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フォローする aym 初心者です。色々とご容赦ください。
昔の書きかけ供養です「おかえりなさい、ご主人さま!」
「……は、」
大学から帰宅した俺は、玄関を開けるなり思考が停止した。
目の前にいるのは、小柄な一人の少年。青みがかった黒髪に、深い藍色の大きな瞳。すべすべとした白い肌。それを覆う灰色のシンプルな浴衣。年齢は10歳くらいだろうか。その容姿も、声も、まだまだあどけない。
その見知らぬ少年が、なぜか俺の家の中にいて、「ご主人様」などと言ってきている。
「いやまてどういう状況なんだこれ」
混乱した頭のまま、思ったことをそのまま口に出す。
「ご主人さま?どうしたの?」
そんな俺の動揺を知ってか知らずか、目の前の少年はこてんと首をかしげると再び話しかけてきた。
「……」
バタン。
開けたばかりの玄関の扉を閉め、大きく深呼吸。
つい今しがた目にした光景は、一体何だったのか。
昨日レポートに追われて徹夜していたから、まだ寝惚けてるのか?幻でもみてるのか??
それにしてはやけにはっきりとしていたし、声もよく聴こえた……まさか、知らぬまに誘拐してきてしまったのか!?いやそんなばかなことはない。絶対にない。ということは、もしかして空き巣?誰かから脅されてやらされてるとか?いや、だったら家主が帰ってきて自ら出迎えるような真似はしないだろう。というか「ご主人様」って言っていたよなあの子。俺に対して「ご主人様」?あれはどういう意味なんだ。少年の使用人なんぞを雇った覚えももちろんない。そもそもここは狭くて安いただのアパートだ。そして俺は今年の春からずっと一人暮らしをしている。あの少年と出会った記憶は一ミリもない。彼が誰かと間違えているのか?それにしても「ご主人様」って……現代日本でその呼称を使っている幼い少年なんて、犯罪臭しかしないのだが。
ぐるぐると巡る思考を落ち着けようと、もう一度深く深呼吸する。
軽く自分の頬をペチペチと叩いて意識をはっきりさせると、ぎゅっと一度強く目を閉じて、再び目の前の扉を見つめた。
――いや、やっぱりさっき見たものは全て幻だったんだ。きっとそうだ。……そう思わないと、色々こわい。
ゆっくりと手をのばすと、微かに震える指でドアノブを掴む。
――大丈夫大丈夫。このドアをもう一度開けたら、きっといつも通りの我が家に――
「あっ、ご主人さま!さっきなんで急に閉めちゃったの!?ひどいじゃん!」
そこにいたのは、数十秒前と何も変わらない少年の姿。……いや、頬を膨らませて不満げにこちらを見上げる様は、先ほどとは異なっているが。
両腕を組んで仁王立ちし、ぷんぷん!という擬音が聞こえてきそうな様子の少年。
「……」
黙って再び扉を閉めようとする俺。
「まってまってまって!お願い、ぼくの話を聞いて、ご主人さま……!」
少年は慌てたようにこちらに駆け寄ってくると、しがみつくようにして俺の腕を掴んだ。
必死な口調と潤んだ瞳で懇願され、思わず動きが止まる。
「ねえ、おねがい、ごしゅじんさまぁ……っ!」
俺は、もう何も考えないことにした。
aymさんのやる気に変化が起きました!