こそフォロ タイムライン フォローリスト ジャンル すべて 男性向け 女性向け その他一般
111strokes11112/23 7:59何にも提供しないのは気が引けたので……。
元ネタは「ファイアーエムブレム風花雪月」と「愛の不時着」です。出張編集部での助言を受ける前に書いた物ですでに完結しています。続きが気になった場合は
https://www.pixiv.net/novel/series/8317825
までどうぞ。ただし続きはガッツリR18になります。
1.越境
 アドラステア帝国はフォドラを統一しそれまでの紋章主義に基づく貴族制度は解体された。聖人や十傑の血を引く者たちは尊ばれなくなったがその後導入された官僚の採用試験に合格した者たちが支配階級を担った。つまり古い皮袋に新たな葡萄酒が入ったことになる。彼らは自らが勝ち取った権限で得た資産を子供に継がせたがりそのまま新たな階級制度が固定された。皇族と官僚と農奴しか存在しない歪な国家は数世紀の時を経て七十年ほど前に革命が起きようやく皮袋は新しくなったがこの革命は王制を敷いている周囲の国々とりわけパルミラの王族や貴族たちを強く刺激した。自国で同じことが起きたらたまったものではない。パルミラは租界地であるデアドラに住むパルミラ人の保護を名目としてフォドラ連邦に攻めこんだ。大規模な侵攻と小規模な小競り合いを経て三十年ほど前に休戦協定が結ばれ両国を隔てる山脈、通称フォドラの喉元が軍事境界線、事実上の国境線となっている。
 七十年前の革命を嫌い隣国パルミラや永遠の友好国ブリギットへと亡命したフォドラ人とその子孫は何十万人と存在する。赤い革命を嫌った彼らはそれぞれの国において白フォドラ人と名乗って生活していた。七十年も経てば祖国を知らない子供たちの方が多くなる。白フォドラ人の間では辛うじて言語が保たれているものの八世紀の歴史を誇るセイロス正教への信仰と伝統は失われつつあった。
 カリードもその一人だ。カリードの母ティアナは白フォドラ人だが王家に近しい財閥総帥の子を産んだ。だが第一夫人でもパルミラ人でもなかったのでカリード自身は後継者争いに興味を持っていなかった。しかし自分たちが後継者であると信じて疑わない異母兄弟たちは感情的でしょっちゅう部下を怒鳴りつけて殴り、無茶な投資で損ばかりしている。そんな彼らに任せていては社員たちが幸福になれない。カリードが金銭的には豊かな子供時代を送ることができたのは社員たちが真面目に働いてくれたおかげだ。そんな社員たちに恩返しをするためカリードは後継者レースに加わった。宝飾品及び高級時計メーカーの社長というのが現在のカリードの立場だが近年ではグループ内での存在感を増している。母の身分は低いもののカリードはよく働き派手に遊び新聞のゴシップ欄を騒がせた。遊び相手の女優やモデルには自社の商品を贈ることにしているので左手首や耳元、首を必ず写すようにとゴシップ紙のカメラマンに裏で金を払っている。
 そんな遊び人のカリードが一番愛しているレジャーは飛竜の騎乗でこれだけは華やかな遊び相手と共に行うことはない。カリードは厄介な案件を片付けた自分へのご褒美にフォドラとの国境地帯へとやってきた。政治情勢はきな臭いがここは自然に恵まれており素晴らしい景色が楽しめる。山の麓で飛竜の管理をしているインストラクターが眉間に皺を寄せながら飛竜の鞍に腰を下ろしているカリードに話しかけてきた。
「社長、今日は風が強いので出来れば飛行を控えていただきたいのですが……」
「予備日はこれで最後だ。必死になって時間を作ったから一度くらいは飛びたいな」
「では絶対に西に流されないように気をつけてください。少しでも国境線を越えればフォドラの国境警備隊から撃墜されます」
