タイムライン
すべて
男性向け
女性向け
その他一般
ログイン
こそフォロ
タイムライン
フォローリスト
ジャンル
すべて
男性向け
女性向け
その他一般
応援する
検索
新規投稿
投稿更新
お知らせ
応援が来ています!
111strokes111
7/10 8:05
#R18
#エロ記号としての
♡喘ぎ
#BL
#R18 #BL #エロ記号としての♡喘ぎ
表示する
頼む、続きが読みたい!
ぞくぞくした
頑張って!
ぞくぞくした
これ好き! 好きすぎる!
頼む、続きが読みたい!
発想にすごく引き込まれた
響くわ〜
うるる😭
泣ける……
この本欲しすぎる
うるる😭
泣ける……
これ好き! 好きすぎる!
#R18
#エロ記号としての
♡喘ぎ
#BL
これトータル16話13万文字の予定なんですが全然終わりが見えねえ。一文字ずつ積み上げていくしかねえ。
♡ついてると急に馬鹿みたいになって萎えるというご意見もありますがむしろ書いている側としては急転直下してくれないと困るのですり寄せって多分不可能なんだと思います!森とタタラ場で分かれて生きよう。
はしりがき
7/10 8:05
1.
途切れさせてはならぬ尊き血が流れているはずのカリードは暖炉の前に座りこみ冷めた灰を布を敷いた小さな籠に詰めていた。灰には様々な使い道がある。扉の向こうから彼に声をかける女官長がなるべく関わりたくないと考えていることは元から知っていた。後宮に君臨する王の母、つまりカリードの祖母が不出来な孫に興味を示すことなど殆どないが三つ編みを切り落とし成人するにあたって何か考えがあるのかもしれない。
「分かった。すぐに行く」
カリードも生まれたばかりの頃には雨のように尊い天の恵みと称されていたはずだが彼にはこう言う時に扉を開ける召使がいないので灰をすくっていた円匙を床に置きうっすらと灰がついた手で扉を開けた。女官長はすぐにカリードの手が汚れていることに気付いたが後宮で過ごした年月がそうさせるのか無表情を保っている。カリードは慌てて籠を持ち替え服の背中で手を拭いた。
王位を争う王子たちは後宮の後押しがある方が優位に立てるし王女たちの縁談を仕切るのも母后だ。女官長は見たものをそのまま母后に伝える。彼女の目は祖母の目と変わらない。それが皆分かっているので後宮の後押しが欲しい王子たちも少しでも良いところに嫁ぎたい王女たちもいつもとは違いカリードに何のちょっかいもかけてこない。地方の太守や属国の王たちから献上された壺や宝剣が飾られた長い廊下を女官長と共に歩いている時のカリードはいつも早く目的地に着くことができる。
女官長は扉を開けようとせず無言でカリードに手を差し出した。確かに手荷物を持ったまま母后に挨拶するわけにはいかない。カリードが素直に小さな籠を渡すとようやく彼女は扉のすぐ近くに控えているであろう召使に声をかけた。この後は祖母から許可が下りるまでカリードは面を上げることはできない。扉が内側から開かれカリードは掌を胸の前で合わせ頭を下げた。
「そろそろ三つ編みを切り落とすのだからいつまでも一人で居させるべきではないと思ってな」
母后に子供を作ることを許された王子は女性を充てがわれ後宮の外に自分の館を構えられる。お気に入りの王子であれば太守の娘や属国の姫が充てがわれるのが常だがカリードはそういう期待はしていない。おそらく奴隷市場で買った女奴隷を充てがわれるだろうが息が詰まるようなこの後宮から出ていけるならそれでも構わなかった。
「カリード、お前にサーキを与えよう」
祖母の言葉を聞いたカリードは頭を下げているのを良いことに思わず唾を飲み込んだ。祖母はどうやらカリードという不出来な枝を打ってしまうと決めたらしい。サーキ、つまり酒姫は女遊びに飽きた中年男などが女よりも好む小柄な少年だ。黒髪の巻毛、沈む夕陽に愛された証である褐色の滑らかな肌、黒目がちで幼く見える小柄な少年は奴隷市場では高値で取引されている。上手く訓練すればサーキとして売れるからだ。これまで自室でだけは寛いで過ごすことができたカリードだが今後は母后に与えられたサーキに監視されて暮らすことになるのだろう。
「お心遣い感謝いたします」
「顔を上げよ。祖母から孫への贈り物だ」
カリードが前を向くと祖母である母后は大きな羽根飾りのついた扇子で顔を隠した。お気に召さない孫の顔を直視したくないのだ。祖母と女官長の傍に陶器で出来た人形のような白い肌の青年が立っている。サーキと言えば小柄で細身であることが第一の条件だが彼は顔立ちが美しく細いもののずば抜けて手足が長くどう見てもカリードより背が高い。おそらくフォドラ出身なのだろう。頬の下あたりで短く整えられている真っ直ぐな髪は紫だった。後宮の教育係から顔をよく見せるようにと言われているのか真っ直ぐに前を向いている。泳ぐ彼の視線がカリードの緑の瞳を捉えた途端に目が大きく見開かれた。菫青石のような紫色の瞳に驚きと戸惑いと親しみが浮かぶ。カリードの瞳の色からその身に彼と同じフォドラの血が流れていることを悟ったのだ。だがあてにされても困る。こちらは血縁者から手の込んだ嫌がらせを受けているような立場でしかない。
「早く連れて帰れ」
本当に目をかけている孫ならばこんなことはしない。これが祖母の考えなのか女官たちの考えなのか他の異母兄弟の考えなのか今は調べる気も起きなかった。なんと手の込んだ嫌がらせをするのだろうか。侍らせるのに相応しくないからという理由で買われたこの大柄な青年はとことん運がない。再び頭を下げそのままカリードは買い与えられた青年を伴って祖母の部屋から退出した。扉が閉まればあの空間は笑い声で満ちるのだろう。
カリードにサーキとしてあてがわれた青年の最初の仕事は主人が部屋から退出する際に女官長から渡された中身のわからぬ小さな籠を手に持つことだった。カリードは小走りにも近い早足で歩いているのに青年は足が長いせいか全く遅れを取らずについてくる。とにかく彼の姿を後宮の他の者たちに見せたくなかった。長い廊下を何度も曲がり王子と呼ばれる立場であるにも関わらず自室の扉を自分で開ける姿を見て彼も自分の持ち主に難があると察したらしい。口は開かず目を開き紫色の瞳で己の主人をじっと見つめていた。
ローレンツを充てがわれた王子は使用人を側においていないらしい。褐色の手で自室の扉と窓掛を閉めると彼は壁を思いっきり殴った。ローレンツが見たところこの部屋には使用人や奴隷を脅し罰を与えるための鞭や棒、それに短弓がない。これはパルミラにおいてはかなり珍しいことだ。
何度も壁を殴った拳の皮膚は破れ血が滲んでいる。酷い辱めを受けたせいか緑色の瞳には拳が傷つく前から涙が滲んでいたが一般的に十代後半の男子は他人から泣いていると勘付かれたくはないものだ。ローレンツは書物や書き付けやよく分からない道具が広げられたままの机に何故か持たされていた小さな籠を置くと年長者として彼を労うためライブの呪文を唱えた。白い光が褐色の拳にまとわりつき傷を癒していく。パルミラの者は治癒魔法と縁が薄くローレンツを最初に買った奴隷商人の館で治癒魔法を使った際は騒ぎになってしまったが王子は特に驚いていない。
きっとフォドラに縁があるのだ。自分が充てがわれたことが泣くほど嫌だったようだしこれなら逃してくれる可能性がある。すっかり元通りになった褐色の指でそっと涙を拭うと王子は余裕のある態度を見せつけるためなのか絨毯の上に置いてある大きな座布団に背を預けローレンツを爪先から頭のてっぺんまで眺めた。品定めをしているつもりだろうがこちらもまたその姿を眺めることができる。フォドラならば美しさが讃えられるであろう緑の瞳はもう冷静さを取り戻しており何事も見逃すことはなさそうだ。黒い前髪で作った三つ編みを切り落としていないせいでかなり幼く見える。
「すまんが俺は楽にさせてもらう。名前は?」
少し厚い唇からはローレンツの予想通り綺麗なフォドラ語が飛び出した。国交はなくとも僅かながら人の行き来はある。おそらく母親がフォドラの出なのだろう。
「ローレンツだ」
「そうか。それならローレンツ、名字を名乗る立場ではなくなってからどれくらい経つ?」
盗賊に捕まって売り払われ奴隷となってからどれくらい経つのかとパルミラ語でローレンツに問うても当たり前の立場だというのに童顔の王子はフォドラ語で話しかけ婉曲表現まで使ってくれた。
「僕を逃してもらえないだろうか」
だから本音が口からこぼれ落ちてしまった。王命により外交文書を携えてフォドラの首飾りを越えたローレンツ一行は砂漠に慣れている隊商たちと共に王都を目指して砂漠を越えている最中、盗賊に襲われた。あの時からもう二年は経っている。
国交がない国における命がけの任務であったのでローレンツは故郷エドギアを離れる際、自分に何かあった時のため家が絶えぬよう次の嫡子を誰にするのかも含めて遺言を認め形見の品を両親に渡してあったから盗賊たちに命乞いをするつもりなど露ほどもなかった。
しかし彼らはローレンツに敵わないと知ると卑怯なことに人質を取ったのだ。よく分からない外国人の一行を快く迎え入れてくれた隊商の平民を助けるためローレンツは盗賊に投降するしかなかった。もしパルミラとフォドラに国交があったなら身代金のやり取りだけで話は終わっていたし今頃エドギアの館で両親と共に紅茶を楽しんでいたかもしれない。
だが事態は悪い方へ進みローレンツは身ぐるみを剥がされ身一つで奴隷商人に売られ流れ流れて皮肉なことに命がけで目指していた王都に辿り着いている。しかし今は逆だ。命がけでフォドラを、エドギアを目指している。もし後宮から脱走できたらまずは下町に潜り込んで薬師の真似事をして西に戻る船代を稼ぐつもりだった。
『質問に答えろ』
本音を言うべきではなかったのだろう。それまでローレンツを労うためにフォドラ語で話していた王子は残念ながら言葉をパルミラ語に切り替えてしまった。初対面の際に故郷のフォドラを見出し縋ってしまった緑の瞳が褐色の瞼に隠される。目を閉じてしまえば彼の見た目は純血のパルミラ人とそう変わらない。
『早く答えろ』
『……二年経った』
言い淀んだ際の表情の乱れを見逃すまいと思ったのか再び瞼が上がり緑の瞳がローレンツの顔を見つめた。だが先ほどとは違い冷たく射るような視線が向けられている。
『お前を逃してやっても間抜け扱いされ大柄なお前と仲睦まじく過ごしても趣味が悪いと馬鹿にされる』
