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転生系の小説に飽きた30半ばのヲタクOL。しかし突如現れた宇宙人よって全ての地球人が自分のステータスが見えて簡単な魔法が使えるように。でも彼女は明らかに高難易度の魔法が使える。必死に隠していたが宇宙人の1人に見つかった。「30半ばですよ?協力とか体力的に無理です」無事逃げきれるか?正直飽きていた。最近のラノベの転生もの。死んで生まれ変わったり過去に戻ったり、シチュエーションは違えど、やってることは一緒。まぁ、そういうのが求められる程度には現実が辛いってことなんだろうなぁ、と思うけれど、タイトルの長さ含めて辟易していた。私が読みたいのはそういうのじゃないのだ。
まぁ、そういう流行りが受け入れられないくらいには年齢を重ねてしまったというのもある。若くないのだ。私自身が。昔の王道のファンタジーを、ラノベなんて単語がまだ目新しい頃の世界を求めているのだ。情けないことである。
いつになったらこの転生ものの終わりがくるのか、そしてその後はどういうものが流行るのか。世紀末を生き延びてしまった私には何ともいえない虚無感だけがあった。あのギラギラした世紀末を、どこかで焦がれている。
ライトにヲタクを続けながらそんな日々を淡々と送っている、はずだったのだ。

『ハローハロー、聞こえているかしら』
少し機械がかった声が急に聞こえたのは、ポカポカ陽気があっという間に終わって既に暑さが見え隠れしている日だった。最初は誰かがラジオかパソコンかスマホか、とにかく何かの音量を切っていないのだと思った。けれど、それはおかしい。まだ出勤時間より早い今、オフィスにいるのはほんの数人で、わざわざそんなことをしてしまうようなタイプの子たちではない。実際彼女たちも困っていた。
「え、何?水口さん何かしましたか?」
戸惑った後輩の笹野さんが問いかけてくる。
「わからない。私も急に聞こえて……」
『あら、割と戸惑ってる人多いわね。無視してる人もいるけど。まぁいいわ。最初のコンタクトだし』
また同じ声が聞こえた。間違いなくそれは、普通じゃない状況だった。
『私たちはね、あなた達が言うところの宇宙人とか異星人とか、ざっくり言うとそんな感じの生き物よ』
声が出ない。意味が分からなすぎて、思考が止まる。宇宙人?異星人?何の話だ。
『急に言われてもびっくりするわよね。あ、安心して。これ地球の全部の人間に聞こえるようにしてるし、言語もちゃんとその人に合ったものに変換されてるから。それくらいの技術はあるのよ』
多分、これを1人の時に聞いていたら発狂していたかもしれない。訳が分からなすぎる。何を言っているのか、そもそも何故そんなことになっているのか理解不能である。
『私たちはね、ある程度文明が進んだら、干渉するようにしている、ある程度権限を持っているチームなの。で、地球も問題はまだいっぱいあるけどいいかなぁって話になって今日登場してみました』
同僚も後輩もキャパオーバーしている。こんなの小説でもなかなかない現実の中での展開だ。転生する以前に変なことが起きている。
『とりあえず今あなたたちの潜在能力を表に出せるようにしたわ。魔法みたいなものが使えるようになったの。とは言っても、今の地球人レベルだと、せいぜい微風起こせるとか、水滴垂らせるとか、ちょっと光を出せる程度なんだけどね。』
SFどころかファンタジーまで追加でやってきた。いや、最初からファンタジーか?そもそもファンタジーに分類してもいいのか?そんな思考に陥るくらいには混乱していた。
『あと数分もしたら自分のレベルが見えるようになるわ。で、悪いんだけど、力のレベルが10以上の子は危険だからちょっとお呼び出しさせてもらうわ。よろしく。まぁ、いても全世界で数人いるかいないかだと思うけどね、この分だと』
言いようのない恐怖が襲った。お呼び出しの先にあるものが全く見えないし、個人の資質の判定基準がわからない。
そして次の瞬間、私は自分のレベルが表示された。
「……は?」
そこには文字化けしたような数値があった。横を見ると、他の人には見えていないようで、見えた子たちが安堵の表情を浮かべている。つまり、高くなかったという事だ。改めて自分のを見る。カンストした感じだ。たくさん特殊技能が書かれている。その中に〈秘匿〉〈偽証〉という単語を見つけた。呪文の使い方なんてわからないが、念じた。〈秘匿〉で私のレベルをすべての人から隠して、と。そして〈偽証〉でレベル2くらいにしておいて、と。
『うーん、やっぱり10はいないわね。一番は8だけど、無害そうなというか、手を出しにくい人が8だわ。これは置いておきましょう。大丈夫そうね。じゃぁまた来るわ。基本的にレベルが上がることはないから安心してね、バイバーイ』
それで音声は終わった。
職場は謎の緊張感で溢れていた。
「笹野さん、大丈夫?」
「え、あ、はい。ありがとうございます。私レベル1でした。微風起こせるみたいです。ちょっと笑っちゃいますね」
その言葉を聞いて少し空気が緩んだ。どうやらみんな自分のレベルや、何が出来るかについて探っていたようだ。笹野さんが良い子で良かった。
「さ、わけわかんない状況だけど始業時間になるから、とりあえずは仕事しましょう」
いつの間にか出社していた部長が声をかける。これも助かった。他の人に何が使えるとかレベルがいくつだとか、とりあえず聞かれずにすむ。お昼休みまではどうにか持つだろう。それから、魔法だかなんだか知らないが、さっき使ったものをいつまで継続出来るのかもこの仕事中に見極めるしかない。多分、見つかるとヤバい。さっきの声の持ち主が、どこまで監視をし続けているのかもわからないし、冗談じゃない。
今は、この瞬間を乗り切って家に帰るまでがノルマだ。やり切って、帰宅してから細かいことは考えることにした。
この本欲しすぎる