 分かった、というとカリードは額に当てていたゴーグルを下ろした。ミラー加工がしてあるので白フォドラ人の血を引く証である緑の瞳が隠される。フォドラとの国境が近いこの地域では革命を嫌い山越えをしてきた白フォドラ人やその子孫が特に多くカリードの瞳の色も珍しいものではない。そんな事情もあってこの地方で遊ぶことがカリードは好きだった。飛竜に乗る資格もこちらで取得している。
「危ないと思ったらすぐに着陸するよ、着陸地点からは無線で連絡する。」
 背中のパラシュートを後ろ手で叩き反対の手で胸ポケットに入れた無線機を指さしたがカリードはインストラクターを安心させられなかったようだ。
「社長、パルミラである、と確信できない場所でその無線機を使ったらフォドラ側の国境警備隊に捕まります」
「なんだ、経済封鎖されてる割にレーダーなんか使ってるのか?落下しちまった用のパラシュートだって背負ってるしトータルの飛行時間も短くない。だからそんなに心配しないでくれよ」
 どうしてこんなに意地になっているのかカリード自身にも全く分からない。しかし鎧に足を乗せ離陸するよう合図を出すとおかしなテンションになっている人間の思惑を理解していない飛竜は嬉しそうに翼を広げた。
 飛竜の足が地面から離れる時はバランスを崩しやすいと言われる。先程のカリードは謙遜していたが忙しい身の上でありながら単独飛行時間は実際、かなり長く百時間は超えていた。手綱と鎧でさらに上昇するよう飛竜に命じるとお調子者な個体らしくぐんと高度を上げる。動物は人間の外見や身分を気にしない。他人からすれば孤独な時間かもしれないがカリードは空の上で自由を満喫していた。
 山頂すら足元になるほど高度を上げると西側にあるフォドラもよく見える。山頂付近は人の手が入らないせいか見事な森が広がっていた。きっと鹿や兎や狐が住んでいることだろう。しかし人間が豊かな自然の中に勝手に国境線を引いたせいで山頂付近を飛び回る野生の飛竜が誰かに騎乗されているものと誤解され撃墜される事故もあった。インストラクターの言う通り国境地帯に入り込むのを避けるため東に旋回しようと手綱を引いたその時カリード、いやクロードの運命を変える竜巻が山に襲いかかったのだった。

 フォドラ連邦とパルミラの国境線は自然物を基準としている。山の稜線が国境線だ。隣国の兵士や民間人が国境を越えることがないようにフォドラ連邦もパルミラもその手前二キロ地点に拠点と柵を作りそこには高圧電流を流していた。しかし野生動物が勝手に国境線を越えるように悪天候も双方に平等に影響を及ぼす。パルミラとの国境線であるフォドラの首飾り近辺で数日間に渡り発生した強風は人間の都合を嘲笑うかのように両国が作った柵をそれぞれ何キロにも渡って壊した。
 国境地帯の立哨は骨が折れる任務だ。パルミラの兵士と遭遇し運が悪ければ自分が戦端を開くことになる。ローレンツが肩に固定している無線機から雑音混じりの通信が入った。詰所の通信機器の調子が悪く近々修理用の部品が来ることになっている。
「こちらカッコー。フクロウ応答せよ」
「こちらフクロウ。電気柵の破損を現時点で四ヶ所確認。麓から工兵を派遣してもらう必要がある」
 ひどい雑音混じりであっても詰所に残っているヒルダがため息をつくのがわかった。悪天候で柵が破損するとそこから豊かな自然の恵みを狙って猟師たちが入り込む。フォドラ連邦は革命の波及を恐れられ正式に国交を結んでいるのは友好国であるブリギットと永世中立国であるダグザそれとモルフィスだけだ。輸入に頼ることはできず自給自足せねばならない。そんなわけで一攫千金を狙った猟師たちが国境を越えてしまうのだがパルミラ側の国境警備隊に捕まれば工作員扱いをされる。聴取は厳しく手荒いものとなるだろう。そこから自国民を守るのもローレンツたちの任務のひとつだ。
