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#文章修行
高間晴2年前ル・グウィン著の「文体の舵をとれ」を買ったので練習してみる第一章『自分の文のひびき』
問1「一段落~一ページで、声に出して読むための語りの文を書いてみよう」
 ※例:幽霊物語の山場
 ばりばり、ずるずる、ぐちゃぐちゃ。ありとあらゆる粘っこい音が鼓膜にこびりつく。その女が死体のはらわたを裂けた口で貪っている音だ。目から黒いヘドロのような涙を流しながら……。いや、それは涙ではないのかもしれない。怨念が形になって溢れてきたかのような、おどろおどろしい代物だった。あとからあとから流れ出てきて、とどまることを知らない。

問2「一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ描写してみよう」
 ハードケースの煙草からもう慣れた手付きで一本抜き取ると、口にくわえる。キーボードの傍にある使い古したジッポの蓋を開けると、親指でフリント・ホイールを鳴らして煙草に火を移す。煙を胸いっぱいに満たすと同時にジッポの蓋を閉めると、キン、と涼やかな音がした。度々感じることだが、それは喫煙に対する罪悪感を打ち消してくれるのだ。
なるほど