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kashi_wame7/27 23:38天の華地の風の孔明がロマサガ2コウメイに転生した話6。元の小説はBLものだけど、そういう要素無しで本編は走りきりたい。少なくとも、ここ以降は。
どんどん長くなっていく…。どうしても、「笑止!」やりたかった。
#蟻の軍隊
コウメイの見た目でざわついたものの、概ね宣言の儀は恙無く終わった。

続いて開かれた軍議の場にて、ヒッポリュテー皇帝が、親征選出のメンバー候補を議論に上げる。
ヒッポリュテーの指名は、フランクリン、モウトク、サファイア、そして、フリーメイジから1名。

やはりか…。コウメイは心の内につぶやいた。
メンバーにコウメイが入らないのも、仕方がないといえば仕方ない。確かにコウメイは若き天術部門のトップであり、術軍部も牛耳る軍務のほぼ頂点である。無論、そこに上り詰めるだけの実力を有している。親征メンバーとしても申し分ないのだが…。
実は、コウメイには『前線軍師クラスとしては今ひとつ』という烙印もあるのだ。
一つは、水術の実力。軍師クラスはそれまで皆、天術を含む3系統の術を、術士としても上位の性能で使いこなしていた。だが、コウメイの水術の能力は、同クラスのモウトクに明らかに劣っていた。
もうひとつは、武器の扱い適正の異常な低さ。実は、コウキン以降、術士といえどもなんらかの系統の武器の扱いに適正があった。ハクゲンは斬撃系の武器の扱い上手であったし、モウトクは弓の扱いに長けている。コウメイにはそれが無い。そして、さらに、コウメイは、軍師クラスとしても体力が無い方なのだ。
加えて、軍師クラス内での出征メンバーの序列というものが、内々に存在する。序列では、ハクゲン、モウトク、それからコウメイなのだ。老齢のハクゲンはともかくとしても、モウトクを何の理由もなく飛ばしてコウメイというのは、いかにも体面上溝をうみやすい。