それならば不快なものがひとつでも目の前から消え失せた方がまだましではないか、と先程ローレンツは判断したのだがどうやらフォドラの血を引く王子の考えは違うらしい。それとも一人ここに取り残されるのが嫌なのだろうか。そんな根拠のない考えが脳裏に浮かぶ。失言であったと今すぐに謝るべきかそのまま黙っているべきかローレンツが迷っていると王子は更に言葉を続けた。大きな座布団に背中を預けていたはずがいつの間にか身体を起こしている。
『俺がそんなお人好しに見えるか?』
『自分の評価は自分で決めるべきだ』
カリードは先ほどの質問に是と答えても否と答えても論破してやるつもりだったがローレンツは上手いこと逃れている。失言を聞いただけで愚か者であると判断しかけていたが咄嗟に言質を取られないような発言ができる程度の教育をどこかで受けていたらしい。
『服を脱げ。お前はずる賢くて信用ならない』
『身体なら後宮に入る時に検められた』
自分がどのような者であるのかは自分で決めるしかないと主張するローレンツは二年間苦汁を舐めても心が折れなかったのだろうか。それとも折れた心が時の流れに後押しされてより強く蘇ったのだろうか。彼に興味が湧いた。
『あいつらなんか信用ならない』
潔白さを示すと言ってわざわざカリードの目の前で口にした食べ物に毒が入っていたこともある。だから自ら検めるのであってこの行為にそれ以上の意味はない。
『では僕が清廉であることを証明してみせよう』
ローレンツは脱いだ上着を畳んでからカリードに寄越した。カリードが自分の着ていた服を検めている間に脱いでしまおうと思っているのか続けて白く長い指が襯衣の袖口を緩めていく。真っ白、というのが初対面で受けた印象なのだが手首の内側は顔よりも更に色が白い。続けて彼は襟元から一つずつ釦を外していった。男性の象徴とも言える喉仏が見える。肩幅も広いし男らしい体格をしている。彼の見た目で唯一サーキらしいところといえば髭や体毛が薄いところだろう。襯衣を脱ぐと傷跡だらけの体が現れた。白い肌の上に少し色が濃い無数の傷跡が走っている。
『下もだ』
一瞬、動きが止まったがそのうち隙を突いて脱走するとしても彼はまずカリードの信用を取り戻さねばならない。ローレンツは無言でサンダルの留め金を外した。基本剥き出しになっている足の甲も革帯で隠されている部分だけはやはり日に焼けておらず白い。
『その格好で逃げたらきっと目立つ』
『確かに』
『後ろを向け。身体の傷を全て確認したい』
パルミラ軍には買い上げられた奴隷だけで構成される部隊がある。ローレンツを買い取った奴隷商人は彼を王都で市に出した時その部隊に買い上げられると想定して鍛錬を許したのだろう。だから下帯だけという姿になっても傷跡だらけでも彼は堂々としていた。確かに見られても構わない引き締まった身体を維持できている。
『刀傷だな』
『盗賊と戦った時のものだろう』
だが背後に立つカリードが指で傷跡をそっとなぞっていくと初めてローレンツは身じろぎした。心なしか一瞬息も乱れたような気がする。
『市でお前を買ったのはどんな者だった?』
『僕を買ったのは女官長だが彼女が僕を選んだ訳ではない。僕を選んだのは連れの男で彼はナルデールと呼ばれていた』
ナルデールは父の側近であるナデルが本名を名乗りたくない時に使う偽名だ。護衛に向いた奴隷を選んでくれと嘘をつかれたのか彼も祖母の判断に賛同したのかは分からない。だがそれでもカリードの心を寂しさが締め付けた。ナデルは後宮も含めた王宮の中では珍しくどの王子にも肩入れせずカリードにも悪意を持っていない。だがこの事態に一枚噛んでいるならば彼も敵に回る可能性がある。
『そうか。お前はとことん不運らしい』
カリードの物覚えが良いこともローレンツの不運に含まれるだろう。どこを触った時に息が乱れたのかきちんと覚えている。背骨に沿うように下から上へと指でなぞるとその感触に耐えかねたのか白い身体が震えた。
『腕を上げろ』
がら空きになった脇腹を褐色の手で撫でると身体が小さく跳ねる。カリードは後ろからローレンツの下帯に手を侵入させた。同性相手にこんなことをするのは、しようと思ったのは生まれて初めてだ。
『僕が嫌だったのでは?』
『下帯の中は物が隠しやすいからな』
当てずっぽうで足の付け根を何度か摩り柔らかくまだ芯を持っていない物を掴む。カリードからは見えないがきっとここも色が淡いのだろう。思い通りに擦ってやるには下帯が邪魔だったので結び目を解いてしまった。白い布はローレンツの足首で留まっているものの絹で織った柔らかな絨毯の上に落ちたのでカリードの手を遮る物はもうない。思うままに刺激してやると先端から雫が溢れ出した。指の腹で雫を塗り広げてやるともっともっとと言わんばかりにカリードの手を濡らしてくる。
『大部屋にいて監視されてたならこんなことはできなかったんじゃないか?』
カリードが耳元に口を寄せて話しかけつつ左手の指で乳首の縁をなぞると与えられた刺激に耐えかねてローレンツの背中が反った。これが生来の反応なのか奴隷商人に仕込まれたからなのかは分からない。股間と同じく芯を持った部分を何度か指の腹で擦り軽くつまむ。
「ひ…ッ!そこは…っ♡やめ、あ、あ、あぁっ♡」
顔も見ず一方的に翻弄し揶揄っているつもりだった。ところが彼の吐息や我慢できずに漏れ出る甘い声に興奮したのかカリードも白い尻に固くなった股間を押し付けている。一生飼い殺しだと言われ壁を殴りつけるほど怒っていたはずなのにこの欲望は己の心のうちのどこから湧き上がったのだろう。
連中の思惑にはまる前に与えられたサーキから離れて冷静さを取り戻さねばならない。だが最近、暖かくなったからという理由で絨毯を絹製のものに変えていたのが良くなかった。絹で織った絨毯は羊毛で織った物と比べると繊細な模様を表現できる上に柔らかい。
それこそ裸で転がっても平気なほどに。
ローレンツがナルデールの名を出してから王子の様子がおかしくなった。それまでは来歴を探るために身体を検めていただけなのに指の動きに性的な意図が込められ始めたし押し付けられた物は固さが増している。に王子の指摘通り捕まってからの二年間そんなことを楽しむような気力も余裕もなかったのは確かだ。
商人というのはあらゆる可能性を考慮するが無駄なことはしない。ローレンツに奴隷が閨で求められること全般の才能がないとわかると彼らは仕様書にその旨を書き加えた。きちんと仕様書を取り交わすまともな商人の手に渡ってからは転売される度に繊細な部分を弄られ不愉快な思いをすることは減っていった。
だが女官長も母后も王子にローレンツの仕様書を渡していない。だからだろうか。今は久しぶりにそういう触られ方をしている。ローレンツは自分でも意外な物に耐えていた。嫌悪感ではなく快感だ。
この部屋の絨毯は絹で織られているせいか柔らかく上にいる者の身動きのせいで皺が寄ると色が変わる。絨毯は触り心地が良く膝をついても胸が擦れても痛くはなかった。今ローレンツは這いつくばったまま足を閉じ腰を高く上げるように命じられている。王子が豹変したのは何故なのか探るためローレンツは奴隷市場でのやりとりを思い出そうとしているのだが腰を鷲掴みにされながら彼の熱い物で会陰を擦られるたびに思考が途切れてしまう。
ナルデールはなんと耳打ちしたのか、そう、確か彼は悪意がきっかけであったとしても可能なら孤独な王子のーーになって欲しいと
汗をかいたせいで冷え切った白い背中に褐色の肌が触れる。近頃はだいぶ気温も上がってきたが身体を冷やしてしまうとローレンツは砂漠で負った古傷が痛むのだ。背中に与えられた温かさが心地よく王子はいつの間に服を脱いだのだろうかという疑問が熱で溶けてローレンツの心のうちから消えていく。閨で役に立つならもっと高値で売れるのに勿体ないと嘆いていたのは何人目の奴隷商人だったか。だが寒さや寂しさを解消するだけなら挿入などせずとも何とかなるらしい。先程から互いの放ったものが褐色の掌で混ざり合っている。
『顔が見たい。あの座布団の上に仰向けになれ』
腕に力が入らず絨毯の上に伏していたローレンツは言われるがままのろのろと身体を起こし先程王子が身体を預けていた大きな座布団の上に横たわった。ローレンツは彼が手を雑紙で拭っている間に息を整えようと思ったが再びすぐに抱きつかれてしまった。少し厚い唇がローレンツの口を吸い入り込んだ熱い舌が咥内を撫で回していく。顔を見たいと言っていたくせにこんなに密着していては無理な話ではなかろうか。少し厚い唇は喉や鎖骨など次々と愛でる場所を変えていく。今は先程も指で弄られた胸の頂を舌でねぶられていた。奴隷商人から触られた時は苦痛と屈辱しか感じなかった場所に新たな感覚が植え付けられていく。
「……っ!ふぁ……あぁ…ああっ…やらあぁッ♡」
盗賊から最初の奴隷商人へ売り払われた時、彼らもあからさまに毛色が違うローレンツをどんな用途で販売すべきか測りかねていた。その試行錯誤の一環で奴隷商人から身体の様々な部分を弄られた時には耐えがたい悪寒と痛みが走ったのみだった。だが今は不思議なことに嬌声が抑えられないし身体の奥が何かを求めている。
『そんな声出されると俺がすごく巧いような気がしてくるな……それともわざとか?』
「ちがっ……わざとなんかじゃ……ない」
王子はパルミラ語が咄嗟に出てこなかったローレンツの両膝を持って大きく脚を広げた。今日だけでも散々、破廉恥な行為に及んでいるのだが何もかもが顕になる格好をさせられていることが恥ずかしくてたまらない。脈打つもので後孔の縁をなぞるように丸く擦られたがやはり固く閉じている。
「ここに使う香油の好みを教えてくれ」
「特にないっ……それにこんなところにそんな大きい物は絶対入らない」
「サーキなのに嗜んでいないのか」
だが不思議なことにあてが外れたのであろう王子の声は怒っていない。このような触り合い程度なら許容できるとしても他人の排泄器官に大切なものを突っ込みたいと思う方が少数派なのだろう。例えサーキという存在がいる社会であっても山の東西でそこまで人間が変わるはずもない。
「はあっ……商人たちも僕には才能がないと言っていた」
「きっと見た目で決めたんだろう。あと一回出したら終わりにするから」
ローレンツは褐色の手に導かれるままに彼の脈打つものに白い手を添えた。若いせいなのかまだ勢いを保っている。かつては嫌で仕方なかった行為だが不思議と嫌悪感を覚えることはなかった。
頼む、続きが読みたい!
