そうなんかねェと目を丸くしている。そしてそのままじっとこちらを見据えてくるので落ち着かない。彼の中ではもう絵を描きはじめているのかもしれない。

「確かにソロモンくんたちは、今までにない大規模な行動に出ているけど、別に永遠じゃない。しばらくしてからアジトに行きなよ。アスモデウスも描けるかもしれないし。それか、今でも王都のコラフ・ラメルに行けば、暇なのの一人や二人くらいいるかもよ」
「へぇ、相変わらず大した早耳具合だ。感心感心。でもなぁ、描きたい奴が目の前にいるのになんでヨソに行かなきゃなンねェ」
「そりゃまあそうだけど……なんだか痒くなる言い分だなあ」
「どうしても描かれンのが嫌かい。なんならお前さんは仕事しててもらって、その横で勝手に俺が描いててもいいんだぜ」
「ダメだよ、やめてくれ。スパイの疑いでもかけられたいのかい」

これ以上やりあっても平行線のままだろう。
仕事の整理をして時間をつくるから、しばらく滞在して待つように言うと、バールゼフォンは満足そうに頷いた。

「じゃあ、城に連絡して近くのホテルに部屋を手配させるから。それまではゆっくりしよう」
「これ以上仕事を遅らせンのも悪いや。前に俺が使ってた部屋を開けてくれりゃそれで……」
「いいや。君の部屋はもうない。“政変”の後の片付けのためにあのあたりは全部物置だよ。それに、あれから城の人間がたくさん入れ替わったんだ。一般からの応募も受け付けたから、新しく入ったうちの多くは宮廷絵師だった君を知らないし、まだあちこちばたばたして教育が行き届いていないんだ。お客様にお粗末な姿を見せたくないな」
「俺は気にしないが」
「城に残り続けた者でも、あれだけ公に近かったのに平気な顔をしている君をよく思わない奴もいるだろう。……まったく、せっかく国から自由になったのに、自分から城に来てどうするんだい。客人として扱ってやると言ってるんだから、ありがたく受け取りなよ」
「わかったわかった、降参だ。おとなしく言うこと聞くから、早めに時間ァつくってくれよな」

レストランから使いを出して、1時間もしないうちに迎えの馬車が来たと連絡が来た。有能なひと(ヴィータ)たちでまったく助かる。
大仰すぎる、歩いていくと不満を言う元・宮廷絵師殿を馬車に押し込み、ひとり城に戻る道すがら、とっぷりと暮れた空の下考える。
彼ってあんなに固執するタイプだったっけ?
5年間、定期的に顔を合わせていたものの、いわゆる仕事上の付き合いだった。それでも彼からすれば「ダチ」と表現するくらいには縁ができたと思っているらしいのはわかってる。
でもそれって、わざわざ俺を尋ねてくるほどのものだったんだ?
分からない。バールゼフォンというメギドに対する認識の更新が必要だ。
酒も入っていたし、『ハマって』いることを話題にしてテンションが上がっていたのかもしれない。今日のところはそう納得することにして、オレは足を早めた。



数日後、仕事を片付けてバールゼフォンのいるはずのホテルに向かった。はず、というのは待ちきれずまた旅に出ているかもと思ったためだ。予約もしていなかったが、名前を出すとすぐに最上階の部屋に通された。
昇降機を降り目の前にひとつだけのドアをノックする。返事がない。ノブには「お構いなく」のタグがかけてあったが、気にせず扉を引き開ける。
そして納得した。

「やあ! 随分といい部屋をもらったものだと思っていたのだけど、きっとこの絵を置ける部屋がここしかなかったんだね」

広い部屋の一辺が巨大な絵画で覆われていた。
色の乱舞。レモンとピンクが舞い散る空に、グリーンや紫に取り巻かれたグレーの小さなたくさんの人影。右手にどっしりと描かれたのが城だとすると、中央あたりで白く輝くのは広場だろうか?