だからといって、コウメイは、大人しく引き退る気は毛頭無い。

「陛下。此度の親征、モウトクが代わりに私では不足でございましょうか。」
「コウメイ。いや、不足というわけではないが。ただ、直接の戦闘となった時の打たれ強さはモウトクの方が分があろうし、それに…軍師クラス内の序列もあろうし、な。」
「面目を優先している場合ではございませんでしょうに。相手は、復活したクジンシー、そして、おそらく時と共に力を増しているだろうノエル、そして、今度こそ一切手を抜けない七英雄でございましょう。」
「ふむ。」
「まず、集結した時の七英雄は事前の情報が少なくございます。戦況把握と戦術的判断は、遠方のこのアバロンからでは、私といえども不可能でございますゆえ、直接赴き、戦に参加する方が良いかと愚行してございます。」
「コウメイ、それは、モウトクだと七英雄戦には不足と暗に言っているように聞こえるのだが…。」
「俺にもそう聞こえたな。コウメイ。」
挟んできたのは、軍師モウトク。
「水術系統は補助も多いからな。大きく性能の上下は出ないとはいえ、俺より劣っているのは明らかだし、現場判断って意味では、そもそもその場に耐えて立っている体力も必要だろうよ。研究屋の頭でっかちは篭っていれば良いとおもうんだがな。」
「では、モウトク殿より現場の戦力になると証明して見せればよろしいでしょうか。」
「は?」
涼しい顔でさらにモウトクに挑発的な言葉を並べるコウメイ。怒りもあるが同時に呆れるモウトク。
「…コウメイ。其方、随分と今回は強引だな。」
「あらかじめ十分な情報と備えがあれば、このアバロンにて策を授け、待つだけでも良いのですが…。」
「今回は敵を見てからでないと判断がつかないから、という事か。」
「はい。」
「それでも勝ちやすいように、バランスの良い俺が行った方が良いっていうのが陛下のご判断だろう。」
「その件に関しても、ひとつ訂正が。確かに私個人の性能バランスはかなり偏りがございますが、それは勝ちに繋がりやすいかどうかとは無縁のこと。勝ちやすいかどうかで語れば、私自身出向く十分な資質があると自負してございます。しかし、斯様なことを机上で申し上げても、結局どなたも納得されますまい。」
「それで、さっきの其方の『証明すれば良いか』になるということか。」
「はい。」
「ふむ…。では、アバロン新市街で模擬戦と術演舞でもしてもらうか。どうだ?モウトク、コウメイ。」
「俺は問題ない。」
「モウトク殿にも納得頂ける内容なら、何も異論ございません。」
「では、これは後日…いや、いっそ明日、模擬戦と術演舞の場を設けるという事にしよう。それで、この場は終わりで良いな。」
「はい。」
続いて、フリーメイジ選出をすべく、アルゴルに向き直るヒッポリュテー。
「では、もう一件、アルゴル様…アルゴル。その方の推挙でフリーメイジクラスよりお願いしたいのだが。」
「主に地術による支援ですな。」
「うむ。それと、状況に応じて標的周辺のモンスターを散らす事ができれば、なお良いのだが。」
「散らす事も視野に、でございますか…今なら、リリィであろうかの。地術の操術面であの者の右にでるメイジはおりませんぞ。」
「リリィか。大丈夫か?」
「ほ。ほ。ほ。我らフリーメイジの最大の経験は操術でございます。何より、術士としての才覚はこのアルゴルより上。陛下のそばで支援するに申し分ございませんよ。」
「ふむ。術軍部としての意見はどうだ?コウメイ。」
術軍部のトップでもあるコウメイは、当然、全術師の術の技量を把握している。一応、データ化して必要な者どうしで共有もしている。ただし、『今の』コウメイ自身以外は、であるが。
「決戦においては威力の高い術必要でしょう。で、あるなら最適かと。」
「ならば、決まりだな。明日、モウトクとコウメイの模擬戦終わり次第、各出征者に声を掛けに行く。予め準備しておくよう、各人段取りを頼む。」
『承知いたしました。』

かくして、最後のバレンヌ帝国皇帝親征メンバーの議は終了した。

「びっくりしましたわ。最近のコウメイは強引だと思っていましたけど、ここまで押してくるとは、意外でした。」
「サファイア様…それだけ、此度はどうしても自ら出向く必要があるのです。」
「ふぅん。そういうものなのですね。」
「では、サファイア様。本日も、何卒。」
「良いですわよ。…でも、そうかしこまらなくても良いのに。」
どうでも良いが、コウメイに女っ気が無いというのは誰もが知っている。ただし、サファイアも男っ気が無いのも誰もが知るところであり、2人の性格から絶対に男女の仲にならない事も、公認レベルの事だった。

翌日。

「では、これより模擬戦をおこなう。」
言われて、モウトクは長弓に手を掛ける。対するコウメイは…おおよその予想通り、小剣。
ちなみに模擬戦は、攻撃術の利用は禁止されている。下級術士のファイアボールでも人ひとり消し飛びかねないのに、術士上級の軍師クラスが使えば、即、阿鼻叫喚の地獄になりかねない。呪も術名も口にせず、属性の力を借りない術の力そのものを飛ばす事で模擬戦を成立させる。
ただ、術力そのものを飛ばす方法だと、術士としての判断には乏しい。そこで、術演舞という、いわば術のデモンストレーションを見せる事で、術士の力を見極めるのだ。
今回模擬戦の審判は、今回はヒッポリュテー皇帝自らが行う。自らの親征のメンバーなのだから、近くで見たいのもむべなるかな。皇帝自身も滅法強いうえ、今回は、特に片方は非力なコウメイなのだから、さしたる危険は無い。