ぞくぞくした
頑張って!
ぞくぞくした
はしりがき
7/14 15:28
2.
結果として祖母の思惑に乗ってしまったカリードだが最後の一線は越えなかった。どこかに冷静な部分はまだ残っていて、だからローレンツの不運をそこで終わりにしてやれたのかもしれない。あれならまだ戯れで済ませられる。
ローレンツは今、カリードの目の前で身支度を整えている。先程己が汚した彼の白い身体は見れば見るほどサーキの理想からは程遠い。そしてこちらで苦海に身を落とす前はどんな格好をしていたのか分からないが少なくとも奴隷商人が彼に与えた服は肩周りが窮屈そうだ。
「何か持たされたか?」
「何も」
フォドラ語で話しかけてやるとローレンツもフォドラ語で答えた。奴隷は主人の許可なしに物品を所有することが許されていない。身体一つしか持っていないので食事も服も小物も主人が用意してやる必要がある。奴隷商人の中には買い上げた側の手間を省くため販売価格に着替えや小物の代金を上乗せして予め用意する者もいるがローレンツを扱っていた商人はそうではなかったようだ。後宮には外に行くことを禁じられた者たちのためにほぼ毎日商人がやってくる。たとえその日にやってきた商人が欲しいものを持っていなくとも伝えておけば翌日には連れ立ってやってくるのだ。
身請けされたサーキはとにかく豪華な上着や宝石で飾り立てられるものだがカリードには仕送りをしてくれる母方の親戚がいない。それでも個人的な召使を抱えていないので王子に支給される金子を多少は貯め込むこともできた。サーキを与えられたのはカリードに貯金を取り崩させる目的もあったのだろう。
対照的なのが昨年祖母から某太守の娘を充てがわれ後宮から出て行ったシャハドだ。彼の生母はパルミラの南にある属国の姫でパルミラ中に流通する砂糖はその属国の砂糖黍から出来ている。そんなわけで彼は非常に羽振りが良かった。王都近郊に構えた館も大きいらしいがカリードは招かれる理由がないので行ったことがない。
ローレンツはしゃがみ込んでサンダルの革帯を留めている。下を向いているので真っ直ぐな紫の髪が下りていて表情はよく見えない。
「そのうち一緒に商人のところへ行こう。俺にはなんだっけ……母親の家族」
「外戚のことだろうか」
「外戚か。外戚がいないから何でも買い放題とはいかんが二年ぶりの買い物を楽しめよ」
カリードがそういうとローレンツは顔を上げた。
「パルミラ人に慈悲の心があるとは知らなかった」
白い顔に浮かんでいるのは戸惑いで売り飛ばされて早々に身体を弄ばれた彼からすれば意外だったのだろう。
「俺を他の連中と一緒くたにしないでくれ。ついでに言っておくと俺と二人きりの時は今みたいなフォドラ語で話せ。丁寧語はよく分からない」
同じくカリードも己の口をついて出た言葉に戸惑いが隠せない。幼い頃から今に至るまで心のどこかには皆と同じでありたい、同化したいと言う思いがあったのに今、自分は彼らと自分を同類扱いするなとローレンツに言ったのだ。同類扱いされたことなどないのに。
「確かに失言だったかもしれないな」
紫色の瞳が素早く部屋を見回し視線はカリードの顔に戻ってくる。その瞳に久しぶりにフォドラ語で会話できた喜びはもう浮かんでいない。
「どうするのだ。平手打ちでもくれてやるのかい?」
瞳からは光が消え失せ二年間ローレンツがどんな暮らしをしていたのかよくわかった。カリードの頭に一瞬血が昇ったがそれはローレンツのせいではない。歪みを抱える自国の社会制度のせいだ。確かに他の王子や王女それに父の愛姫たちの部屋には鞭や棒それに短弓が置いてある。罰を与えると言って奴隷や召使たちを脅すためだ。この広大な後宮の中でその手のものがない部屋は二部屋しかない。カリードの母ティアナの部屋とここだ。
奴隷は主体性をとりあげられる。だが主体性のない人生を歩むのはカリードも同じだ。飼い殺されて腐っていくことに変わりはない。先程ローレンツは自分の評価は自分で決めるべきと言った。
「絶対にそんなことはしない」
紫の瞳に光が戻り瞬きに合わせて涙が一粒白い頰の上を滑っていく。
「見苦しいところを見せて申し訳ない」
「安心しただけだろう」
そういうとカリードは褐色の指でそっと涙を拭ってやった。再びローレンツの顔に戸惑いが浮かぶ。確かにこう言う時はそっと使っていない手巾を差し出した方がさまになる。
「手巾はあれに使っちまってな」
カリードは先程ローレンツに運ばせた小さな籠を指差した。籠に何も敷かずに灰を詰めると隙間からこぼれ落ちてしまう。
「一体何が入っているのだ?それと君、手巾くらい余計に用意しておきたまえよ。いつ必要になるか分からないのだから」
確かに自分にサーキが与えられその涙を拭うことになるとは考えもしなかった。昨晩見た夢より現実の方が遥かに起伏に富んでいる。
「部屋のどこかにはあるんだよ。後で探すのを手伝ってくれ。それよりもまずは母さんのところだな……」
本来ならばローレンツを伴ってすぐに母の元へ挨拶に行くべきだったがカリードが余計なことを治たせいで出遅れていた。
服の乱れを整えたローレンツは小さな籠の中身を知らない。サーキとは名ばかりで実際は侍者兼護衛兼相談役を務めることになる筈だ、とナルデールから言われているからには主人に荷物を持たせるわけにいかないのだがカリードが籠を手放さない。
二人連れ立ってカリードの母の部屋へ向かっている道すがらローレンツたちは大ぶりな紅玉を大胆にあしらった宝剣を腰から下げている王子に声をかけられた。背後に控える召使たちも宝剣と同じく母親の実家から贈られたものなのだろう。
「よお、カリード!その真っ白なのっぽがおばあさまから下賜されたサーキか?」
奴隷商人は女官長と顔見知りなのか彼女が若い娘ではなくローレンツを買うと知って焦っていた。相応しい場所に相応しい者を充てがわねば揉め事が起きるのだという。危惧していた通りのことが起きている。
「そうだ。急いでいるからその話は後にしてくれ」
カリードは面倒臭そうに返事をしたが当然、相手は食い下がってくる。継承者争いの候補のうち一人が脱落したも同然なので追い風に乗って更に痛めつけに来たのだ。
「ああ、早く挨拶させないとな。ところで味はどうだった?」
濃い茶色の瞳が無遠慮にローレンツの身体を舐め回していく。大柄で年上のローレンツはサーキの理想からは程遠い。そんな外れを掴まされたことを確認する視線には優位に立てた加虐的な喜びで満ちている。褐色の手が伸ばされ軽く抱きしめられた。気安い仲であれば挨拶に過ぎないが悪意があるとなれば目を閉じ息を止めて堪えるしかない。
「筋張っていて不味そうだが」
フォドラとパルミラは全く文化が違う。サーキは飾り立てられ詩で魅力を讃えられる存在だがその裏には放置され行き場のない怒りを抱えた正妻の姿と家の存続のためだけに生きよと命じられた男性たちの反抗心が潜んでいる。男性たちの無意識に潜む家制度への反抗心を損なわせるべくサーキという存在が生まれたのかもしれない。サーキが相手ならば子供は生まれず正妻は体面上、優位を保つことができる。制度を運用するのは人なので勿論例外はあり生涯仲睦まじく添い遂げる者たちもいる。だが主神ソティスの名においてセイロス教会が両者の愛を祝福するフォドラにおける同性婚とは大きく違うと言えるだろう。
「ああ、そうかい。報告書の代わりにこれをくれてやるよ!」
下品な言葉が鼓膜を叩くとカリードは躊躇なく籠の中身を一掴み異母兄だか異母弟の顔に叩きつけた。あれは目の中に入ったらひとたまりもない。一体、何を何のために持ち歩いているのか不思議だったがこれでローレンツも中身をようやく知ることができた。顔に灰を叩きつけられた王子は呻きながらしゃがみ込み目の痛みを堪えている。後ろに控えていた召使のうち一人は跪いて手巾で主人の目元を拭きもう一人は慌ててどこかに目を洗う水を取りに行った。召使ですら手巾を持ち歩いているというのに手元に手巾がないとは何たることか。
「カリード殿下、もうおやめ下さい!仮にも貴方の兄君ではありませんか!」
「確かに二ヶ月だけ早く生まれたな」
見下ろす緑の瞳が冷たく光っている。混血で後ろ盾のない王子は図太くなって生きていくしかない。
「行くぞ」
騒ぎを聞きつけた者たちの作る輪を壊しながらカリードとローレンツは再び長い廊下を歩き始めた。どんな立場なのか忘れさせまいと視線が刺さってくる。いくつか角を曲がり階段を上っていった先にローレンツが挨拶すべき人の部屋はあった。
先程ローレンツは二人きりの時はフォドラ語で構わないと言われたがカリードにフォドラ語を教えた彼の母に何語で話しかければ良いのか分からない。監視役の召使がいるかもしれないからだ。
ローレンツの疑問に気づいたカリードが唇の前で指を立てる。やはり監視役の召使がいるのだろう。ローレンツが無言で頷くとカリードは金具を手に取って扉を叩いた。内側から扉が開く。室内は昼間だというのに窓掛が下されている。
「具合は?」
中から出てきた召使が無言で小さく首を横に振る。体調不良であるならば日を改めるべきと思ったがどうやらそうはいかないらしい。カリードは自分の眉間を指で揉むと大きなため息をついた。床に膝をつき頭から顔にかけて包帯を巻き寝台に横たわる母親の手を握る。
「母さん、目を開けられるか?」
「クロード……」
「母さん、カリードだよ。ああ、舌でも痺れてるのかな……無理はしなくていい。辛いなら寝てていいんだ」
監視の目を気にしているのか語りかけの言葉はやはりパルミラ語だったしフォドラ語の名前で呼ばれた瞬間に否定していた。だがどうやら彼はクロードというらしい。薄暗い部屋には大量の花が飾られている。目を開けられずとも花の香りは楽しめるからだ。
「……母さん。今朝、そろそろ成人だからとばあさんからサーキを渡されたよ。名前はローレンツって言うんだ。顔を見たらびっくりするぜ。ほら、ローレンツ、お前も声をかけてくれ」