「こちらカッコー。了解した。先程気象部隊より本日は竜巻が発生するとの報告を受けた。迅速に帰還せよ」
「こちらフクロウ。了解した」
 この竜巻も近年の異常気象の影響だろうか。全ての破損箇所の確認は最終日である明日に持ち越すしかなさそうだった。
「マリアンヌさん、何か聞こえなかったか?」
 ローレンツが耳を澄ませたのでマリアンヌも息を止めあたりを伺う。木の枝が折れる音と複数の足音を聞いたマリアンヌの顔に一瞬迷いが生じた。
「詠唱する暇はない!」
 ローレンツの一喝でマリアンヌがローレンツと共に短銃を構えた瞬間、ボロボロの服を身につけ弓矢を持ったフォドラの猟師が駆け込んできた。銃声が聞こえると密猟しているのが明白になってしまうしその銃声をきっかけに戦闘が開始されかねないので彼らは密猟をする際、猟銃ではなく弓矢を使う。ローレンツとマリアンヌが身に纏っているフォドラ連邦国境警備隊の軍服を見て彼らの瞳が潤んだ。
「助けてください!鹿を追ってただけなんです!!」
 彼らの背後にはローレンツたちと同じく短銃を構えたパルミラ軍国境警備隊の兵士たちがいる。彼らが肩につけている無線機にも拠点からの通信が入った。国境警備の任に就く士官は隣国の言葉を習得していることが望ましい。ローレンツの階級章を確認したパルミラの兵士たちは拠点からの通信が傍受されることを一瞬躊躇した。
『こちらハト。オンドリ応答せよ』
『こちらオンドリ。西側からの侵入者を追跡中フォドラの兵士に見つかった』
『彼らは狩りをしていただけだ!密猟者はこちらで処罰する!』
「兵隊さん!助けてください!!お願いします!!」
『パルミラの密猟に対する罰などたかが知れている!強制収容所の悪名はパルミラにも知れ渡っているだろう?彼らをこちらに渡せ!』
『こちらハト。オンドリ、深追いせず帰還せよ。気象部隊からの報告によると竜巻が発生するらしい。繰り返す。深追いせず直ちに帰還せよ』
 目の前のパルミラ軍兵士及びパルミラ軍の拠点そしてローレンツによるパルミラ語の短く激しい言い争いは天気予報とローレンツの勝利に終わった。ここ数年は命がけで密猟をする者が増えている。三人の密猟者は涙を流してローレンツに感謝の言葉を述べたがローレンツは容赦せず拠点に彼らを連れ帰ると憲兵隊に彼らを引き渡した。
「お疲れ様でーす!」
 拠点に戻ると通信手をしていたヒルダが出迎えてくれた。マリアンヌの手を取りあと一日で村に戻れるよ!とはしゃいでいる。立哨の任務は二ヶ月交代で終わるまで山から降りられない。年頃の娘である二人はあれが欲しいこれが買いたいと盛り上がっていた。今回の任務があと一日早く始まり昨日終わっていたらローレンツの人生には何の変化も訪れなかっただろう。国が望み家が望み軍が望む人生を歩む。その身に紋章を宿す者たちに職業選択の自由はない。紋章の力は戦争の役にしか立たないからだ。七十年前の革命でローレンツたち紋章保持者の名誉が回復されたのも当初は戦力に乏しかった革命軍が貴重な戦力として迎え入れたからだ。戦功を立てささやかな恩賞を得た祖父母たちのおかげで幼い頃のローレンツは幸せに過ごしている。