ヒッポリュテーが手を上げ、今まさに合図をおくろうとしたその時ーー。
「陛下!お逃げください!!」
シティシーフのスパローが血相変えて走ってくる。
「陛下…うっ、うぐ」
「スパロー!?」
苦悶の声を上げるスパロー。同時に異形の姿に変貌していく。その姿は、かつてサバンナ地方の民を、モール族を、苦しめたターム。集まった者一同に緊張が走る。
「気遅れるでない!スパローはまだ治療可能だ!今すぐこの蟻をおとせ!!」
「この蟻めが!覚悟せよ!」
檄を飛ばすコウメイ。ヒッポリュテーが吠え、皇帝の剣・ムーンライトを構えた時ーー。
「黒点破!!」
「!?」
皇帝の後ろから放たれた黒竜がタームを襲い、霧散させる。後には気を失い倒れているスパロー。
「…。この判断の速さと言うか、容赦のなさよな…。」
ヒッポリュテーが若干引いている。コウメイが気を失ったスパローに近寄り容体を確認する。どうやら、人間の中に寄生してはいないようだ。蚊のように、近くの人間の肌を介して生気を吸い取るものだろう。
「月光。」
コウメイが唱えた天術・月光でスパローに生気が戻る。これで、ひとまずスパローは安心だろう。
ところで、黒点破を放った人物だが…
「陛下、ご無事で?」
宮廷魔術士・サファイア。火術の扱いを得意とする術研火術部門のトップ。今の黒点破も火術である。
「うむ。助かったぞ。サファイア。」
ヒッポリュテーは礼を述べ、軽く息を整え、コウメイに声をかける。
「…コウメイ、頼むぞ。」
「御意。」
「非常事態である!皇帝の名において命ずる!総員、今は術軍部門長コウメイの命に従って、場をおさめよ!」

「ハクゲン様は、何処!!」
コウメイは、軍師クラスのなかで最も古参の者の名を呼ぶ。ハクゲンの人格もあるが、急拵えの統率部隊の編成となると、古参の者の下の方が纏まりやすいだろうという判断だ。
と、同時に、聞こえてくる悲鳴などから、発生源を突き止めにかかる。
まずいな…。
内心舌打ちする。発生源の推測からすると、既に中心地近くにも大量発生している可能性が高い。
物理職系を中心に振れば、近づいた隙を狙われかねず、被害が拡大するおそれがある。かといって、術士もまじるなら、タイミングをうまくはかって指示を出す指揮官が必要だ。この新市街領域にも1人、中心地領域にも1人…。
「コウメイ!」
見ればそこに走って近寄ってくる白髪の軍師の姿。ハクゲンである。彼も今日、立ち会いのため、市街地に出向いていたのだった。
「ハクゲン様。申し訳ございませんが、急ぎ、中心街の指揮をお願いできませぬか?」
「承知した。術士を4ほど借りるぞ。」
「はい。ポラリス殿、カノープス殿、リリィ殿、アイリス殿はハクゲン様に従い、中心街のタームを足止めせよ。数は多いが、徒党を組んではいないゆえ、土術・足がらめに容易く惑うはず。それと…重装歩兵・インペリアルガードの者も、ハクゲン様についていかれよ!足止めされた蟻を落とすのだ!むやみに近づくでないぞ!」
ハクゲンの部隊編成をおおよそ終えて、コウメイはアルゴルへ向きを変える。
「アルゴル様、老骨に鞭打つようで申し訳ございませんが、ハクゲン様と共に、お願いできますか?」
「ほ。ほ。ほ。水術での後方支援と回復じゃな。」
「それと、必要ならば、ストーンシャワーでの一掃を。お願いします。」
土術・ストーンシャワーは威力が高い上にかなりの無差別攻撃術。こんなものを中心街でむやみに使えば、民の恐怖心を無闇に煽りかねないが、今回はそうも言ってられない。であるなら、使う事を前提にし、術研長という看板を使う事で、幾分和らげようという話である。
「ほ。ほ。承知。」
「ありがとうございます。あとは…」
ずっと近くで様子を窺っているモウトクへ身体を向けるコウメイ。
「モウトク殿、少しの間、新市街の指揮をお願いできませぬか。」
「いや。」
「え。」
「発生源を断ちたいって話だろう?だが、新市街戦の体制が整ってからでも、断ちに行くのは遅くはないだろうよ。それに、ここの連中は皆戦慣れしている。今いまの一波をやり過ごせれば、自分達で立て直せるだろう。」
「なるほど。」
些か焦りすぎていたか?コウメイは少し苦笑する。それもすぐ直し、声を上げる。
「…では、新市街に残っている者で、この領域のタームを殲滅するぞ!遠隔より攻撃できるものは、なるべくタームから離れて応戦せよ!此奴らは、人間の身体より生気を吸い取り、成長する!猟兵陣は、足止めと即死に分かれて臨め!近づきすぎれば、自らも蟻に侵されかねない事を肝に銘じよ!」