息子の声に反応してクロード、と呼んでいたのだし声をかけるなら母語であるフォドラ語の方が効果があるのではないだろうか。ローレンツはそう考えたがクロードに従ってパルミラ語で声をかけた。
事故なのか病気なのか。しばらくの間、褐色の手は白い母の手を握っていたがきりがないと思ったのかそっと手放した。もし二年前にローレンツがパルミラとの国交交渉に成功していれば大使館を経由してセイロス教会から手練れの修道士をクロードの母の元へ派遣できたかもしれない。
カリードが何の説明もせずに母の部屋へ連れてきてしまったせいかローレンツは言葉を失っている。
そのまま部屋に戻る気にもなれず外の空気を吸いに行こう、と言って庭の四阿屋に彼を連れていった。長椅子二脚に挟まれて四角い机が置いてある。いつ誰が使うかなど定かではないのにどちらも召使によって綺麗に磨かれていた。四阿屋を三方から囲う生垣には庭師たちの努力の成果が咲き誇り辺りは芳しい香りに満ちている。パルミラは花の品種改良が盛んで大ぶりで芳しく鮮やかな花が多い。
「実に見事だな」
どうやらローレンツは花を愛でることが好きらしい。そんなことも知らないうちに彼の身体を弄んでしまった。赤い薔薇をじっくりと眺めた後で顔を寄せて目を閉じ香りを楽しんでいる。白い肌に赤い花びらの色が映えて美しい。
「少し話を聞いてくれないか?」
背もたれに小さな陶器製の薄板を貼って飾り立てた長椅子を指差した。夏になれば熱くてこの椅子の背もたれは使えなくなるだろう。ローレンツはそっとカリードの隣に座ってくれた。立っている時は握り拳ふたつ分はあった身長の差が座ると握り拳ひとつに減る。それだけ彼の手足は長いのだ。
「元は強くて豪快でな。少し前に狩猟中の事故にあってからはあんな状態だ。だがあれでも随分と良くなっている。時間はかかるだろうがきっと元気になるはずだ」
流石に思うところがあったのかローレンツがそっと手を添えてくる。乾いていて温かい手だった。カリードは自分の手が思っていたよりはるかに冷えていたことに初めて気づいた。
「治癒魔法は試したのか?僕もライブなら使えるのだが」
「解呪が終わってからでないと意味がない」
ローレンツの顔が悔しそうに歪む。王主催の大規模な狩猟で獲物は皆食べてしまうことになっていた。だから肉を汚染から守るため毒矢は使用されていない。父は狩猟をする際には必ずカリードの母ティアナを伴っていた。だから飛竜に騎乗していた母を射た矢は王である父を狙ったのかもしれない。
「とりあえず顔見せが終わってよかったよ」
母が意識不明であるので当事者間では成立していないが他人へ見せるためにやるのだ。監視役の召使は静かに全ての動向を把握している。カリード王子は母后に与えられたサーキを伴って生母の元に挨拶に訪れた、と見做されることが大事だ。
「クロード」
「なんだ?」
母と同じ抑揚で呼ばれたのでつい、返事をしてしまった。カリードは族譜に記されることのない名も与えられている。母と二人きりの時しか呼ばれない名だ。父にはそう呼ばれたことがない。父にすら話していない可能性もある。
「君はクロードというのか」
「そうだ。俺はフォドラ語の名前も持ってる」
事故にあって以来、初めて母の口から意味のある単語が出た。生死の境を彷徨っている時には後から覚えた外国語など出てこないのだろう。咄嗟に誤魔化したが監視役がどう判断するか不安だった。
「クロード、同胞に会わせてくれて感謝する」
ローレンツが何故急にそんなことを言い出したのかクロードにはよくわからなかった。この時、彼が何を考えていたのかは後に明かされることになる。
「同胞、そうか。確かにお前から見れば母さんは同胞に当たるな……」
全くフォドラに帰りたがらないので忘れがちだがクロードの母ティアナはローレンツと同じくフォドラ生まれのフォドラ育ちだ。
「僕にできることがあるなら何でも協力する」
フォドラ育ちの者は皆こんな風に懐が深いのだろうか。母も自分たちにきつく当たる裕福な他の妃たちのことを怖がりだと評していたしローレンツも苦海に身を落としていながら思いやりの心を見せる。
「そうだな、取り敢えず厨房に行って食い物を取ってきてくれるか?」
「ここに?それとも部屋に?」
空の様子を見るに今日は雨が降りそうにないしここで遅めの昼食を取るのは良い考えかもしれない。
「厨房の場所は分かるか?」
「ああ、大丈夫だ。ここには数日前に連れてこられたからな」
後宮は王と王の父母、王の子を産むために集められた女たち、まだ成人していない王子それに結婚していない王女と彼らの生活を支える使用人たちが暮らす巨大な居住空間だ。区画は細かく分けられている。使用人たちも細かく身分が分けられており下働きの者たちは入れない区画や通れない通路も多いし仕事中に尊き王の血を引く者たちが通りかかると彼らは床に平伏する。だがローレンツはサーキだ。賤むべき奴隷でありながら同時に王族の肌に触れることを許されている。遠回りをせずにこの四阿屋まで戻ってくることができるはずだ。
巨大な厨房は早朝に火が入り深夜に火が落とされる。時間帯によってあたりを漂う匂いが変化していく。朝一番に近寄れば一日分の麺麭を焼く匂いがするだろう。ローレンツがクロードと自分の食事を取りに行った時はすでに夕食の仕込みが始まっていた。出汁を取っているのか牛骨と根菜が鍋でぐつぐつと煮えている。数千人分の食事を全て賄っている厨房に暇な時間帯など存在しないから仕方ないのだが何度も呼びかけを無視され二人分の麺麭と乾酪それに汁物が入った小さな鍋を手に入れるまで随分と時間がかかってしまった。ローレンツが大きな銀色の盆に全てを載せて四阿屋に向かって歩いていると先程の揉めごとがもう伝わっているのか遠巻きに様子を伺ってくる。
盆の上に載せてあるのは厨房の者がいつまで経っても無視し続けるので用意されていたものの中から勝手に掠め取ってきたものだ。本国にいた頃と比べればその凋落ぶりに眩暈を起こしそうになる。だが今はなりふりなど構っていられない。クロードの母が健康を取り戻すまでクロードも自分もよく食べて眠り健康でいる必要がある。今更取り返しにこられても困るのでローレンツは足の長さを存分に活かし冷たい視線を背中に受けつつ足早にクロードの元へと向かった。
四阿屋で思案に耽るクロードの横顔はやはりどこか固い。意識の残らない母、険悪な兄弟関係から発生する悩みごとが尽きないのだろう。
「申し訳ない。厨房の者がなかなか用意してくれなかったので時間がかかってしまった」
銀色の盆を机の上に置きローレンツが声をかけると顔から固さが抜けた。気のおけない者が来て安心したからではない。不機嫌そうな顔を見られまいと演技を再開したからだ。
「俺の名前を出したからだろうな。結局どうしたんだ?」
口の端を上げ面白そうに装っているがクロードはローレンツの手腕を問うている。ローレンツは白い指を耳にあてた。
「厨房の中の話し声をよく聞いただけだ。少し時間帯がずれているだろう?これは夕食用に用意されていたものなんだ」
継承位が高い王子や裕福な外戚のいる王女は毎日ちょっとした晩餐会を開いているらしく昼食を作り終えた料理人たちはすぐに豪華で手間のかかる夕食の支度へ取り掛かっていた。常温でも平気な乾酪や麺麭それに食べる時に目の前で温める汁物ならば少し前から用意しておけばいい。数時間後に皿の数が足りないとどやされる者が出る可能性は高いがローレンツの言葉を無視したつけはそう言う形で支払って貰う。
「試すようなことをして申し訳なかった」
「柄が悪いと僕のことを叱るか?」
惨めな立場に落ちたものだがそれでも人間は生きていかねばならない。強かろうと弱かろうと貴族であろうと奴隷であろうと生きるべきなのだ。
死は毎日、お前を救ってやる、名誉を保てと甘い声でローレンツを誘う。だがローレンツと引き換えに解放された隊商の娘が泣きながらあんたたちが若様をどんな目に合わせようと絶対に若様は辱められない、と叫んだ。心の中に溜まった憤り全てを搾り出したようなあの声が、セイロス教の聖句が死の甘い声を打ち消す。
-あなたは我が目に尊く重んじられる者である-
ローレンツはそれまで修身の一環としてセイロス教を利用しているに過ぎなかった。恵まれた者以外に高い理想を掲げても結局は達成出来ないのだから無意味だ、とすら思っていた。だが過酷な自然環境の下で育ち教育など受けたこともない幼い娘の口から似たような言葉が出てくるのならばそれは真実ではないかと信じられるようになっていた。
「そんなことする訳ないだろう?」
クロードは腕を伸ばしローレンツの肩を掴んだ。見開かれた緑の瞳に何故か焦りが見える。王の血を引きパルミラ社会の上層に属していながら彼は違和感を覚えているらしい。ローレンツがパルミラ社会に迎合したかのような態度をとるたびに必死で否定してくる。彼はその必死さに気がついているのだろうか。
「味見して選んだわけでない。口に合うと良いのだが」
「味は置いといて良い皿を取ってきたもんだ。分かるか?これはあいつの皿だよ」
それまでローレンツに見せていた焦りを上書きするかのようにクロードは人の悪い笑みを浮かべた。
「ああ、二ヶ月歳上の!少し気の毒な気がしてきたな。しかし何故そんなことがわかるのだ?」
「いい窯が沢山ある地方の太守の孫なんだよ。絵付けしてある柄を見ればすぐにわかる」
殴り合いは想定していても灰で目潰しをされるとは考えていなかった筈だ。目の痛みは取れたのだろうか。一瞬だけそんなことを考えたが数年ぶりにきちんと布で裏漉ししてある豆のスープを飲んだ瞬間、ローレンツの脳裏からそんな考えは消え失せてしまった。
これ好き! 好きすぎる!
頼む、続きが読みたい!
発想にすごく引き込まれた
響くわ〜
はしりがき
7/17 6:10
3.