「……んああ、ヒュトギン?」

広い出窓でうっそりと画板に向き合っていたバールゼフォンがこちらを向いた。あまり集中できてはいなかったようだ。

「そうさ、来たよ。ねえ、まさかこの絵がここにあるなんて思わなかったよ。君が来るというのでわざわざ運んだんだろうね」
「ああ、頼んでもねェのにな」

どっこいせ、と彼は立ち上がり、足下に散らばる紙やカンバスや画板とも言えないような板切れを、自然な動きで避けながらゆったりとこちらへやってくる。
オレは気にせず、『光輝けるトーア』を鑑賞していた。
絵の中の視点が高いのは、もしかしたらこの部屋か、このホテルの屋上で見た景色だからなのかもしれない。

「お前さん、この絵好きだったか」
「君の絵はみんな好きだよ。これは完成したものをゆっくり見たことはなかったからね」
「しかし、なんだ、これ確か一階にあったよな?」
「そうだね。君は昼と夜を描いて、トーア公が気に入った夜は城に、昼はこのホテルに。ここを訪れる身分の高い人たちや裕福なひとたちに、国の威容と文化を見せつけるためにね」

寄贈の日はちょっとした式典になり、ロビーに飾られたこの絵を囲むレセプションパーティーにはオレも参加していた。絵を囲むとは言っても、挨拶回りやらパーティーの差配なんかもありちゃんと鑑賞する暇はなかったのだ。
政変の後の親トーア公と思われるようなものは避ける風潮があって、外してしまっていたのだろう。
絵画に罪はないのに。
城にあった『月に照るトーア』も危うく消失の危機だったが、最悪よそに売れば金になると周囲を説得して、なんとかまともに保管させることができた。

「壊されたり、燃やされたりしていなくてよかった。それほどこの絵が好かれてるってことだね」
「そうかね」
「そうだよ。じゃなきゃこんなやたら大きなモノ、処分した方が場所を取らなくていいだろ」
「ひっでぇコト言ってくれる……まあ事実なんだが」

さて、とバールゼフォン。さっとカーテンが引かれた。
ありし日の、あるいはいつか来たるべき美しいトーアの姿は見えなくなり、オレは急に夢から放り出されてしまった。

「ご鑑賞中のところ悪ぃが、お前さん俺に描かれに来てくれたんだろ?」

よどんだ目でつまらなそうに口を尖らせる大男。がっしりと掴まれた腕は、痛くはないけれど。

「そう、だね。君の準備ができてるならいつでも始めてくれていいよ」
「それならこっちだ! エートそうだな。ホレ、あの窓ンところ座りな」
「……せいぜい絵を踏まれないようにすることだね」
「いい、いい。多少踏んだって構いやしねェよ」
「オレが構うよ」

くるりと生気を取り戻したバールゼフォンは、床の素描をあちらへ、画板をカンバスと重ねてそちらへ、その下から出て来たチューブをポケットへ。そうして窓辺への小道を作った。それからソファのクッションを根こそぎ持って来て、出窓の張り出したところに積みあげる。

「そうらできたぞ」

得意そうに叩いて見せたので、オレはため息おとなしくそこに座ってやった。

それが何時間か前。
午前中に訪問して、途中軽い昼食とお茶が運ばれた(「お構いなく」を外しておいてよかった)のでそれを頂き。日暮れはもう少し先だけれど、ただただ座っているのはあまりに退屈だ。せめて『光り輝くトーア』が見れたらいいのに。
オレは芸術を楽しめるタイプのメギドだけれど、ついぞヴァイガルド(この世)を美しいと感じることはなかった。
オレの目には、窓の外の景色は単なる景色にしかならない。空と、建物と、人や動物があるだけ。