その後もいくつか指示を飛ばし、戦況を眺めるコウメイ。
概ねタームとの戦いにも慣れ、必勝の形が馴染んだ頃合いを見計らい、ヒッポリュテーに申し出る。
「…では、陛下。今よりタームの出処を断ちに出ます。」
「良いぞ。参ろうか。行くのは…私とコウメイと…。」
「モウトク殿、ご一緒願えますか。」
「ああ、当たり前だ。お前がやたらと強気な事言ってた理由がわかるかもしれねえからな。」
「では、モウトクもか。…やや、心もとないな。」
正直な感想だ。とはいえ、戦士、術士ともに、中心地・新市街に人数を割いているのだから、補填のしようが無い。
「では…テイワ殿!」
コウメイは、ちょうど武器を納品しにアバロンに赴いていたテイワに声をかける。
「おう。早速使うか。」
言いながら、コウメイに『それ』を手渡す。
「納品の礼を欠くこと申し訳ない。正式な返礼はまた後で行いますゆえ。」
「まあ、仕方ない。状況が状況だからな。」
と、サバサバとした口調で返し、近場の蟻を遠隔攻撃技・ヨーヨーで散らしていくテイワ。
「それと…サファイア様。」
「…なんだ。」
低めの声で返すサファイア。戦闘モードの彼女の言い方はこういう感じなのだ。内容よりも、言い方が、聞くものの背筋を凍らせる。とにかく怖い。抑揚が無いとか冷淡な声とかいうのではない。単純に、抗いがたい、直接本能に訴える恐ろしさなのだ。これは別にコウメイだけが感じる恐ろしさではない。隣のモウトクの額にも冷や汗がみえている。
コウメイは内心たじろぎながらも平静の声を作り、呪を口にする。
「!!」
その意味がわかったサファイアが驚愕の表情を浮かべる。構わずコウメイはサファイアに術を掛ける。
「リヴァイヴァ。」
「…なるほど。これなら十分留守を預かれる。」
どうにも不穏な笑みを浮かべるサファイア。彼女にとっては普通なのだろうが…やっぱり怖い。
「…では、参りましょう。」
絶対に声が裏返らないよう、落ち着いた声を作り、一言一言、丁寧に言葉を紡ぎ、コウメイは一同の前を歩み始めた。