 最終日の朝いつものように立哨の任についたローレンツは昨日と同じくマリアンヌと共に電気柵の破損箇所を見て回った。今は何の変哲もない山道に見えるがかつての戦闘の際に両軍共に地雷を大量に設置しているので目印がつけてあるところ以外はまともに歩けない、そんな区域をチェックしている。数度の危機を乗り越えようやく安全な区域にたどり着いた時に呻き声が聞こえたような気がしてローレンツは辺りを見回した。口の前に人差し指を当てハンドサインでマリアンヌに指示を出し左右に分かれて走り出す。単独行動をとって数分後、ローレンツは小さな小川沿いに生えているやたら大きな木に破れたパラシュートと怪我人が引っかかっているのを見つけた。近頃の悪天候を受けパラシュート部隊も飛竜の部隊も訓練を実施していない。どうしてよりによって最終日にこんな揉めごとが起きるのか。村に戻れば取っておきの茶葉が自分を待っていると言うのに。
『降りろ!』
 肌が少し浅黒いのでパルミラ語で話しかけてみるとローレンツの声に反応し瞼が上がった。パルミラ人ならば工作員の可能性がある。しかし瞼の下から現れた瞳は美しい緑色だった。彼は一体、どこの何者なのだろうか。我に返った怪我人は辺りを見回し息を呑んだ。ロープで辛うじてぶら下がっていることとローレンツが銃を構えていることが分かったからだろう。
『おいおい、俺は目が緑だけどフォドラ人じゃあないぜ』
 ローレンツは今、深緑色をベースとした迷彩柄の戦闘服に身を包んでいる。軍装の色合いはフォドラ軍もパルミラ軍も変わりがない。緑深い山の中で任務にあたるとどうしても似通ってくるものだ。興味のない者からは見分けがつかないだろう。
『誤解しているようだがここはフォドラだ』
「何を言ってるんだ?俺の飛竜はきちんと東に旋回した!!そっちこそパルミラ側に入り込んでるんじゃないだろうなあ?」
「む……フォドラ語が話せるのか?」
「ああ、お袋が白フォドラ人でね。一応、セイロス正教の洗礼も受けてるぜ。堅信礼以来教会には行ってないがな」
 男はローレンツに言い聞かせるためなのかフォドラ語で話しかけてきた。セイロス正教は長いフォドラの歴史の中で唯一、大帝と称されるエーデルガルト一世を開祖とする。七十年前に国を捨てた者の子孫と七十年前に名誉を回復された者の子孫が実に奇妙な形で再会していた。
「そうか。君は飛竜に乗っていたらしいがその飛竜はどこにいる?」
「分からない。ひどい竜巻だった。無事に竜舎まで飛べていると良いんだが」
 強風に煽られ飛竜から吹き飛ばされた男は木からぶら下がり銃を突きつけられているというのに飛竜の心配をしている。
「逃げるにしても僕に捕まえられるにしても降りねばならないのはわかるだろう!」
 大きな枝に引っかかっているカリードに銃口を向けたフォドラ兵の言うことを聞くのは癪だったが彼のいうことは正しい。そして彼の前で迂闊に無線を使ったら本国からの救助隊が迎撃される可能性がある。額から流れた血を黒いグローブ越しに拭うとカリードはバックルに手を掛けた。かなり高さがある。せっかく骨折していないのにこれで骨を折ってしまうかもしれない。
 全身が地面に叩きつけられるかと思ったが予想は裏切られた。カリードは銃を構えていたはずの兵士の上に乗っかっていてまるで彼を押し倒しているような状態になっている。飛び降りたカリードを受け止めた衝撃でヘルメットの中に押し込めていたのであろう彼の真っ直ぐな紫の髪がはみ出ていた。彼は魔法職採用なのだろう。魔法の力は髪に宿ることが多いので伸ばしている者が多い。
「忌々しい……!頭を打つところだった!」
「助けてくれたのか?!」
「死体は尋問出来ないからな!」
 反射的に憎まれ口を叩く唇は薄く肌は真っ白で睨みつけてくるアメジストのような瞳が美しい。肌が白く瞳と鮮やかな髪の色がお揃い、という典型的なフォドラの美丈夫だ。来年の新作にアメジストやバイオレットサファイアそれにタンザナイトを使うのはどうだろうか?カリードは一瞬そんなことを考えた。