くるくる、スフィアは回る。
これもオレの魂の一部。今は便利に使っているけれど、元はただの見目良い容れ物。

魂。オレも闘争を捨てた。
交渉も戦いだ。

筆を置く音がした。

「このあたりかねぇ」
「終わった?」
「見るかい?」
「是非」

彼は画面をこちらに向けてくれなかったので、オレからあちらに移動するしかない。うっすらにやつきながらオレと絵を交互に見ているのが気持ち悪いぞ。

「本当の完成はもっと時間をかけるが、今日はこれで満足だ。ありがとな」
「いや、構わない、よ」

もっと何日もかかるものと思ってた、という言葉は出てこなかった。
【追加】後から本文に追加しようとしたらしき部品が末尾にくっついてた。

「そりゃ、俺はヴィータ体の品質を向上させるよう努めてはいるけども。かといって君という芸術家がそう褒めるようなもんでもないだろ」
「そんなことァねぇよ」
「そうかい? たとえば俺は目つきが鋭いし、瞳が明る過ぎて怖いって言われたことがあるけれど?」
「……そりゃあ誰に言われたんか、きいていいもんかね」
「ソロモンくんだよ。夜中にアジトですれ違ったとき、光の入り具合かオレの目が光ってびっくりしたんだってさ。フクロウとかタカみたいだって。目つきについてはいろんなところで」


俺が戦闘にも用いるスフィアのような。
「お前さんの髪の色、上りはじめたお月さんみてェに煌煌とした瞳の色、そこらの女より白くて肌の色。それぞれに好いなァと思う。」
「見た目だけじゃないんだぜ。お前さん頭と口が回るメギドなのに、ヴィータにしては隙が多いところァ面白い」
「隙、多いかい?」


それに、昔からヴァイガルドを旅しているけれど、ヴィータとは時間の流れの違う姿で何度も会える相手はいなかったのかもしれない。
頑張って!
応援してる!
待っている!いつまでも!
やっちゃいましょう!
大丈夫......!
そういうときもある!
行ける気がする!
落ち着けっ!
いつもありがとう!
きっとうまくいく!
大丈夫!
どんな道も正解だから
負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
明日はきっとよくなるよ
のんびり行こう!
人は変われる!
なるようになる!
頼む、続きが読みたい!
この本欲しすぎる
これ好き! 好きすぎる!
ありがとう、これで今日も生きていける
発想にすごく引き込まれた
いや、十分すごいよ!
ぐはっ😍
おお〜😲
うるる😭
なるほど
それいいね!
共感する
響くわ〜
マジ天使
天才!
エロい!
神降臨!
素敵
かわいい
きゅんとした
泣ける……
ぞくぞくした
いいね
待っている!いつまでも!
いつもありがとう!
わかる、わかるよ……
苦しいよね
悩むよね
確かにね
その通り!
もちろん!
激しく同意
わかりみがすごい
お前は俺か
そうかもしれない
大変だよね
うん、うん。
そうだね
そう思う
そうかも
それな
うるる😭
大丈夫......!
そういうときもある!
なるほど
共感する
大丈夫!
のんびり行こう!
泣ける……
おめでとう!
やったぜ!
やるじゃん!
エライ!
いや、十分すごいよ!
おお〜😲
うるる😭
いつもありがとう!
神降臨!
頼む、続きが読みたい!
この本欲しすぎる
これ好き! 好きすぎる!
ありがとう、これで今日も生きていける
発想にすごく引き込まれた
頑張って!
応援してる!
待っている!いつまでも!
わかる、わかるよ……
やっちゃいましょう!
おめでとう!
やったぜ!
いや、十分すごいよ!
やるじゃん!
ぐはっ😍
おお〜😲
うるる😭
大丈夫......!
そういうときもある!
なるほど
それいいね!
行ける気がする!
落ち着けっ!
苦しいよね
悩むよね
確かにね
その通り!
もちろん!
激しく同意
わかりみがすごい
共感する
響くわ〜
お前は俺か
そうかもしれない
大変だよね
うん、うん。
そうだね
そう思う
そうかも
いつもありがとう!
きっとうまくいく!
大丈夫!
どんな道も正解だから
負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
明日はきっとよくなるよ
のんびり行こう!
人は変われる!
なるようになる!
マジ天使
天才!
エライ!
エロい!
それな
神降臨!
素敵
かわいい
きゅんとした
泣ける……
ぞくぞくした
いいね