地下墓地の道中、モウトクはコウメイへ尋ねる。
「コウメイ。確認だ。お前さっき使った術はなんだ。」
「…ちょっとした火術ですよ。」
後の反応を予測し、面倒臭そうにコウメイは答える。
「はぁ!?あれが『ちょっとした』だと?見たこと無い術だが、あれは気絶回復みたいな術だろう?」
「もう少し正確には、気絶するほどのダメージを受けたら、体力全快の状態に戻す術です。」
『ごめんちょっと何言ってるかワカラナイ。』
見事に皇帝とモウトクの声が重なる。
術研究所は、バレンヌ帝国麾下の戦士・術士が使える術を伝える機関でもある。だが、コウメイが使った術・リヴァイヴァは伝える対象に入っていない。入るわけがないのだ。つい先程まで、実際に使った者がいなかったのだから。そんな術をコウメイがいきなり扱えたということは、コウメイ自身の火術を扱う水準が、バレンヌ帝国内でも圧倒的に群を抜いて高い事を示している。
驚くべき事はそれだけではない。
「そもそも、コウメイ、其方は水術使いではなかったか?」
今度はヒッポリュテーが問いを発する。少なくとも数日前まではコウメイは水術を扱っていたはず。そして、水術と火術は同時に扱う事ができない。
「…。水術は捨てました。火の術を…少し、勧められまして。」
「!!。なんとも…。」
なんとも…思い切った事をする。いくらコウメイが水術使いとしては一歩譲るとはいえ、それはあくまでトップレベルの話。回復分野においてはコウメイのレベルでも十分な水準だったはず。それを、コウメイは捨てたのだ!
事の大きさから、絶対に『少し勧められた』程度ではない確信があった事だろうとは推測がつく。だがそれでも、実際に捨ててしまえるかどうかは別問題だ。
「どうやら、私の適正は水術ではなかったようです。火術の『洗礼』を受けたら、先程の術も使えるようになっていました。」
とんでもない事をさらっと口にするコウメイ。
道理で、あの強気な会議の発言になるわけだ。モウトクは歯噛みする。
不意に、目の前に蟻が現れる。
タームバトラー。
「くそがっ!!」
弓の名手・モウトクが弓矢を番える。
モウトクとて軍師。どう攻めれば容易くタームを落とせるかも、よく理解している。視界に入ったタームバトラーに先制し、影矢で落とす。放った矢の影となる位置に、もう一本矢を忍ばせて撃ち、不意に急所に当てる技。
タームバトラーは強い。おそらくこのメンバーを何度も全滅に追いやれるほどに。だが、耐性把握が完璧な軍師モウトクの前では、あまりに無力であった。

数十分後ーー。

「モウトク殿。」
肩で息をするモウトクの後ろから呼びかける声がする。
「モウトク殿、交代いたしましょう。」
「ちっ。」
舌打ちするものの、技撃ちに限界がきている事を理解しているモウトクは、前線をコウメイに譲る。
「陛下、早速で申し訳ございませんが、水術・霧隠れをお願いできますか?群の中に入って蟻を散らしたいので。」
「うむ。良いだろう。」
霧隠れされるとコウメイに幼体が襲った時の対処がしづらい。だが、モウトクがほぼコウメイに集中するなら、蟻の動きで粗方コウメイの位置は推測できる。幼体のそれらしい動きも、十分目で追えるだろう。
ヒッポリュテーは呪を唱え、コウメイに術を掛ける。
「霧隠れ。」
術を掛けられ姿を眩ませた瞬間、コウメイは敵の群がる中に突っ込んでいく。
そして、唐突に。
「死の舞。」
蟻の中心で、突如、美しく残酷な死神が舞う。
先程テイワから受け取った斧で使える技・死の舞。舞を見たものをまとめて死の世界へ誘惑し、一振りで命を刈り取るとんでもない技である。出撃メンバー全員を何度も殺せる程の力を持つ蟻の群れが、一瞬で崩壊する。
コウメイはひとつの墓地の前に立ち、涼しげな顔をつくり、2人に声をかける。
「では、この先に行きましょう。」

墓地の中は、驚くべきことに、人が十分通れるほどの穴が掘られ、通路となっていた。
コウメイはこの地下の通路を歩きつつ、内心から湧き出る侮蔑の念を抑えきれずにいた。

かつて、コウメイは理想とする軍隊を、蟻の軍隊に重ねていた事がある。
号令一下うごく兵隊、戦う機械、統制された兵器。彼を知り己を知らば、百戦危うからず。彼を知らざるして己を知らば、一勝一負。軍とは、戦とは、そういうものだ。
だが、目の前の蟻は、ただの蟻であった。個としてはおそらく圧倒的に強いだろうはずの、だが、ただの蟻。統率者はいるだろうが、全くもって無惨に敗北を重ねるしかない、蟻の群れ。百万の蟻も、ただ集まるのみでは恐るるに足りず、軍のごとく機能があったとしても、揮うものが愚かであれば、その機能は無いと同じ。