数日後、後宮に出入りの商人がやってきた。商人の出入り自体は毎日あるのだが後宮は女社会で身入りが少ないせいか男性用の小物や服を扱う者は呼びつけなければ来てくれない。しかもクロードには仕送りしてくれるような外戚がいないので裕福な王子のような買い物ができないことはもう知られている。万が一自分が出世したら今日、商品を持参してくれた商人たちを贔屓にしてやりたい。
前々から欲しいものが決まっていたローレンツはクロードから与えられた予算内でさっさと肌着や小刀や手巾などの小物、爪磨き用のやすりや香水など身繕いに必要なものを買い終えクロードの買い物が終わるまでの間、暇つぶしで仕立て屋の持参した生地を見ている。購買意欲をそそるための涙ぐましい努力だ。
買った品を入れるための行李は蓋が閉まるかどうか分からない。人間が人間らしく生活していくにはこれほど多くのものを必要とするのかとクロードは驚いた。所詮は真似事に過ぎないが買い物を楽しむローレンツは心底嬉しそうにしている。
自分のサーキが夢中で買い物する様子を横目で確認しつつクロードは香油を選んでいた。自分では平静さを保っているつもりだが他人からどう見られているかは分からない。商人たちは後宮で何が起きたかを常に知ろうとしているのでサーキを与えられたことはもう知っているだろう。商人たちは全くサーキらしくないローレンツを見て侍者であるという体で話しかけているしこの香油もあくまでもクロード本人が肌の手入れに使うものという体を保ってくれていた。
「こちらは向日葵の油から作ったものです」
先程手に塗り込んだ巴旦杏の油で作ったものより粘り気があるような気がする。自分の体に使うものではなくローレンツの体に使うものを自分の独断で買って良いのだろうかという疑問がクロードに付きまとう。
先日ローレンツの身体を弄んだ時、彼は必死で自分にはそちらの才能がない、と訴えていた。しかしそれなら何故あんなに気持ちよさそうにクロードの手を汚したのか。思わぬところで聞いた母国語に絆されただけ、きっとそれが正解だ。理性はそう囁くが本能は俺なら絶対に上手くやれるとやかましく叫ぶ。凝り性の自分のことだから将来的には自作しそうだがそれでも最初は先人が作った物を吟味する必要がある。
「香りは白檀だけか?」
「いいえ、乳香や薔薇で香りをつけたものもございます」
そういうと商人はまず薔薇で香りをつけた香油の瓶を開けた。中には何百枚もの薔薇の花びらから抽出した精髄が詰まっている。クロード本人の好みは乳香だが薔薇の香りを確かめた時、初めて食事を共にした時の姿がクロードの脳裏に浮かんだ。庭で咲き誇る赤い薔薇に顔を寄せ瞼を閉じて香りを楽しむ姿がローレンツの本質なのかもしれない。
「薔薇もいいな。薔薇と乳香どちらも買おう」
待たせてしまったローレンツの方をふと見ると仕立て屋にまだ絡まれていて薄く青みがかった薄紫の生地を肩に当てられている。売り込み文句を聞きながら照れ臭そうに笑っていた。だがお世辞ではなく彼の白い肌と濃い紫の髪によく似合っている。
「今終わった。買った物を全て部屋まで運んで欲しい」
「では機会があれば」
「ん、どうした?」
「新しく服を仕立てろとしつこくて」
だが奴隷は主人の許可なく金を使うことはできない。だがそれを分かっていてしつこく勧めているなら何か理由があるのだろう。
「どうしてだ?おかしなところはないと思うが」
クロードはローレンツにずっと話しかけていた仕立て屋に声をかけた。今ローレンツが身につけている袖なしで丈が腰までの黒い上着、立襟で長袖の白い襯衣に青い帯を巻き足首が見える丈の焦茶色のズボンは彼を後宮へ売った奴隷商人が用意した物だ。その姿に納得していない仕立て屋はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりにローレンツの身体に次々と尺を当てながら朗々と語りはじめた。彼は男性用の服が得意でお針子をたくさん抱えている。
「全体的に寸足らずです」
「全体的?確かに襯衣の袖はそうかなと思うが……」
「特に肩周りが足りていません。上着を脱いで少し肘を曲げた状態で腕を上げてください」
仕立て屋から言われるがままに上着を脱ぎ腕を上げたローレンツの動きは確かにぎこちない。寸法違いな小さめの服を着ているからだ。
「無理だ。これ以上は袖が破けてしまう。僕はこれしか襯衣を持っていないから遠慮する」
仕えている者の装いは主人の責任だ、と熱弁を振るう仕立て屋の言うことは正しい。
「分かった。お前が仕立てるべきだと思った物を全て仕立てろ。全て言い値で買ってやる」
大柄でクロードより年上のローレンツは全くサーキらしくないがそれは彼のせいではない。クロードが溜め込んだささやかな金子をそんな彼に費やせば予想通りだと油断する者たちも出るだろう。ローレンツは戸惑っていたが言い値、と言う言葉を引き出せたことと自分の熱意が通じたことに大喜びした仕立て屋はあらためてローレンツの身体に尺を当て蝋引きの書字板に鉄筆で色々と書き付け始めた。
初めて会った日はクロードの情緒不安定さに驚いたローレンツだったが事情がわかるにつれ驚きは同情へと変わっていった。だが気まぐれに見せる親切心と他人への疑り深さどちらが彼の本質なのだろうか。いまだに計りかねている。
昼にローレンツのために仕立てた服が届いた。主人らしいことをしたクロードのためにサーキらしく酌をということでローレンツは氷室まで葡萄酒を取りにきている。フォドラでは地下室をに藁の上にフィンブルやブリザーで作った氷を敷き詰めて氷室を作るがパルミラでは氷室が建物として独立していた。地下水を引き込んだ半球型の建物は砂と粘土と卵白それにヤギの毛を混ぜて作った断熱材で作られており天辺には穴がある。天辺の穴から暖かい空気が出ていくので下の方は低温が保たれる仕組みらしい。パルミラの人々は魔法ではなく地下水の冷たさと朝晩の寒暖差を利用して冬に氷を作りその氷を利用しつつ食料や飲み物を冷やしていた。酒を管理する年嵩の女官がローレンツを訝しげに見上げている。
「あんたみたいな大男をサーキに充てがうとはねえ……。どう見てもカリード殿下より年上だ。サーキってのはもっと幼気で儚くて守ってやりたくなるようなもんだよ」
そんなサーキも歳をとり大人になるが彼らはその後どう暮らすのだろうか。氷室の寒さではなく彼らの先行きの不安定さに寒気がしてローレンツは腕を擦った。女官も腕を摩っていたがこれは単に氷室が寒いからだろう。
「殿下は赤葡萄酒と白葡萄酒どちらも御所望だ。見繕ってくれたまえ」
「ただまともな娘はカリード殿下の寝室には入りたがらないだろうからちょうど良いのかもしれない」
確かに雑然としているがあの部屋には鞭もナタも短弓もない。躾ができない甘い主人と見做されるのかも知れないがローレンツはクロードのそう言うところが好きだ。ローレンツは女官の言葉を無視したが彼女はそれが面白くなかったらしい。
「惜しい話だよ。目を閉じていればかわいらしい王子様だってのに瞳の色がねえ……あんたは恐ろしくないの?」
ローレンツはパルミラに来てからずっと髪や瞳が緑の者を見ていない。どちらもフォドラではありふれていたのでローレンツにはパルミラの者たちが緑の瞳を忌避する理由が分からなかった。勿論人を食い殺す化け物の瞳が緑色であると言う言い伝えは知っているが現実に言い伝えを持ち込むその発想が理解できない。魔法を使わずに巨大な氷室を維持できる人々がなぜそんな理不尽な発想に囚われているのだろうか。
「恐ろしいと思ったことはない」
「……あんたは買われた以上そうやって主人を庇うしかないか。さっさと持っていって」
ローレンツは酒瓶を受け取ると女官の目の前で手巾を取り出して酒瓶の汗を拭いた。おしゃべりに付き合ったせいでこのざまだ、と言う嫌味をきちんと受け取った女官の眉間に皺がよる。舌打ちの音を背にローレンツは主人が待っている部屋へ向かった。
部屋の主人はローレンツが何を聞かされたのか知る由もない。注目しているのは汗をかいている酒瓶だけだがそれでも出来る限り優しくしてやろうと内心で誓った。
「思ったより早かったじゃないか」
絹で織られた絨毯の上には二人分の瑠璃杯と乾物が種類別に山盛りになった皿が乗った銀色の丸い盆がおいてある。気が早いクロードがローレンツの姿を見るなり瑠璃杯を掲げた。
「まだサンダルも脱いでいないので待ってもらえないだろうか」
「すまない、待ち遠しくてな」
ローレンツが今身に付けているのは紺色で縁に金の刺繍が入った袖なしで膝丈の上着と立襟で青味がかった薄紫の長袖の襯衣で腰の帯は赤い。ズボンはは白できちんと足首まで隠れていた。採寸して作った服を着ているせいか服が破けるのではないかと臆することなく胸を張り胡座をかくことができる。
腕を伸ばして運んできた酒瓶を銀の盆に置きサンダルを脱いだローレンツはクロードの隣に座り酒瓶の栓を開けた。彼の瑠璃杯に葡萄酒を注ぎお前も飲めと言われたあたりまでは鮮やかなまでに覚えている。蝋燭の灯りを受けて煌めく瑠璃杯が美しかったからだ。二年ほど酒精の類から遠ざかって生活していたせいかすぐに酔いが回ったのだろう。外へ用を足しに行ったローレンツは床を綿のように感じながらクロードの元へ戻り先日彼が寄りかかっていた大きな座布団にしなだれかかった。
「お前大きくて運ぶの大変そうだからきちんと寝台の真ん中に寝てくれ」
巨大な寝台の真ん中には棒のように長細い枕が置いてある。本来は仲睦まじい二人が並んで使うためのものだが初日に予定外の触れ合いをしたローレンツたちは何となく寝台を区切るために使っていた。無為に種を撒き散らせばよい、と思われていた二人は実際はそうすることなく毎晩枕越しに背中を合わせて眠っていたのだ。
のろのろと身体を起こしたローレンツはクロードから言われるがままに寝台へ移り細長い枕に抱きついて身体を横たえた。確かに自分は大男であるからクロードの言うことは正しい。