 フォドラでは昔から全く同性愛が禁忌ではない。エーデルガルト大帝も師であり戦友であった女性と結婚している。同性愛は禁忌ではないが名前も知らない相手の唇を同意もなく奪うのは禁忌だ。カリードは大袈裟な音を立てて組み敷いた軍人の唇を奪い彼が呆気に取られて固まっている隙にマジックテープで肩に固定されている軍用の無線機を外して当てずっぽうに放り投げた。
「いや、本当に残念だ。顔はものすごく好みなのに」
 無線機は軍からの支給品であり何かあった時の生命線なので絶対に拾いにいかねばならない。自分の唇を奪ったパルミラの男がローレンツの頭をヘルメット越しにぐいっと掴んで無線機の方に向けた。今自分が放り投げた無線機を拾いに行けということなのだろう。唇を奪われたことも無線機を奪われたことも悔しいが行動を操られることこそが最も屈辱に感じる。ローレンツは身体を捩ってなんとか起きあがろうと努力したがパルミラからの侵入者は体運びが上手いらしい。頭突きでもしてやろうかと腹筋と首に力を入れた瞬間、押さえつけられ通しだった身体が急に軽くなった。慌てて無線機を拾い先程、ローレンツがやってきた方角とは真逆の方へ走り去ろうとしていた緑の瞳の色男に後ろから飛びかかり羽交締めにする。
「そっちは地雷だらけだぞ!」
「どうせ逃さないための嘘だろ?国交が正常化したら続きしようぜ!」
 男がそう言うとローレンツの天地がひっくり返った。背負い投げをされたのだ。ローレンツには自分が大男だという自覚があるので内心では驚愕したが慌てて立ち上がる。だが侵入者を追いかけようと足を踏み出した瞬間、足元からカチッという今は一番聞きたくない音が聞こえた。少しでも動けば地雷に吹き飛ばされてしまう。
「あぁもう忌々しい!!いいか!分かれ道についたら看板通りに進め!二度とこちらに来るな!そしてこちらで見たものについて一言も話すな!」
 ローレンツの言葉が聞こえているのかいないのか一目散に逃げていく緑の瞳の男はよほど運がいいのか強風に背を押されながら地雷原を駆け抜けて行った。運が良ければ東側に到達するだろう。風は男の命を助けたパラシュートを巻き上げローレンツの管轄外へ運んでいく。自然は人間の思惑など全く考慮しない筈だがこの風は都合が良い。ローレンツがなかったことにすればおしまいだ。それに今日を逃せば工兵が破損箇所を修理してしまうだろう。
 ローレンツが必死で足元から意識を逸らし棒立ちになっているとマリアンヌからの通信が入った。急いでローレンツの元にやってきたマリアンヌは大きくため息をついた。爆発物処理を一度始めたらため息をつくこともできない。
「大丈夫ですか……?!ブリザーにしますか?」
「いや、フィンブルだ。迷惑をかけて申し訳ない」
 マリアンヌが呪文を詠唱し彼女の右手に魔法陣が浮かんだのを確認するとローレンツはポケットから小さなタオルを出して噛んだ。ローレンツが踏んだ古い地雷に向けて凝縮した氷魔法が放たれるが当然それだけでは済まない。地雷を踏んでいたローレンツの左足に激痛が走り地面に倒れ込んだ。我慢してもしきれない呻き声がでて涙がこぼれ落ちる。マリアンヌは氷に封じられ無力化された地雷を蹴って遠ざけると次にライブの呪文を唱え始めた。今度は白い光がローレンツの左足を包んでいく。
「ご無事でよかったです。詰所に帰りましょう」
 ローレンツはマリアンヌに礼を言い彼女に肩を借りながら軍用車両まで戻った。