その昔、来し方の世にて、見事なまでに美しく統制された、理想的な蟻のような軍を指揮し、コウメイーー当時の漢丞相・諸葛亮孔明を陥れた者がいた。
郭 棐妹(ふぇいめい)。
南蛮の王・孟獲の軍を纏める軍師を務めたこともあり、そして、事実上の孔明の妻でもあった。愛憎の炎に身を燃やされた彼女は、孔明と共に過ごした日々に得た知識と経験を活かし、魏延の軍を手玉にとり、孔明を捕え、死の淵まで追いやった。当時は孔明のアイディアを盗んでされた仕打ちに苛立ったものだが…。今となっては、棐妹の頭脳と行動力は称賛すべきものだとさえ思ってもいる。それに、コミュ障まっしぐらの孔明に、家族を与えてくれた女性なのだ。今更苛立ちはしない。

蟻の群れを見ていると、どうにもその思い出が蘇ってくる。そして、比べてしまう。
あの時の棐妹率いる孟獲の軍隊は、単独で見れば、決してあの時の我が隊と比べて強かった訳ではないはず。にもかかわらず、かくも苦しめた。なのに、今目の前の本物の、人を喰う蟻は、強大にも関わらずただ哀れに舞に惑わされ踏み躙られるだけの、蟻。

如何ともしがたく、無様だ。…私の前に、立つ資格など、ない!

地下通路の最深部と思しきところに近づいたとき、ヒッポリュテーが声を掛ける。
「コウメイ、少し動きすぎだ。代わりに舞おう。モウトク、代わりに霧隠れを頼む。」
気がつけば、コウメイは荒々しく肩で息をし、常ならぬほどの汗をかき、それを拭いもせずに立っていた。
涼しげに整った普段の見た目からは想像し難い姿ではあるが、疲れが現れた姿もまた一夜に咲き揺れる月見草が如く、たおやかで美しい。声にまで疲れが出るのが癪なので、少し息を整えてから、悠然と答える。
「それには及びません。…あちらの頭目が、お待ちかねのようですよ。」

歩みを進める一行の前に、女王蟻が現れる。
「サバンナではお世話になったわね。あの時皇帝に卵をひとつ、ひっつけておいたのよ。ここまでなるのに、どれだけ時間がかかったことか…。」
女王蟻は、瞳の奥に妖しい光を宿し、独白のようにも聞こえる言葉を放つ。その身体に殻にひびが入っていく。
「今からきっちりお返ししてあげるわ!」
蟻の殻を破り、艶かしい女性のような姿を表す蟻の女王・リアルクィーン。
その女性の面影に、僅かながら覚えがあるコウメイ。
「その姿、どうやって形作った?」
「うふふ。卵をつけた皇帝と、近くに居たものどもの、僅かな血や毛髪を。違和感を持たれないよう、少しずつね。刻まれた記憶を身体に混ぜているから、誰か愛おしい人間の雌に似て見えるかもね。」
どうりで…棐妹のようにも見えるわけだ。
モウトクも、困惑しているようだ。近しい誰かが見えているのだろう。
「…お返しをすると言ったな。笑止!」
コウメイは激昂し、小剣を構える。
少なくとも、棐妹は、斯様にみっともない姿形ではなかった。斯様に無様な策など立てなかった。私の…この臥龍の逆鱗に触れた事、後悔するが良い!!
「そうね。お返しなんて、そんな機会は無いけれど。貴方はここで討たれるのだから。」
ヒッポリュテー皇帝は、静かながら、あからさまな怒りを言葉に乗せる。
戦いの火蓋は切って落とされた。