「脱がないと皺がよるぞ」
絨毯の上に座り込んで呑んでいた筈のクロードの声が何故かローレンツの耳元で聞こえた。
先程まで塩で炒った巴旦杏に砂糖がけの胡桃、干した棗椰子それに乾酪をつまみながらクロードたちは瑠璃杯を傾けていた。ローレンツはフォドラの葡萄酒とは趣が違うとしきりに言っていたが味は気に入ったらしい。盃を重ねるごとに白い肌は酒精で染まり表情が柔らかくなっていく。遂には瞼が下りている瞬間が増えてきた。自分も明かしていないことは多々あるが彼も秘密を抱えている。今晩はその謎も彼の身体も解き明かしたいのだがローレンツは酔うと口が軽くなるのではなく眠くなる方らしい。緊張をほぐしてもらうためクロードは酒の力を借りたがこのままでは葡萄酒にサーキを寝取られてしまう。どちらも駄目になるよりは片方だけでも戦果を得られるほうがマシだ。
そんなことを考えられているとはつゆほども知らずローレンツは寝台の端ではなくクロードに言われるがままに真ん中に身体を横たえた。大きさが丁度いいのか枕に抱きついている。クロードは細長い枕を抜き取るとローレンツの腕の中に潜り込んだ。帯を外してさっさとズボンを脱がしてしまいたいのだが他にもやりたいことはある。薄い唇を吸って熱い咥内を舌で探った。舌の付け根や上顎の溝に触れると気持ちが良いのか白い身体が震える。どちらのものとも判断し難い唾液が白い顎に伝っていった。襟元を緩め喉仏に舌を這わせながら下腹部に手を伸ばす。白い布地越しに形を探ったがまだ反応を示してはいない。
「帯巻いたままだと寝る時苦しいだろ?解くから腰を浮かせてくれ」
「ん……分かった……」
腰が浮いているうちに帯の結び目を解きズボンを脱がすと下帯に隠された下腹部と白い太ももが見えた。その光景に満足し今度は横から抱きついて襯衣の裾から褐色の手を侵入させていく。滑らかな肌を堪能しながら中を探ると慎ましやかな胸の頂を見つけた。指の腹でふちを丸く描くと刺激に応じて形を持ち始める。
「え……?や、あ♡ンッ……そこはっ♡」
「気持ちいいんだろ?」
耳元で話しかけるとローレンツは身じろぎし始めた。足を擦り合わせているので片手を下腹部に下ろしてみると先ほどとは違い反応を示し始めている。下帯の布ごしに指で形を確かめるように撫でると自分がどう言う状態になっているのかローレンツも自覚したようだ。
「やだ、さわらないで、おかしくなるッ♡」
「おかしくなんかないさ」
乱れて欲しいと思って触って狙い通りになっているのだから恥じらう必要はない、と言ってやるべきだがクロードにもそんな余裕はない。後宮で育った子供は皆耳年増になる。クロードも例外ではなかったが実践する機会は皆無だった。そんな訳で与えられた機会に夢中になっている。下帯が湿り気をおびはじめたのを確認するとクロードは下帯も解いた。上を向く体躯にふさわしい持ち物の赤さと太ももや臍周りの白さがよく分かる。枕元へ並べた瓶に視線をやった。乳香か薔薇か。当てずっぽうに手を伸ばし香油の瓶を手に取った。あたりに乳香の香りがただよう。
刺激に反応し涙をこぼしそうな先端を香油のついた手で優しく触りながらもう片方の手で先日は入れてもらえなかった坩堝の縁を撫で回す。
「なあ、もう一度試させてくれ」
酒も呑んでいるしこの間よりは緊張しない筈だ。それでもそっと香油をまとわせた小指をほんの少しいれただけできつく締め付けてくる。ローレンツが大きく息を吐いて体の力を逃がそうとしているのが分かった。受け入れようと言う彼の意志を感じたクロードは顔をローレンツの下腹部に寄せ口を大きく開く。先端を口に含み舌で愛でてやりながら指を奥まで進めていった。
「クロード……!君!君はそんな……ことしたらぁ……ああっ♡」
声に出すことで痛みや違和感を逃しているのだろう。指も増やしているのだが段々と慣れてきたのか甘い声が混ざり始めた。特に反応が良いところを探っていると口の中の物も震える。おそらく限界が近いのだろう。まずは気持ちの良い行為であると教えるため中を指で広げつつ咥内へ迎え入れた物の先端を強く吸った。
「ああ、!ぁああっ♡んッ、あっ、あんっ♡そ、こぉッ…♡」
上目遣いで様子を伺うと仕立て屋が推していた青みがかった薄紫の生地で作った襯衣は捲れ上がり臍まで曝け出されている。薄紫が白い肌に映えているのかその逆か。とにかく仕立て屋は良い仕事をしていた。ローレンツの身体の反応ばかり気にしているがクロードの身体もしっかりと興奮している。頭を挟む白くて長い太ももの感触が思ったよりも心地よく前が苦しくなっていた。自分も早く服を脱いでしまいたい、という思いはある。だが更なる無体を強いることやこれまでの彼の苦難続きの道のりを思うと先に気持ち良くさせてやりたい。
「も、だめ…ッ♡出ちゃうからぁ♡」
白い大きな手もクロードの頭に触れて警告してくる。だが無視して先端をきつく吸い上げてやった。
仮初めに過ぎないとは言え再び私物を持つことが許され服を仕立ててもらってもローレンツにはクロードに返せるような物がない。だからこそ後宮内に心を許せるような者がいない彼の一時の憩いになればと思い理想像からかけ離れているのを承知で酒の相手をした。パルミラの葡萄酒は繊細なフォドラの物と違って随分と重い。そう感じたのは長い間、酒を楽しむ機会がなかったからだろう。クロードから言われるがままに杯を重ねた。
瞼を下ろしたまま彼の言葉に相槌を打っているつもりでいたが自分が相槌をうっていたのは果たして本当に彼の言葉だったのだろうか。確かに大柄な自分を寝台の上に運ぶのは大変だと思いローレンツはのろのろと起き上がって寝台の上に倒れ込んだ。
深く酔っていたせいか襟元が緩められ腰に巻いていた帯が外されたことも現実だとは思えず強烈な刺激のせいで瞼が上がった時には既にクロードがローレンツの足の間にいた。太ももの内側で感じる顔の柔らかさや熱さにも煽られる。奴隷商人の間を転々としていた頃、付加価値をつけるためにと何度かされた際は拷問でしかなかったと言うのに咥内で粗相をしてしまった。
「すまないっ……だが何故こんなことした?」
雑紙を入れてある箱へ手を伸ばすため白い身体を起こすが見当たらない。当たり前だが飲み込むような物ではないので白濁は褐色の掌に吐き出されていた。見るに耐えない光景と己の欲望から目を逸らすため確かあそこにも雑紙があったはずだ、とローレンツはクロードの机に目をやる。
「……したかったから」
雑紙で口を拭いながらクロードがローレンツの問いに答えた。声につられて見つめた緑の瞳は欲望で輝いていた。パルミラの人々はこの輝きを厭うのかもしれないがローレンツはその視線に言いようのない快感を覚えてしまう。
「手や口では物足りないのか?」
唯一の味方であった母が倒れ孤独のうちに過ごすクロードは正気を保ちたがっている。誰かに受け入れてもらわねば正気を保てない。ローレンツはそっと手を伸ばし指です固く兆しているクロードの下腹部に触れた。布地ごしでも固さを持っているのがよく分かる。
「どうしても嫌ならそれでも良い……」
指や口で物足りなくなっているのはローレンツの方なのかもしれない。ローレンツは皺だらけになった薄紫色の襯衣を脱ぎ枕元に置いてあったもう一つの瓶を顔の横で振った。
「乳香もいい香りだが僕は薔薇の方が好みでね。君も服を脱ぎたまえ」
汗で濡れた肌同士が触れ合う。腕の中に彼を収めるだけでこんなに心地よいのだから身体の内に受け入れたらもっと気持ちが良いのかもしれない。薔薇の香りを楽しんでいるとそれだけで身体も寛いでいく。再び指を受け入れ広げられた坩堝の入り口にクロード自身が押し当てられる。気持ちは逸っているだろうに傷つけないように動作は慎重だった。
「ん…っ!はぁっ………」
違和感と異物感を逃すため褐色の身体に縋りついて大きく息を吐く。継ぎ足された香油がくちゅくちゅと湿った音を立てるのでそれが気になって仕方がない。
「あと少しで全部入るから……」
指とは比べ物にならない質量が奥に入り込み先ほど指で触れた良いところを刺激する。今まで受けたことのない刺激を受けたローレンツは目を閉じてますます強くクロードの身体にしがみついた。
「あああぁっ♡んんん…っ!ん…っ!ひ…っ♡や、あ、やら、あぁッ♡そこッ……!もっとぉ♡だめ、だめになっちゃう♡そこ、いいからあッ」
頭の中は真っ白で自分が何を言っているのかよく分からない。理性を手放し生まれて初めて来し方からも行く末からも解放されて今この時に集中していることだけは分かった。クロードの三つ編みが腰の動きに合わせて白い頬を撫でていく。薄目を開けてクロードの様子を伺うと欲望で輝く緑の瞳が見える。ローレンツが快感に集中するあまり目を閉じていたのとは対照的に痴態を見逃すまいとしていたようだ。視線に気づいたクロードが下半身では内側をそっと擦りつつ褐色の指でローレンツの口を拭う。
「ンッ……あっ……見苦しくてすまないね……」
「いやそんなことないさ。すげえ好い顔してたぜ?誰にも見せたくないくらい、な!」
そう言うとクロードは白い太ももを掴んで更に大きく広げた。そんなことをされたらもっと奥に入られてしまう。
「な、なんでぇっ!♡ふか、あぁッ……ふかいィッ♡あっ♡だめ、だめ……またイッちゃうからぁ!!」
ローレンツの出したもので既に二人の腹は汚れている。声も何もかも堪えることができなかった。
「はぁ……ダメなんてことないだろ。俺たちもいい思いしたっていいはずだぜ?」
「でも僕ばっかり……」
クロードの少し厚い唇がローレンツの目尻に触れ音を立ててから離れていく。
「……いいぜ、ずっと我慢してたんだ。ここだよな?」
再び抽送の勢いが戻る。内側がクロードの白濁に満たされたことでローレンツは再び達した。
うるる😭
泣ける……
この本欲しすぎる
はしりがき
7/22 6:18
4.