 一方カリードは重大な選択を迫られていた。確かあの紫の瞳が美しいフォドラ兵は吐き捨てるように看板通りに進め、と言っていた。しかしその看板は強風で飛ばされてしまったらしい。パルミラに戻るには左右どちらの道を行けばいいのか。心細さと緊張で一歩も動けなくなる。闇雲に走ったせいかここがフォドラなのかパルミラなのか全く分からない。パルミラならば話は簡単だ。今すぐ無線機の電源を入れれば良い。きっとすぐに救助隊が駆けつけてくれる。だがここがもしフォドラなら敵国への違法な通信を試みた工作員として逮捕され強制収容所に送られてしまう。カリードはこれまでずっとビジネスにおいて自分の勘に従ってきた。失敗しても自分のせいで誰も恨まずに済む。カリードは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「右に行こう」
 この時、左の道を行けば彼の人生は変わることがなかっただろう。
 詰所に入る門、詰所から麓の村へ至る門にはそれぞれイグナーツとヒルダがいた。しかし通信機器の修理用部品が届きイグナーツが次に立哨を担当する部隊のため必死で修理していたこと、ヒルダが補給物資と共に届いた海軍にいる兄ホルストからの手紙を夢中になって読んでいたこともありカリードはフォドラ側に迷い込んでしまっている。必死で山道を降りていくと日が暮れて集落の灯りがカリードの目に飛び込んできた。あの光を目指せば明日には帰宅できるだろう。そう考えたカリードの歩みは自然と早くなったが集落に辿り着こうかという頃、急に灯りは消えた。たとえパルミラといえども山の中の寒村だからインフラが心許ないのだ、そう思いたかったが褐色の背中を冷や汗が辿っていく。再び灯は点ったが照らしているのはフォドラ語の看板だった。強きフォドラ、革命万歳、などフォドラ連邦のスローガンがビビッドなカラーリングで書かれている。
 とにかく今晩の夜露をしのぐところを見つけねばならない。この集落は留守にしている家が何軒かあるようなのでそのどれかに忍び込みとりあえず水だけでも確保したい。屋台が数軒並ぶだけのささやかなメインストリートから少し離れた家の門扉に手を掛けた時、カリードの背後から聞き覚えのある声がした。
『そこで何をしている』
 振り向くと小川のそばで自分を抱き留めてくれたフォドラの美丈夫が買い物袋を持って立っていた。
頑張って!
応援してる!
待っている!いつまでも!
やっちゃいましょう!
大丈夫......!
そういうときもある!
行ける気がする!
落ち着けっ!
いつもありがとう!
きっとうまくいく!
大丈夫!
どんな道も正解だから
負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
明日はきっとよくなるよ
のんびり行こう!
人は変われる!
なるようになる!
頼む、続きが読みたい!
この本欲しすぎる
これ好き! 好きすぎる!
ありがとう、これで今日も生きていける
発想にすごく引き込まれた
いや、十分すごいよ!
ぐはっ😍
おお〜😲
うるる😭
なるほど
それいいね!
共感する
響くわ〜
マジ天使
天才!
エロい!
神降臨!
素敵
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きゅんとした
泣ける……
ぞくぞくした
いいね
待っている!いつまでも!
いつもありがとう!
わかる、わかるよ……
苦しいよね
悩むよね
確かにね
その通り!
もちろん!
激しく同意
わかりみがすごい
お前は俺か
そうかもしれない
大変だよね
うん、うん。
そうだね
そう思う
そうかも
それな
うるる😭
大丈夫......!
そういうときもある!
なるほど
共感する
大丈夫!
のんびり行こう!
泣ける……
おめでとう!
やったぜ!
やるじゃん!
エライ!
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おお〜😲
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