先陣を切ったのはコウメイ。
我を忘れて、というわけではない。冷静に、正確に、フェイントをかけ足止めをする。
そして隙が出来たところに、後ろからヒッポリュテーが不動剣でダメージを入れていく。
「くっ…!!こんな、バカな!」
「麻痺か石化か…動きを封じて甚振る夢想でもしていたか?下劣な。」
言いながら再びフェイントを掛けるコウメイ。
コウメイ達がやっている事も、動きを封じて甚振っているような気がしなくもないが…。実際のところ、こちらは、これ以上一挙に落とす手段が乏しいのだ。最も動きが素早いコウメイがリアルクィーンの体勢を崩し、最強の攻撃をヒッポリュテーが入れる。いざというときはモウトクがサポートを入れる準備をしている。
「おのれ…おのれえええ!!!」
逆上した生物ほど手玉に取りやすいものはない。コウメイは当然のようにフェイントを決める。
「…うぬは、わらわを下劣と申したな。許さん!!」
言うがいなや、人の口では出せない音を発する。
超音波。
コウメイ、モウトク、ヒッポリュテーの聴覚を、平衡感覚を、狂わす。
今の一撃を放てるとは。不意打ち…というだけではないだろう。徐々にコウメイのフェイントにも慣れてきているという事だろう。
「ちっ!」
ふらつきつつも幻惑を絡めた攻撃で、コウメイはリアルクィーンの体勢を崩す。
「…おのれ!まだやるか!!」
今回はまだ効いたが、これに慣れるのも時間の問題だろう。
もう3回…いや、2回か。陛下も疲れと超音波の影響で連携もスムーズとは言えない。
「き、貴様ァアアア!!!」
うるさい。こんな蟻が少しでも棐妹に似ているのが、なんとも腹立たしい。
幻惑を絡め、もう一度小剣を振るコウメイ。なんとかタイミングを合わせて光速剣を放つヒッポリュテー。
リアルクィーンの外殻には、かなり傷が入り、血液らしきものも漏れ出ている。
かなりダメージが入っていると見て良いだろう。体勢を崩す方策も限界にきている。
ならば…
まだ、超音波の影響でクラクラするが、最低限の集中はできている。大丈夫だろう。
口の中で呪を唱え始めるコウメイ。
『!!』
ただならぬ術の気配を感じるモウトクとヒッポリュテー。
まだ耳の状態が十分治っていないため唱える言葉は聞こえないが、とにかく危ないという事だけはわかる。
「陛下!おさがりください!!」
身振り交えてヒッポリュテーを退がらせようとするモウトク。
2人が十分距離を取った事を確認したコウメイは、術を放つ。
「クリムゾンフレア。」
紅の熱線がリアルクィーンに集中していき、その身体を無慈悲に灼く。内部爆発が起こったかのような激しい音が轟き、後には、炭と成り果てた蟻の女王の形をした、何か。

戦の勝敗は決した。
頑張って!
応援してる!
待っている!いつまでも!
やっちゃいましょう!
大丈夫......!
そういうときもある!
行ける気がする!
落ち着けっ!
いつもありがとう!
きっとうまくいく!
大丈夫!
どんな道も正解だから
負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
明日はきっとよくなるよ
のんびり行こう!
人は変われる!
なるようになる!
頼む、続きが読みたい!
この本欲しすぎる
これ好き! 好きすぎる!
ありがとう、これで今日も生きていける
発想にすごく引き込まれた
いや、十分すごいよ!
ぐはっ😍
おお〜😲
うるる😭
なるほど
それいいね!
共感する
響くわ〜
マジ天使
天才!
エロい!
神降臨!
素敵
かわいい
きゅんとした
泣ける……
ぞくぞくした
いいね
待っている!いつまでも!
いつもありがとう!
わかる、わかるよ……
苦しいよね
悩むよね
確かにね
その通り!
もちろん!
激しく同意
わかりみがすごい
お前は俺か
そうかもしれない
大変だよね
うん、うん。
そうだね
そう思う
そうかも
それな
うるる😭
大丈夫......!
そういうときもある!
なるほど
共感する
大丈夫!
のんびり行こう!
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おめでとう!
やったぜ!
やるじゃん!
エライ!
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