王宮は巨大な敷地を外廷と内廷と後宮の三つに分けることができる。園遊会などが開かれ賓客をもてなす場所であり臣下たちが集う行政機関でもある外廷、王の住まいである内廷、王の母と子を産むために集められた女たちそれに子供たちが住む後宮だ。
王だけが王宮に自由に出入りできる。王の血を引く独身の子供たちは性別を問わず王宮内であればどこにでも入れるが基本的には王が避暑地で主催する狩猟に赴く時以外は王宮の外へ出ることが許されていない。
王の子を産むために後宮へ集められた女たちは基本、後宮から出ることを許されていないが娘が結婚すれば婚家との行き来が許される。息子が母后から子を作ることを許され館を構える際は息子と共に後宮から出ていく。館を構えることを許された王子は地方の太守や知事になることが内定しておりその場合、母も息子について王都を出ていく。
外に館を構えた王子とその母及び地方の太守に任命された王子とその母は外廷までは出入りできるが母后か王の招きなしには内廷や後宮に入れない。内廷は千人強の住人がいる後宮よりも広く気晴らしのためのささやかな狩場や庭園、王族の男子が騎乗する馬の厩舎や竜舎を内包している。
クロードはローレンツを伴ってその竜舎に来ていた。入り口で下働きの者に挨拶する声を聞きつけたのか匂いで察したのか奥の方から主人を恋しがって鼻を鳴らす音がする。急いで竜舎の奥に行くと興奮した白い飛竜が首を伸ばしクロードの顔に鼻先を擦り付けた。
「アブヤド寂しかっただろ?ごめんな、しばらく来られなくて」
ローレンツは一言も発さず主人と飛竜のやりとりがひと段落つくまで待っている。邪魔をしたくないと思っているのかアブヤド(白)という名付けが安直だと思っているのかは分からない。
「アブヤド、これはローレンツだ。こいつのことも乗せてやってほしい」
クロードが目を細めて甘える飛竜の顎を撫でながらローレンツを見るように促した。事前に教えた訳でもないのに自然と彼は真っ直ぐ腕を伸ばし飛竜の鼻先へ白い手の甲を差し出している。初対面の時は素手を差し出すことに意味があるのだ。
クロードの物言わぬ友人はローレンツの手の甲の匂いを嗅ぐとアブヤド、という名前の由来にもなった白い鼻先をローレンツの身体に擦り付けはじめた。
「アブヤド、初めまして。僕はローレンツだ。おやおや、随分と人懐っこい貴婦人だ」
どうやらクロードは賭けに勝ったらしい。アブヤドは陽気な性格をしているがそれでもどうなるかは五分五分だった。内心でクロードが望んでいた通りローレンツは笑顔を浮かべ顔を寄せてきた飛竜の額を撫でている。雌であることを示す額の鱗を撫でる白い手が昨晩は何を握らされていたかは語るまい。
「俺が育てた」
「それはすごいことだが初対面の人間を気にいる理由にならない」
「俺の匂いがお前に付いてるからだろ」
クロードの言葉の意味がわかったローレンツは耳まで真っ赤になった。動物は人間よりはるかに鼻がきく。昨晩は事後の処置をしている最中にまた盛り上がってしまったのでそれも彼の身体にクロードの匂いが染みついた一因かもしれない。
クロードには今まで友人と呼べるような者はいなかった。そして他の王子のように祖母の許可なしに目通り前の女官を寝床に引っ張り込むようなこともなかった。こんな風に飛竜に誰かを紹介するのも初めてだ。
そもそも子を宿せば身体を壊すような毒を飲まされるか袋詰めにされて井戸に放り込まれると分かっていてクロードと同衾したがる女官はいない。王の孫が誕生するかどうかも王の母が決めるのだ。だがサーキであればそういう心配はない。そう言った気安さもあってクロードは母后である祖母の思惑通りローレンツにかなり入れ込んでいた。それが王家の安寧に繋がっているかどうかはまだ誰にも分からない。
「そ、それはともかくこの飛竜はなぜこの時間帯に放牧されていない。この飼育場には充分な広さがあると思うが」
「胎の中に卵があるからだ」
飼い主より少し早いがほぼ同時期に恋をしたと言って良いだろう。野生であれば外敵から目をつけられやすい白子の個体は嫌がられたかもしれないがここの飛竜たちは安全を確保され餌も与えられている。生きていく上で不自由がないのに白子の個体を嫌がる理由があるのは人間だけなのだ。クロードの言葉を聞いてローレンツの表情が和らぐ。
「そうか!それはめでたいな!産卵は初めてか?」
クロードが頷くとローレンツが言葉を続けた。
「卵詰まりが心配だが対応できる専門家はいるのか?」
「問題ない。働いている者は皆、腕が良い専門家だ」
ローレンツはフォドラにいた頃のことを具体的には語らない。だが彼は性別がわかる程度には飛竜のことを知っているし目利きだ。砂漠で盗賊に捉えられる前の彼はどんな立場だったのだろうか。額の次に顎の下を撫でられている物言わぬ友人が目を細めながらクロードの様子を眺めている。焦って暴くべきではない、と言われたような気がした。
母が倒れて以来、クロードは母の見舞いと竜舎それに薬草園にしかいかなくなったようだ。母の部屋は自身も住む後宮、竜舎は内廷、薬草園は外廷にあるのでクロードの日常に放り込まれた異物であるローレンツも広大な王宮の中を一日中ずっと移動する羽目になる。薬草園では国の内外から集められた薬草が研究のため栽培されていた。薬草園と銘打っているがここで扱うのは薬草だけでなく資源になりうる全ての植物と薬になりうる物質の全てだ。そして外部の薬師や学者に開かれてはいるがあくまでも王族の命を守るために存在する施設なので王族以外の者の出入りは厳しく必ず衛兵による検査がある。
今日もローレンツは衛兵に身体を検められていた。ここに持ち込めないのは種子を外へ持ち出すための綿や硝子の瓶だ。裸足にさせられ服の上から身体を撫で回される。禁止物を隠し持っていないかどうかの確認は口の中にまで及ぶ。以前、何故ここまでやるのかクロードに質問したところ他国から盗み出した側だったから、という答えが返ってきた。ローレンツもフォドラで嗜んだことがある東方の着香茶はパルミラ産の茶葉から作られている。何世紀か前にパルミラから更に東の国へ行った商人が口に含んだ綿の中にチャノキの種を隠して持ち帰ってきた。パルミラ中のチャノキは皆その一粒の種の子孫なのだ。
クロードは今日も馴染みの薬師と真剣な顔をして国の内外から献上された品々を開け植物の種や標本を検分している。毎日とめどなく価値のあるものもないものも混ざった状態で届くらしい。
「今日の献上品の中にもーーはなかったか」
「最近あの辺りは部族同士で揉めているので競って持ってくるかと思いましたが当てが外れましたね」
「お墨付き争い程度で済むならこちらには好都合だがそう上手くいくかな」
ローレンツには名前すら聞き取れない薬草とその産地の情勢について二人は熱心に話している。理論上はそのいくつかの薬草があればクロードの母にかかった呪いを解くことが出来るらしい。しかしそれまでクロードの母が堪えてくれるのかどうか、その薬草を採取できる土地に戦火が及ばないか、が問題だということは門外漢であるローレンツにも分かった。レストが使えれば役に立てたかもしれないが使える白魔法は生まれつき決まっている。ローレンツはライブとマジックシールドは使えるがレストは使えない。
酸味の強い薬草茶を出されたきり放置されているローレンツはいつものように植物図鑑を眺めていた。これを最後まで読めば彼らが言及している薬草が何なのか分かるだろう。白い長衣に身を包んだ薬師は少しだけ雰囲気がセイロス教の修道士に似ている。病や怪我に苦しむ人を救うという目的が同じだからか、とローレンツは思った。
「王も命じていらっしゃるのでこれまでの例から言っても一年以内には入手できると思うのですが……」
「いっそ揉めに揉めて鎮圧の任が俺に回ってきたらいいんだ。、そうすればアブヤドに乗って直接採りにいける」
「殿下、おやめください……」
叶わぬ願いを口にするクロードは今気丈に振る舞っているがにも潰れてしまいそうな時も多い。クロードに同情している薬師は最初、王子と連れ立って薬草園に現れたローレンツがサーキだと知って眉を顰めたがそれはローレンツが真っ白な大男で年上だからではない。緑の瞳の王子がお前は生涯を檻の中で過ごせと実の祖母から宣言されたから眉を顰めたのだ。だからローレンツはこの馴染みの薬師が嫌いではない。ただし先方がローレンツのことをどう思っているのかは分からない。
「冗談だよ。ーーはまだ手に入らないがーーの株分には成功してるんだ」
「ですがまだ量に不安が……」
「それでも前進出来てると思おうぜ」
クロードはそう言うと褐色の手で顔を覆い大きなため息をついた。刻々と時が過ぎゆく中で有効な手が打てない苦しみを思うとローレンツの心も痛む。
「そうだ、アブヤドが夏に卵を産むんだ。また育てようと思ってる」
だがここまで来たらあまり落ち込んでも意味がない。クロードは気分を変えるために話題を変えた。
「では今年の夏は避暑に行かないのですか?」
「ああ、鱗の色が気になって避暑どころじゃあないな。これでようやく父親がわかる。アブヤドはとんだお転婆娘だよ」
王宮の竜舎で飼育されている飛竜は馬と同じく血統を管理されているので生まれた子供の身体的特徴を見ればおそらく見当がつく。飛竜の世界は豊かであれば色合いなど問題にされず人間の世界では豊かに暮らしていようとも色合いが問題にされる。ローレンツにとって充分身に覚えのある話だった。
「ローレンツ、お前が名前を付けてくれ」
「え?僕が?」
そんな話を振られるとは全く考えていなかったローレンツが驚いて目を丸くした。血統が管理されているならば父母の名から取ってふさわしい名前を付けねばならない。
「孵化する前に決めておくんだぞ。アブヤドがアブヤドになったのはきちんとした名前を決める前にとりあえずそう呼びかけてたらあいつが自分で自分の名前はアブヤドだと決めちまったからなんだ」
「う、うぅ……後で書庫に行かねば……」
「そんなに固く考えずにいきましょう!困ったら目を閉じてこの図鑑を開くと良いですよ」
悩み始めたローレンツを哀れに思ったのか薬師が軽口を叩く。フォドラにも目を閉じて聖典を開き当てずっぽうに指をさす占いがある。無意識のうちに選んだ聖句がその日の運勢を表しているという戯れだ。フォドラであろうとパルミラであろうと人間の発想は似通うらしい。真綿で首を絞められるような日々は終わりを告げつつあったがローレンツもクロードもそこからは目を逸らしていた。
王都は夏の本番を迎え氷室の前には行列が出来るし避暑地での狩猟に備えて弓を新調したとか良い猟犬を探しているとか王宮の中はそんな話で持ちきりだ。今年は無理でも避暑地にある宮殿にいつかローレンツも連れて行ってやりたい。
クロードたちが暑気払いに部屋で桃のシャーベットを食べていると女官長がやってきた。偶然、情熱的な時間を過ごしていなかったがもしそうだったら出直すつもりだったのだろうか。ローレンツは彼女が入ってきた瞬間に礼法に則って膝をつき頭を下げている。しかし王の血を引くクロードは大きな座布団に身体を預けたままだ。檻の中に閉じ込められた王族のささやかな特権を行使している。枝を打つと決めた孫にまだ用事があるとは知らなかった、と言いそうになりクロードは慌てて咳をして誤魔化した。要件を聞く前に揉め事を起こしても意味がない。
「遅いのにご苦労なことだ」
「巡り合わせが悪かったようでございます。殿下も南方で内乱が起きているのはご存知でしょう?」
「ああ、シャハドが平定に行くとか」
王家に向かって牙を剥いた訳ではなくその土地の中だけで揉めている。どちらの勢力も王家を味方につけたいと考えているからシャハドはきっと安全だ。そして戦果をあげて王位にまた一歩近づくのだろう。父親が同じだというのに扱いは天地の差だ。
「来週末、後宮で壮行会が開かれます。シャハド様の勝利を皆で祈るためご兄弟全員の参加を……」
「俺が兄弟の枠に入っているとは知らなかったな」
王である父が開く壮行会ならば内廷が会場になる。祖母が開くから会場が後宮なのだ。お気に入りのシャハドのために開くならば酒も食事も上等なものが出ることだろう。王宮の中にある畑の果物や野菜は太陽の光を浴びて艶々と光っているし狩場に放った鹿も育っていい肉が取れる頃合いだ。きっと盛大な宴が開ける。楽しそうにしている皆を片隅から見ているだけで良かったのに幼い頃の自分はそれすら嫌がられた。
「欠席する」
「ですが殿下!」
おそらくクロードは生まれる前から彼女たちに嫌がられている。生まれてこなくても良かったのに生を受け、生きていなくても良いのに生きているからだ。いつ頃からこうして開き直ることができるようになったのか自分でもよく覚えていない。
「俺がいたらシャハドも嫌がるぜ。それに来週末な
アブヤドが産んだ卵がそろそろ孵化する頃だ」
「カリード殿下!殿下は兄君より飛竜の方が大切なのですか?絶対に出席していただきます」
お前らだって俺より秩序や安寧の方が大切だろうが、という反論が喉を上がっていく。口から外に出せば否定されても肯定されてもクロードが、いや、まだクロードの心の中にいる幼いころのクロードが傷つくだけの言葉だ。
「恐れながら……」
それまで黙って膝をついていたローレンツが口を開いた。自分より目下の者の存在に目をやった女官長が宝石付きの錫杖をローレンツの肩に当てる。母后から与えられた権限の象徴が嫌味なほど光り輝いていてそれが何だか腹立たしい。これまで宝石には毛ほども興味のなかったクロードだが初めてローレンツを宝石で飾り立ててやりたいと思った。
「申してみよ」
「殿下のお考えが変わるまでしばらくお待ちいただけないでしょうか?まだ時間はあります」
「良いでしょう。こちらの予定通りに事が運んだらそなたに褒美をとらせます」
「微力を尽くします」
まだ思い通りに行く可能性が潰えていないことに満足したのか女官長は満足してクロードの部屋から去っていった。ローレンツはまだ辺りを警戒していて頭を下げたままでいる。クロードは溶けたシャーベットの汁を未練がましく匙ですくいながらその様子を見ていた。だがもう大丈夫だろう。そう判断し立ち上がって扉に閂をかけた。
秘密が保たれる音がした途端にローレンツは顔をあげた。厳しい顔をしてクロードを睨みつける。菫青石のような瞳はもうクロードの企みを見破っていた。
「毒はだめだ」
白い手がクロードの襟元を掴んだ。暑かったので元からはだけていたが鎖骨が剥き出しになる。
「殺すわけじゃない。全員に半月ほど寝込んでもらうだけだ」
「君だけが出席せず無事だったら真っ先に疑われる」
だが母が堪えてくれている間になんとかして呪いを解くために必要な物を手に入れねばならない。やれることをやらずに死なせてしまったら一生悔いるだろう。
「王子が内乱を鎮めさえすればいい。その王子が何番目の誰であろうと加害者だろうと被害者だろうと民草からすればどうでも良い話なんだ」
クロードの言葉を聞いたローレンツの手も唇もわなわなと震えている。眉間に皺を寄せ目尻は上がり必死で感情が爆発するのを堪えていた。
「自分で自分を軽んじるようなことを言うな」
「俺は俺の国の感覚を悪用してるだけなのになんで外国人のお前がそこまで怒るんだ?」
「同じ理屈で排除される危険があるんだぞ!それに君の計画ではまだ幼い弟にも毒を盛る羽目になるだろう!」
ローレンツの言う通りまだ幼いとしても母親の実家が地方の太守であればお飾りの司令官にはなれる。母方の祖父から軍事顧問を派遣して貰えばいい。だから毒を盛るなら兄弟全員に盛る必要があった。特に説明したわけでもないのに本当に彼はよく分かっている。
「大丈夫だ。血反吐を吐いてのたうち回る程度で済むから」
「まさか既に人間で試したのか?」
「子供の頃に俺が飲まされた毒だよ」
一番聞きたくない答えだった。今はこれ以上、彼に言葉を紡がせてはならない。ローレンツは桃の香りがする少し厚めの唇を自分の唇で塞いだ。上顎の溝を舌で確かめるとクロードも好い所は同じなのか襟首を掴まれて緊張していた身体の力が抜けていく。クロードを絹製の絨毯に押し倒したローレンツは襯衣の上から左胸に耳を当てて鼓動を確かめぽつりと呟いた。
「耐えがたい……」
「何がだよ」
「子供の頃の君が命を落としかけたことが耐えがたい」
身体を起こし口を褐色の耳に寄せローレンツがそう囁くと腕の中の身体が震えた。同じ人間なのだから好い所はそう変わらないだろうと踏んでローレンツはそのまま耳の中に舌を捻じ込んだ。溝の形に沿って舌を這わせてから耳たぶを口に含む。
「ひゃ……!ローレンツやめてくれ」
「やめない。君だっていつもやめてくれないだろう?」
手をクロードの下腹部に添わせると既に反応を示し始めていた。身につけているのは柔らかい布地の部屋着なので布ごしに触っても中がどう変化しているのかわかりやすい。
「クロード、建前を悪用して一時的に出し抜いたとしても深く恨まれるだけだ。直接触ってほしいかい?」
「ああ、触ってくれ……」
腰を上げてもらいズボンをずり下ろしてから下帯の中に右手を入れた。黒い茂みを指で軽く弄ると指先が幹の根元に届く。指で輪を作り上下に動かそうとしたが下帯が引っかかった。邪魔なので手の甲で押し広げて緩めてしまう。何度か輪を上下させ親指の腹で丸い先端をそっと撫で回すとぷくりと露が出てきた。腹の奥が疼いたが先に言うべきことを言わねばならない。
「僕も出欠自体は好きにすれば良いと思っている」
「はあっ……ローレンツ、そこ……」
クロードは与えられた刺激に集中するため褐色の瞼を下ろしている。苛立ちを隠すために貼り付けた笑顔がそこにはない。皺が寄った眉間に口付けしたローレンツは袖を引っ張って襯衣を脱がせようとしたが手首に引っ掛かっている。だが目的の場所は晒されたからどうでもいい。喉仏の形を舌で確かめ鎖骨を舌で舐りそのまま顔を下に移動させた。右手の動きはそのままにローレンツのものとは全く色が違う胸の頂に口を寄せる。舌で触れた分には自分のものよりもかなり慎ましい気がした。
「え、あ!ちょっと待てったら!やめろ、やめてくれ!やだったら!」
褐色の手が混乱のあまり紫の髪を鷲掴みにする。
「分かった。ただし僕が服を脱ぎたいから止めたのだぞ」
クロードにまたがっていたローレンツは身体を起こし服を脱ぎ捨てた。裸のまま寝台に寝転がり傍に置いてある瓶に手を伸ばす。中途半端に脱がされていたクロードがもたもたと服を脱いでいるのを横目に瓶の蓋を開けた。凝り性のクロードが自分で調合したものが入っている。白い掌に垂らすと甘い香りがした。香油をこれに変えて以来、ローレンツは自分の反応があからさまに変わったと感じている。この中に何か得体の知れないものが入っているのだ。薬草園に行くたび薬草図鑑を読んでいるのはその正体を知りたいからだ。
うつ伏せになり足を広げ香油をまとわせた指でクロードを受け入れる準備をしていると彼に教え込まれた場所が疼く。
「俺にも手伝わせてくれ」
「必要ない……ッ♡君には考える時間が必要だ」
ローレンツはクロードの目の前で指の数を増やしていった。幼い弟たち相手に禍根が残るようなことはしてほしくない。それでは恨みが引き継がれてしまう。
「そんな格好見せられてまともに物なんか考えられるかよ!」
褐色の手が白い臀部を弄る手をそっと外したので準備が整った坩堝が晒された。まだ焦らしたかったがローレンツも限界を迎えている。クロードも無為な時間は過ごさなかったようで入口を触る熱槍が香油でぬるついていた。ローレンツはこのまま貫かれる快感を知っている。だが敢えて白い身体を起こし振り向くとクロードを再び押し倒した。
「いいや、まだ猶予があるのだから考えたまえ」
クロードの興奮し切ったものを白い手で坩堝に導いていく。腹の内側に力を込めて中のものを締め付けると身体の下でクロードが息を荒げて下から突き上げてきたのでローレンツも負けじと腰を動かす。
「諦められないんだよ……」
熱い息と共にクロードの本音がこぼれ落ちたのでローレンツは彼にまたがったまま本人も気づいていない涙をそっと拭ってやった。
うるる😭
泣ける……
これ好き! 好きすぎる!
頑張って
いいね
わかるよ
おめでとう
すべて
頑張って!
応援してる!
待っている!いつまでも!
やっちゃいましょう!
大丈夫......!
そういうときもある!
行ける気がする!
落ち着けっ!
いつもありがとう!
きっとうまくいく!
大丈夫!
どんな道も正解だから
負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
明日はきっとよくなるよ
のんびり行こう!
人は変われる!
なるようになる!
頼む、続きが読みたい!
この本欲しすぎる
これ好き! 好きすぎる!
ありがとう、これで今日も生きていける
発想にすごく引き込まれた
いや、十分すごいよ!
ぐはっ😍
おお〜😲
うるる😭
なるほど
それいいね!
共感する
響くわ〜
マジ天使
天才!
エロい!
神降臨!
素敵
かわいい
きゅんとした
泣ける……
ぞくぞくした
いいね
待っている!いつまでも!
いつもありがとう!
わかる、わかるよ……
苦しいよね
悩むよね
確かにね
その通り!
もちろん!
激しく同意
わかりみがすごい
お前は俺か
そうかもしれない
大変だよね
うん、うん。
そうだね
そう思う
そうかも
それな
うるる😭
大丈夫......!
そういうときもある!
なるほど
共感する
大丈夫!
のんびり行こう!
泣ける……
おめでとう!
やったぜ!
やるじゃん!
エライ!
いや、十分すごいよ!
おお〜😲
うるる😭
いつもありがとう!
神降臨!
頼む、続きが読みたい!
この本欲しすぎる
これ好き! 好きすぎる!
ありがとう、これで今日も生きていける
発想にすごく引き込まれた
頑張って!
応援してる!
待っている!いつまでも!
わかる、わかるよ……
やっちゃいましょう!
おめでとう!
やったぜ!
いや、十分すごいよ!
やるじゃん!
ぐはっ😍
おお〜😲
うるる😭
大丈夫......!
そういうときもある!
なるほど
それいいね!
行ける気がする!
落ち着けっ!
苦しいよね
悩むよね
確かにね
その通り!
もちろん!
激しく同意
わかりみがすごい
共感する
響くわ〜
お前は俺か
そうかもしれない
大変だよね
うん、うん。
そうだね
そう思う
そうかも
いつもありがとう!
きっとうまくいく!
大丈夫!
どんな道も正解だから
負けないで!
一緒に頑張ろう!
後悔させてやろうよ!
明日はきっとよくなるよ
のんびり行こう!
人は変われる!
なるようになる!
マジ天使
天才!
エライ!
エロい!
それな
神降臨!
素敵
かわいい
きゅんとした
泣ける……
ぞくぞくした
いいね